王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

文字の大きさ
194 / 201
監禁! 最後の文化祭

65

しおりを挟む
カモノハシを抱っこし、少し濡れてしまった服を乾かしたあと不思議な教室から出る。扉を閉めた瞬間奥の景色が変わったのはもう気にしないことにした。

「あとはどうする? レインボー綿飴でも食べに行く?」
「何味なんだそれは」
「いや、味に関しては期待しない方がいいよ。そもそも綿飴とか砂糖をワタみたいにする芸術性がなければただの砂糖でしかないんだし」
「97年ペケモン攻略本におけるサンダーズみたいな物言いしやがって」

なんでこれが通じるんだ。当たり前のようにスラスラとツッコミだす武藤様にほんのりと引いたが、そういえばこの人は変なところ詳しいのだった。アイドルへのファンレター事情とか。ああ言うのってどこで仕入れてくるんだろう。俺? 俺はSNS。しないと不安になる。

「まぁでも、見た目だけに全振りした映え専用スイーツなんか買えるの今しかないんだぜ? 買っとかないと!」
「物言いが最悪すぎるだろ。もうちょっと悪意引っ込めてから喋るんだな」

うるせーやい。こっちは未だにカードゲームで遊んでるホビーのお化けなんだぞ。多分俺が三十代とかになってもこの趣味は続けてるし、そのときになればホビおじである。

それはそれとしてわたあめは気になる。ビッグ虹色綿飴だそうで、映え以外にも話題性としてツイートできそうである。目指せ万バズ!

「そんで承認欲求に関しては映えのために買うやつと変わらねーのな」
「SNSやる奴が承認欲求ないと思ったら大間違いだぜ!」
「ホビアニみてーな明るめの口調で覆い隠せる陰じゃねーぞ」

それはそう。
校舎内もある程度回ったし、その辺で買った光る耳も付けている。

「耳四つあるの落ち着かねーな、てめー……」
「そう言うのケモ耳界隈では野暮って言われるんだぞ」
「どんな界隈だよ。いやお前、人間の耳だしなそのカチューシャ……なんだそれ……」
「ヒトミミカチューシャ」

1680万色に光るぞ!! 性能のいいパソコンとかってなぜか光りがちだよな。別に光るものを求めて探してるわけでもないのに光るから困惑することがある。カラスじゃないんだからそれで喜ぶ時分はとっくに過ぎたんだよ。

一年教室エリアを抜けて、昇降口の方に向かう。このまま正門まで歩いていくとレインボーわたあめを売る店筆頭に出店があって、横道を抜けると中庭、また昇降口から出てすぐ右に曲がると体育館に繋がる。
ちなみに卒業式もあそこでやるぞ! 生徒代表が演説するのだ。そう、推しの最後の晴れ舞台である。

「今度は流されないでね、武藤様~?」
「わ、わぁーってる。しつけぇ!」
「一回しか行ってないんだけど」

恥ずかしかったのだろう。ほんのりと頬を染める姿、最高に可愛らしい。くそっかっこよくて可愛くて輝いているなんて天は何物与えたもうたんだ。

その様子に癒されながらも、流れの落ち着いている出店の方に歩みを進める。手の温かな感触を思い出してしまうのは俺だけだろうか。

「お、おいオタク。チーズハットグだってよ。食べたいんじゃねぇのか? クロワッサンたい焼きなんてどう再現してんだか……テメーが頼むなら、この俺様が買ってきてやらないでもない」

俺だけみたいだ。武藤様は屋台でしか見ないが屋台では定番の食べ物たちに心を奪われている。そういえば祭りを普通に回る機会なんてほぼないんだっけ? 昨日は見回りしてたし、去年も運営側で何やら忙しそうだったし。

真道たちが普通に祭りで遊んでたから忘れてたが、そういえばあいつらも珍しく人混みだかに疲れてさっさと帰りたがっていた。あまり慣れていないのだろう。

「うーん面白そう。どうしても食べたいなぁ。武藤様のおすすめでお願いできる? 俺はここで楽しみに待ってるから~」
「! おう、任せやがれ!」

ソワッ……ソワしている武藤様が財布を握りしめて流れに逆らいながらもたもたと何やら買いにいく背中を見守る。かわいい。外部の人たちたくさんいるもんな、でも自分で買いたいんだよな気になるから。言ってくれれば俺が買ってくるのに。ああっ小さい流れに攫われていってる!

(きゅ……キュートアグレッション……!!)

武藤様にあまりに失礼なので本人には言わないが、憧れの人のはずなのにもったもったと頑張る姿は小動物が越えられそうで越えられない壁に挑戦してる時みたいに応援の気持ちと弱くて可愛いの気持ちが混じり合う。
いつまでも見てられるな。

「ハァ、どうしてたまにハムスターみたいなことするんだろあの人……かわいすぎる……」

もう校舎内を見回るターンになったらしく、生徒たちもそんなにいない。だからほんのりはしゃいでいるのだろうけれど、それにしても誰にも見せたくなさすぎる。永遠にやっててほしいけど。

「次は俺が全部買って、と。すみません!」
「、いえ。こちらこそ、人を探していて……」

と、端の方に避けようとすると誰かにぶつかった。その人もどうやら慌てて前を見ていなかったらしく、軽く肩が当たったあと謝られる。

怜悧な美貌。真っ白な長い前髪の奥に見える薄氷の瞳。人形のような容貌から発せられるダイヤモンドのように冷たげな声は、性別も体格も全く違うのにどこか雪女を連想させた。

人外じみた美形に目を瞬かせる俺と違い、その男はみるみるうちに目を釣り上げていった。

……って、え?

「田中、宗介……ッ!!」

声音に含まれた感情は、憤り嫉妬100%。

えっと俺、またなんかやっちゃいました……??
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...