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二年目の魔法学校
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アバロン。本名不明、年齢は俺と同じ十七だが、何年も前から天才の代名詞として知られてきた最高峰の魔物学者だ。生粋の人間嫌いであり、傲慢。
特に魔物が好きというわけではなく、人間の役に立ったり人間を知ったりするのが嫌だという理由で魔物学を専攻している。
「それで? 一体なんの用なのだこの無能め。それとも無いのか? 魔力も無ければ用も無いなら姿を現すな、もしくはこれを飲んで帰れ」
「用がなきゃくるわけないだろこんな辺鄙で陰気なとこ、ヴラド先輩と契約してまで……ああコラ飲むなユミル。人の形を保っていたいなら」
ビーカーそのまま出されたいくつかの飲料に手を伸ばしかけたユミルを制する。掘立て小屋みたいな研究室は中だけ見れば広く、最新機材が容易く揃えてある。
俺たちが困っている粉砕機も置いてあり、何なら世の錬金術師垂涎の道具が雑にポイポイと放られている。
全体的なビジュは魔法使いの私室みたいだがよく値段を換算すればひっくり返るものばかり。クソッッッッこれが売れてる研究者と部活の違いかよ!!
「う、うわぁ~……凄い……! こんな場所で研究できるなら、錬金術師なんて魂でも何でも差し出す気がします……」
「うん。凄いね、空間自体にも魔法がかかってるし、多分あの扉は魔法の鍵に対応してるでしょ。素直に言うのは癪だけど、自作だとしたら世界でも有数の魔法使いだよ」
オワーーーッセリオンが饒舌になっている!! ユミルも目をキラキラと輝かせており、初めて見る技術に感動している様子だ。
実際魔法は万能ではなく、突発的に使う魔法(浮遊など。限定魔法と呼ぶ)と、一度魔力を込めれば一定時間効果が続く魔法(錬金やデバフ系魔法が挙げられる。恒久魔法と呼ぶ)がある。
恒久魔法はおもに魔法道具に使用されており、電池のように魔力を充填すればモノさえ壊れなければ動く仕様となっている。
番人や農作業用として使われているゴーレム系統が代表格だな。
──つまり。研究用の魔法道具は高価な上複雑なプログラムが組まれているのである! 魔法使いになるには当然使えなければならないが、少なくとも一人で最新機器を揃えようとすればとんでもない量の金が必要となるだろう。
「あいっ変わらず、設備は立派だな……これで本人の性格がもう少しマシだったらと思わんかね、アバロンくん?」
「思うか。天才が天才として誇っていて何が悪い。全ては吾輩について来られん凡人が悪い。何だ? とうとう粉砕機が壊れたから貸してくれとでも言いにきたのか?」
相変わらず物言いが腹立つ奴である。まぁ実際天才なので反論できないのだが。アバロンに功績バトルで勝てる奴ってあんまいないんじゃなかろうか。
「はぁ……そんなことで来るわけないだろ。それにその粉砕機はお前の功績で買ったものだ、同じ部活だからって無償で差し出させないよ」
「……フン。部長殿のその心掛けばかりは感心に値するがな」
「皮肉か? 褒めだとしても素直に褒めろよ……ったく」
ため息をつきながらその辺に置いてある椅子にどっかりと腰掛ける。
ミミックだ。
「っダァ!?!?!?!?!?」
「先輩!!」
「ほほーうやはりそこに座ったか! いやぁ模倣宝を仕込んでおいてよかったよかった。部長殿は単純で非常に助かブベァ」
「テメェ!! 俺には暴力があるぞ!!」
今更アバロン相手に被る猫もない。ヒャッヒャッと大笑いする男の顔面に一発拳を入れ、返す拳で椅子に擬態していた模倣宝にも椅子ごと壊す勢いで裏拳を入れた。めきめきっと何かがへし折れる音と共に沈静化する。
模倣宝はシェイプシフターの一種で、シェイプシフター系の中には人狼こと模倣人やら何やら。まぁ人やものを真似る魔物を雑にシェイプシフターとして括っているだけだが。
「…………模倣宝を、拳で?」
「オリハルコンとか埋まってるんですかその手」
共通点としては耐久が高く魔法も効きにくい。とにかく厄介。まぁ模倣宝はその性質から一度巣と決めた場所から動けず獲物が来なくなって死ぬこともあるらしいが。
過疎った村の片隅とか調べると割と死んだ模倣宝が見つけられるぜ。
「しかもこいつ毒じゃねぇか!!」
模倣宝にも種類があり、昏倒した時に擬態用の表皮へ現れる特徴的な斑紋は毒の証である。しかも猛毒。人間に注入すると普通に死ぬ。
「ッチ、何かあると思ったが毎回毎回手が込んでやがる。どーやって模倣宝なんて躾けたんだこの頭脳以外最悪男!」
「貴様と違ってせこせこ授業に出ずとも進級出来る実力と分析力の賜物だな」
「カトンボみてーな細さしてよく言うわ勝負してやろうか? お前の大好きな暴力で」
「待て待て待て吾輩を失ったら世界の損失だぞ」
「今更世界とか知るかよボケが」
もうこいつ縛ってドライフラワーのように吊るしていちゃダメかな。一応出席はしてるだろ。でも長期間テリトリーで放置しておきたく無い。そばに置いておきたい(トラブルの元なので)
「もうお前の身柄だけあったらいいんだよ。ちょっと乾燥されてろ」
「まさか事情を説明する脳もないとはな」
「してもしなくてもやってもらうことは一緒だ」
俺の目が届くところで乾燥しておく。これが一番だな。手足使えなかったら何もできまい。
普段ならここまでするとアバロンが暴れ始めるのだが、今回はなぜかおとなしい。首を傾げながら縄を探そうと顔を上げると。
「……先輩……流石にそれは……どうかと……」
「なんか、口悪い。なんで」
複雑そうな顔をする小さい可愛い子供二人。
なるほどね。
「ッ……ッ……事情を……聞いてくれるかアバロンくん……?」
「は? 嫌ブヘッ」
「そうかそうかありがとう! 助かるぞ!」
忘れてた、ユミルとセリオンのこと……!! あまりにもあまりな煽り方をするから……!!!!
特に魔物が好きというわけではなく、人間の役に立ったり人間を知ったりするのが嫌だという理由で魔物学を専攻している。
「それで? 一体なんの用なのだこの無能め。それとも無いのか? 魔力も無ければ用も無いなら姿を現すな、もしくはこれを飲んで帰れ」
「用がなきゃくるわけないだろこんな辺鄙で陰気なとこ、ヴラド先輩と契約してまで……ああコラ飲むなユミル。人の形を保っていたいなら」
ビーカーそのまま出されたいくつかの飲料に手を伸ばしかけたユミルを制する。掘立て小屋みたいな研究室は中だけ見れば広く、最新機材が容易く揃えてある。
俺たちが困っている粉砕機も置いてあり、何なら世の錬金術師垂涎の道具が雑にポイポイと放られている。
全体的なビジュは魔法使いの私室みたいだがよく値段を換算すればひっくり返るものばかり。クソッッッッこれが売れてる研究者と部活の違いかよ!!
「う、うわぁ~……凄い……! こんな場所で研究できるなら、錬金術師なんて魂でも何でも差し出す気がします……」
「うん。凄いね、空間自体にも魔法がかかってるし、多分あの扉は魔法の鍵に対応してるでしょ。素直に言うのは癪だけど、自作だとしたら世界でも有数の魔法使いだよ」
オワーーーッセリオンが饒舌になっている!! ユミルも目をキラキラと輝かせており、初めて見る技術に感動している様子だ。
実際魔法は万能ではなく、突発的に使う魔法(浮遊など。限定魔法と呼ぶ)と、一度魔力を込めれば一定時間効果が続く魔法(錬金やデバフ系魔法が挙げられる。恒久魔法と呼ぶ)がある。
恒久魔法はおもに魔法道具に使用されており、電池のように魔力を充填すればモノさえ壊れなければ動く仕様となっている。
番人や農作業用として使われているゴーレム系統が代表格だな。
──つまり。研究用の魔法道具は高価な上複雑なプログラムが組まれているのである! 魔法使いになるには当然使えなければならないが、少なくとも一人で最新機器を揃えようとすればとんでもない量の金が必要となるだろう。
「あいっ変わらず、設備は立派だな……これで本人の性格がもう少しマシだったらと思わんかね、アバロンくん?」
「思うか。天才が天才として誇っていて何が悪い。全ては吾輩について来られん凡人が悪い。何だ? とうとう粉砕機が壊れたから貸してくれとでも言いにきたのか?」
相変わらず物言いが腹立つ奴である。まぁ実際天才なので反論できないのだが。アバロンに功績バトルで勝てる奴ってあんまいないんじゃなかろうか。
「はぁ……そんなことで来るわけないだろ。それにその粉砕機はお前の功績で買ったものだ、同じ部活だからって無償で差し出させないよ」
「……フン。部長殿のその心掛けばかりは感心に値するがな」
「皮肉か? 褒めだとしても素直に褒めろよ……ったく」
ため息をつきながらその辺に置いてある椅子にどっかりと腰掛ける。
ミミックだ。
「っダァ!?!?!?!?!?」
「先輩!!」
「ほほーうやはりそこに座ったか! いやぁ模倣宝を仕込んでおいてよかったよかった。部長殿は単純で非常に助かブベァ」
「テメェ!! 俺には暴力があるぞ!!」
今更アバロン相手に被る猫もない。ヒャッヒャッと大笑いする男の顔面に一発拳を入れ、返す拳で椅子に擬態していた模倣宝にも椅子ごと壊す勢いで裏拳を入れた。めきめきっと何かがへし折れる音と共に沈静化する。
模倣宝はシェイプシフターの一種で、シェイプシフター系の中には人狼こと模倣人やら何やら。まぁ人やものを真似る魔物を雑にシェイプシフターとして括っているだけだが。
「…………模倣宝を、拳で?」
「オリハルコンとか埋まってるんですかその手」
共通点としては耐久が高く魔法も効きにくい。とにかく厄介。まぁ模倣宝はその性質から一度巣と決めた場所から動けず獲物が来なくなって死ぬこともあるらしいが。
過疎った村の片隅とか調べると割と死んだ模倣宝が見つけられるぜ。
「しかもこいつ毒じゃねぇか!!」
模倣宝にも種類があり、昏倒した時に擬態用の表皮へ現れる特徴的な斑紋は毒の証である。しかも猛毒。人間に注入すると普通に死ぬ。
「ッチ、何かあると思ったが毎回毎回手が込んでやがる。どーやって模倣宝なんて躾けたんだこの頭脳以外最悪男!」
「貴様と違ってせこせこ授業に出ずとも進級出来る実力と分析力の賜物だな」
「カトンボみてーな細さしてよく言うわ勝負してやろうか? お前の大好きな暴力で」
「待て待て待て吾輩を失ったら世界の損失だぞ」
「今更世界とか知るかよボケが」
もうこいつ縛ってドライフラワーのように吊るしていちゃダメかな。一応出席はしてるだろ。でも長期間テリトリーで放置しておきたく無い。そばに置いておきたい(トラブルの元なので)
「もうお前の身柄だけあったらいいんだよ。ちょっと乾燥されてろ」
「まさか事情を説明する脳もないとはな」
「してもしなくてもやってもらうことは一緒だ」
俺の目が届くところで乾燥しておく。これが一番だな。手足使えなかったら何もできまい。
普段ならここまでするとアバロンが暴れ始めるのだが、今回はなぜかおとなしい。首を傾げながら縄を探そうと顔を上げると。
「……先輩……流石にそれは……どうかと……」
「なんか、口悪い。なんで」
複雑そうな顔をする小さい可愛い子供二人。
なるほどね。
「ッ……ッ……事情を……聞いてくれるかアバロンくん……?」
「は? 嫌ブヘッ」
「そうかそうかありがとう! 助かるぞ!」
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