悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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二年目の魔法学校

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俺も今日は流石に疲れた。五年生になると座学が増えて行って、頭を使う代わりに今日みたいに体力を使う状況になるととことん疲れる。それか老化ですね。
今年は俺が十八歳、来年からは一つ年下のヴィンセントも十八になる。一応この世界の成人年齢もそうなので、公に注意するようなことも減るんだろうな……。

「はぁー……」

首をゴキゴキと鳴らしつつ、肩を回せば人が死ぬんかくらいの音が出た。長時間変な体勢で寝こけていたからめちゃくちゃ凝っているのだろう。特に最近は夜もセリオンを乗っけてたり添い寝したりと無理な体勢が多いからな……

セリオンの方を見れば、頭を洗うでもなく湯船に浸かるでもなくびっくりした子猫みたいな顔で俺の方を見てきていた。

やはり身長が伸びている。と思う。

鳩尾くらいまでしかなかった身長が、いつのまにか胸下まで来ている。成長期とは言え異常レベルだ。手足も長く、今俺と並べば年の離れた兄弟くらいには見えるかな。

「……どうした?」
「か、間接。折れ、死……っ」
「なない。死なない。大人は往往にして関節を動かしたらどこかゴキゴキ言うんだよ」

こういうところはまだ子供らしいなぁ。
元々大人っぽかった子供だけど、今は外見年齢が中身に追いついてきているような気がする。

たまに出るわがままフェアリーちゃんモードに至ってはもはや見た目より幼さを感じさせるくらいだ。
笑った俺に何を思ったのかセリオンの顔が赤く、頬が膨れる。

「! ッそんなの知らないし! もっと元気になって!」
「む、無茶をお言いになる。お兄ちゃんもう100%健康な日ないんだけど」

若いとはいえ子供の謎無限の体力はないので、普通に筋肉痛というバグを抱えているし常になんかどこかしらに不調がある。今日は足首。やんわりとした頭痛が多い。
100%のコンディションを出せと言われたら詰む。大人になるとはそういうことだ。

「病気とか怪我とかが原因じゃなくて、大人っていうのはいつもどこか悪いんだ……昨日肩が痛くて今日腰が痛くて明日は頭が痛くなるような生活を毎日繰り返してるんだぞ……」
「……? どういうこと??」
「どういうことなんだろう」

セリオンはまだちいちゃい命なので人間の訳のわからない不調など知る由もないのだ。可愛いやつめ。
湯船に足をかけて入る。適温に維持された湯船は温かく、流れ出た水たちに小さな弟は少しだけ嬉しそうにする。これ好きだよなぁ。

「ほらおいで」
「……えっ」

手招きをすればなぜか固まってしまった。
困惑してセリオンの方を見つめると、紫の潤んだ瞳がこちらをじっと見つめ返してくる。
おずおずと湯船に近づいてきた子供を引き寄せて、抱き上げて湯にばっしゃん!! と浸けてみた。

「っぷあ!? なっ、なに!!」
「なーんだよセリオン遠慮しちゃって! 反抗期か? お兄ちゃんとはもうお風呂に入りたくないのかな~?」

細っこい体をこしょこしょとくすぐってみれば、堪えきれないみたいな声で明るい声が上がる。声変わりのせいでまだ少し掠れた、幼い子供の中性的な声。
もう少しすれば発声に痛みを感じるようになって、どんどん作り変わって、ゲーム本編開始の甘~いウィスパーボイスに変化しちゃうんだろうな。こんなに可愛い声なのに。

「ふっ、ふひひっ! あははは! ねぇちょっと、やめて、きゃはは!!」
「あらかわい~抵抗! お兄ちゃんには効きませーん! 悔しかったらやり返してみな~?」
「もうっ、あははは!」
「こちょこちょ攻撃~! 残念、お兄ちゃんはこういうのあんま効かないんだよ」

子供体温がばちゃばちゃ暴れるのを避けつつくすぐってやると、一生懸命小さい手がくすぐり返そうとしてくるのを感じた。と言っても狙いがぶれっぶれで力もこもってるので大分くすぐったくないが。
腰元に触れる手が思っていたよりも少し大きくて戸惑う。いやっやめろバカじゃないのかちょっとドキッとするなこんな小さな子に!!

誤魔化すように頭を振って、モッチモチのほっぺをぱちゅんと両手で包んだ……ありゃ?

「セリオン、ほっぺちょっと硬くなった?」
「?」
「成長したからかな。子供特有の丸みがなくなってってる……幼児ってより少年感」

まだまだもちもちではあるのでもちるけど、そうか、もう輪郭も変わる時期なのか。
まだよく見ないとわからないけれど、仔猫みたいなアーモンドアイは少年らしい鋭利な目つきになってきて、ぷにぷにの小さな唇も成長するにつれて大きく開くようになっていた。

「大きくなったなぁ、セリオン」
「さっきのアンタ見て大きくなるメリットがわかんない……」
「いやいや、いい事いっぱいだぞ! 大人には責任が付きまとうけど自由だってあるんだから」

胡乱げな弟にそう言ってちゅうをすると、ペチンと頬を叩かれた。子供が放ったにしても弱い力だ、大きくなったと聞いて手加減しちゃったんだろう。愛い奴……ラブ……

可愛さに染み入っていれば、ぺた、と少年の手が俺の腹に触れた。成長に肉が追いついていない骨ばった細い手。

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