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監禁! 最後の文化祭
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カモノハシを抱っこし、少し濡れてしまった服を乾かしたあと不思議な教室から出る。扉を閉めた瞬間奥の景色が変わったのはもう気にしないことにした。
「あとはどうする? レインボー綿飴でも食べに行く?」
「何味なんだそれは」
「いや、味に関しては期待しない方がいいよ。そもそも綿飴とか砂糖をワタみたいにする芸術性がなければただの砂糖でしかないんだし」
「97年ペケモン攻略本におけるサンダーズみたいな物言いしやがって」
なんでこれが通じるんだ。当たり前のようにスラスラとツッコミだす武藤様にほんのりと引いたが、そういえばこの人は変なところ詳しいのだった。アイドルへのファンレター事情とか。ああ言うのってどこで仕入れてくるんだろう。俺? 俺はSNS。しないと不安になる。
「まぁでも、見た目だけに全振りした映え専用スイーツなんか買えるの今しかないんだぜ? 買っとかないと!」
「物言いが最悪すぎるだろ。もうちょっと悪意引っ込めてから喋るんだな」
うるせーやい。こっちは未だにカードゲームで遊んでるホビーのお化けなんだぞ。多分俺が三十代とかになってもこの趣味は続けてるし、そのときになればホビおじである。
それはそれとしてわたあめは気になる。ビッグ虹色綿飴だそうで、映え以外にも話題性としてツイートできそうである。目指せ万バズ!
「そんで承認欲求に関しては映えのために買うやつと変わらねーのな」
「SNSやる奴が承認欲求ないと思ったら大間違いだぜ!」
「ホビアニみてーな明るめの口調で覆い隠せる陰じゃねーぞ」
それはそう。
校舎内もある程度回ったし、その辺で買った光る耳も付けている。
「耳四つあるの落ち着かねーな、てめー……」
「そう言うのケモ耳界隈では野暮って言われるんだぞ」
「どんな界隈だよ。いやお前、人間の耳だしなそのカチューシャ……なんだそれ……」
「ヒトミミカチューシャ」
1680万色に光るぞ!! 性能のいいパソコンとかってなぜか光りがちだよな。別に光るものを求めて探してるわけでもないのに光るから困惑することがある。カラスじゃないんだからそれで喜ぶ時分はとっくに過ぎたんだよ。
一年教室エリアを抜けて、昇降口の方に向かう。このまま正門まで歩いていくとレインボーわたあめを売る店筆頭に出店があって、横道を抜けると中庭、また昇降口から出てすぐ右に曲がると体育館に繋がる。
ちなみに卒業式もあそこでやるぞ! 生徒代表が演説するのだ。そう、推しの最後の晴れ舞台である。
「今度は流されないでね、武藤様~?」
「わ、わぁーってる。しつけぇ!」
「一回しか行ってないんだけど」
恥ずかしかったのだろう。ほんのりと頬を染める姿、最高に可愛らしい。くそっかっこよくて可愛くて輝いているなんて天は何物与えたもうたんだ。
その様子に癒されながらも、流れの落ち着いている出店の方に歩みを進める。手の温かな感触を思い出してしまうのは俺だけだろうか。
「お、おいオタク。チーズハットグだってよ。食べたいんじゃねぇのか? クロワッサンたい焼きなんてどう再現してんだか……テメーが頼むなら、この俺様が買ってきてやらないでもない」
俺だけみたいだ。武藤様は屋台でしか見ないが屋台では定番の食べ物たちに心を奪われている。そういえば祭りを普通に回る機会なんてほぼないんだっけ? 昨日は見回りしてたし、去年も運営側で何やら忙しそうだったし。
真道たちが普通に祭りで遊んでたから忘れてたが、そういえばあいつらも珍しく人混みだかに疲れてさっさと帰りたがっていた。あまり慣れていないのだろう。
「うーん面白そう。どうしても食べたいなぁ。武藤様のおすすめでお願いできる? 俺はここで楽しみに待ってるから~」
「! おう、任せやがれ!」
ソワッ……ソワしている武藤様が財布を握りしめて流れに逆らいながらもたもたと何やら買いにいく背中を見守る。かわいい。外部の人たちたくさんいるもんな、でも自分で買いたいんだよな気になるから。言ってくれれば俺が買ってくるのに。ああっ小さい流れに攫われていってる!
(きゅ……キュートアグレッション……!!)
武藤様にあまりに失礼なので本人には言わないが、憧れの人のはずなのにもったもったと頑張る姿は小動物が越えられそうで越えられない壁に挑戦してる時みたいに応援の気持ちと弱くて可愛いの気持ちが混じり合う。
いつまでも見てられるな。
「ハァ、どうしてたまにハムスターみたいなことするんだろあの人……かわいすぎる……」
もう校舎内を見回るターンになったらしく、生徒たちもそんなにいない。だからほんのりはしゃいでいるのだろうけれど、それにしても誰にも見せたくなさすぎる。永遠にやっててほしいけど。
「次は俺が全部買って、と。すみません!」
「、いえ。こちらこそ、人を探していて……」
と、端の方に避けようとすると誰かにぶつかった。その人もどうやら慌てて前を見ていなかったらしく、軽く肩が当たったあと謝られる。
怜悧な美貌。真っ白な長い前髪の奥に見える薄氷の瞳。人形のような容貌から発せられるダイヤモンドのように冷たげな声は、性別も体格も全く違うのにどこか雪女を連想させた。
人外じみた美形に目を瞬かせる俺と違い、その男はみるみるうちに目を釣り上げていった。
……って、え?
「田中、宗介……ッ!!」
声音に含まれた感情は、憤り嫉妬100%。
えっと俺、またなんかやっちゃいました……??
「あとはどうする? レインボー綿飴でも食べに行く?」
「何味なんだそれは」
「いや、味に関しては期待しない方がいいよ。そもそも綿飴とか砂糖をワタみたいにする芸術性がなければただの砂糖でしかないんだし」
「97年ペケモン攻略本におけるサンダーズみたいな物言いしやがって」
なんでこれが通じるんだ。当たり前のようにスラスラとツッコミだす武藤様にほんのりと引いたが、そういえばこの人は変なところ詳しいのだった。アイドルへのファンレター事情とか。ああ言うのってどこで仕入れてくるんだろう。俺? 俺はSNS。しないと不安になる。
「まぁでも、見た目だけに全振りした映え専用スイーツなんか買えるの今しかないんだぜ? 買っとかないと!」
「物言いが最悪すぎるだろ。もうちょっと悪意引っ込めてから喋るんだな」
うるせーやい。こっちは未だにカードゲームで遊んでるホビーのお化けなんだぞ。多分俺が三十代とかになってもこの趣味は続けてるし、そのときになればホビおじである。
それはそれとしてわたあめは気になる。ビッグ虹色綿飴だそうで、映え以外にも話題性としてツイートできそうである。目指せ万バズ!
「そんで承認欲求に関しては映えのために買うやつと変わらねーのな」
「SNSやる奴が承認欲求ないと思ったら大間違いだぜ!」
「ホビアニみてーな明るめの口調で覆い隠せる陰じゃねーぞ」
それはそう。
校舎内もある程度回ったし、その辺で買った光る耳も付けている。
「耳四つあるの落ち着かねーな、てめー……」
「そう言うのケモ耳界隈では野暮って言われるんだぞ」
「どんな界隈だよ。いやお前、人間の耳だしなそのカチューシャ……なんだそれ……」
「ヒトミミカチューシャ」
1680万色に光るぞ!! 性能のいいパソコンとかってなぜか光りがちだよな。別に光るものを求めて探してるわけでもないのに光るから困惑することがある。カラスじゃないんだからそれで喜ぶ時分はとっくに過ぎたんだよ。
一年教室エリアを抜けて、昇降口の方に向かう。このまま正門まで歩いていくとレインボーわたあめを売る店筆頭に出店があって、横道を抜けると中庭、また昇降口から出てすぐ右に曲がると体育館に繋がる。
ちなみに卒業式もあそこでやるぞ! 生徒代表が演説するのだ。そう、推しの最後の晴れ舞台である。
「今度は流されないでね、武藤様~?」
「わ、わぁーってる。しつけぇ!」
「一回しか行ってないんだけど」
恥ずかしかったのだろう。ほんのりと頬を染める姿、最高に可愛らしい。くそっかっこよくて可愛くて輝いているなんて天は何物与えたもうたんだ。
その様子に癒されながらも、流れの落ち着いている出店の方に歩みを進める。手の温かな感触を思い出してしまうのは俺だけだろうか。
「お、おいオタク。チーズハットグだってよ。食べたいんじゃねぇのか? クロワッサンたい焼きなんてどう再現してんだか……テメーが頼むなら、この俺様が買ってきてやらないでもない」
俺だけみたいだ。武藤様は屋台でしか見ないが屋台では定番の食べ物たちに心を奪われている。そういえば祭りを普通に回る機会なんてほぼないんだっけ? 昨日は見回りしてたし、去年も運営側で何やら忙しそうだったし。
真道たちが普通に祭りで遊んでたから忘れてたが、そういえばあいつらも珍しく人混みだかに疲れてさっさと帰りたがっていた。あまり慣れていないのだろう。
「うーん面白そう。どうしても食べたいなぁ。武藤様のおすすめでお願いできる? 俺はここで楽しみに待ってるから~」
「! おう、任せやがれ!」
ソワッ……ソワしている武藤様が財布を握りしめて流れに逆らいながらもたもたと何やら買いにいく背中を見守る。かわいい。外部の人たちたくさんいるもんな、でも自分で買いたいんだよな気になるから。言ってくれれば俺が買ってくるのに。ああっ小さい流れに攫われていってる!
(きゅ……キュートアグレッション……!!)
武藤様にあまりに失礼なので本人には言わないが、憧れの人のはずなのにもったもったと頑張る姿は小動物が越えられそうで越えられない壁に挑戦してる時みたいに応援の気持ちと弱くて可愛いの気持ちが混じり合う。
いつまでも見てられるな。
「ハァ、どうしてたまにハムスターみたいなことするんだろあの人……かわいすぎる……」
もう校舎内を見回るターンになったらしく、生徒たちもそんなにいない。だからほんのりはしゃいでいるのだろうけれど、それにしても誰にも見せたくなさすぎる。永遠にやっててほしいけど。
「次は俺が全部買って、と。すみません!」
「、いえ。こちらこそ、人を探していて……」
と、端の方に避けようとすると誰かにぶつかった。その人もどうやら慌てて前を見ていなかったらしく、軽く肩が当たったあと謝られる。
怜悧な美貌。真っ白な長い前髪の奥に見える薄氷の瞳。人形のような容貌から発せられるダイヤモンドのように冷たげな声は、性別も体格も全く違うのにどこか雪女を連想させた。
人外じみた美形に目を瞬かせる俺と違い、その男はみるみるうちに目を釣り上げていった。
……って、え?
「田中、宗介……ッ!!」
声音に含まれた感情は、憤り嫉妬100%。
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