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『君と待つ光』
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薄暗い部屋の中、お互いの呼吸音だけが鮮明に聞こえる。質のいいシーツの中に二人の体が隠れ、薄い布越しに体温を移し合っていた。
セリオンの、仔猫みたいな速さの心臓がとくとく、と流れて。魔法使いはみんなそうなのだろうか。いつも生き急いでいるような気がして、少しゆっくりになってくれないかと頼みたくなる。
「……あんた、時々びっくりするくらい柔らかいよね。関節じゃなくて、体が。ふかふかで、温かい……」
兄弟の健全なじゃれあい、である。その筈だ。俺はセリオンによくぎゅうーっと抱き付いていたし、俺の腹くらいまでしかなかったセリオンはいつも最初だけ抵抗して、結局は胸元で落ち着いて。だから、ハグは健全な触れ合いだ。俺たちは兄弟だから。
「そう、だな? 子供体温らしい……俺はよく分からんが」
「ふーん。じゃ、誰かに教えられたんだ? 経験豊富な誰かに、体温がわかるくらい触らせて?」
「言い方悪いな、否定できないけど……」
だが何故だろう。なんだか、首筋のあたりがゾワゾワする。翼竜に凄まれた時とは似て否なる感覚だ。セリオンの美しいアメジストの瞳が俺をじっと見据えた。醜い火傷のそばかす男──極々平均的な、最低保証顔の。
骨ばった指が先ほどまで掴んでいた腰を撫でる。その感触に背筋が粟立つようで。衣擦れの音がやけに耳に響いた。
なんか、おかしな雰囲気だ。
「え。えっと、セリオン? これ……」
「なに?」
「これ、戯れてるだけ、だよな?」
本人に確認するなという話だが、正直俺はパニックだった。俺自身はじゃれあいのつもりで抱きついて、乗っかったのに。いや、これ、下心出した判定になるのか? 厳しくないか? でも今乗っかってる状況で、心臓がならないかと聞かれたらそうじゃなくて。
部屋の中が暗いのにも拍車をかけていた。今から寝るところだったらしいセリオンの声は低く潜められていて、色気のたっぷり含まれた低い声が耳元から流し込まれる。
「じゃれあいにしたい?」
「え」
それは一体、どういう意味で。
顔が熱くなっているのがわかる。俺は今、恋して愛した男の上に、乗っている。体温がブワッと高くなって、どうしようもない。恥ずかしい。逃げたい。
思わず腰を引けば、体制を崩される。長い腕が俺を抱きすくめた。そうだ、セリオンは大きくなって、俺を覆えるくらいになって……だから、小さな男の子を抱きしめる感覚じゃダメだって、わかってたのに。何が頼り甲斐があるから頼らせてもらうだ、バカ!
「あんたが……そうしたいなら、見逃してあげる。真っ赤になって、可愛いね……慣れてないんだ?」
「あ、当たり前だろ……! 慣れてたまるかこんなの!」
「ふふ、頭おかしくなりそう……」
なんで。何が。俺の方がおかしくなってしまいそうだ。ぎゅうっと力強く抱きしめられる。その強さにまた心臓がドクンと高鳴った。
「あんたにも慣れないことあったんだ、って……当たり前なのにね。バカだなぁ、兄さん」
「言い草がひどすぎないか? セリオン、俺一応お前のお兄ちゃんなんだが」
「そのお兄ちゃんって言い方、えろいからやめた方がいいよ」
……っは?
今こいつ、なんて言った。
弟の口から出る言葉とは思えなくて、一瞬思考が停止する。え、エロいって言ったか? 俺に!?!? セリオンが!?!?
「ふ、普通だろ! 俺、お前のお兄ちゃ、兄なんだから!」
「あ、意識してる。かーわいいね……」
「それやめろ!」
なんかすごい良くない展開になっている気がした。心臓が跳ねて跳ねて、いつか止まってしまいそうだ。セリオン、お前は知らないかもしれないけど、お前が今抱きすくめている男は、お前が小さい頃から恋も愛も下心も真心も捧げさせてきた相手なんだぞ。その可愛さで狂わせた第一人者なんだぞ、俺は。
ファムファタール? オムファタールというやつだな、そして俺は狂わされる側です。の、筈だよな? セリオン?
「な、なんか。良くないって、俺たち兄弟で、だから、離れ、離して」
「混乱してるんだ。小さい弟に迫られたくらいで。へぇ、兄さんが。あの兄さんが?」
「あのって何がだよ」
下ネタを振ってくる兄がいざ迫られたらビビるのがおかしいのか? それは、まぁそうか。好きなだけ笑ってくれ。俺もわりと面白いと思う。良かった、他人のこと滑稽だと思う性格の悪さは残ってたのかセリオン。それでこそお前だ。
それでこそお前なので、離してほしい。
ぐいっと離れようとすればさらに距離が縮まる。セリオンが俺を離そうとせず、力を込めて抱きしめているからだ。無理やり抵抗したら傷つけそうなので出来ない。お前、俺の愛情を逆手にとって。いや勝手に逆手に取られてるだけなんだけどね。俺が。
「セリオン? いいから離──ッ!」
「あ」
あ、じゃない。
腰を引こうとした瞬間、硬いものにあたった。位置的に、その、骨盤とかではない。硬いものは硬いものだ。えっちになればなるほど硬くなるものってなーんだ! の別解である。
「……バレちゃった?」
「──ッッッッ!!!!!!!!!」
ブワ、と頭に血が昇る。
お前、この、お前……ッ!
「欲求不満まで俺で解消しようとするなこの馬鹿弟が!!」
「は!?!? ちょっと何言っうわ力つよ!」
あーもう期待した俺が馬鹿みたいだ。いや期待してる方が悪いんだけど!
少し悪いが無理やりセリオンを振り払い、俺はバビュンっと窓から空に飛んだ。ちょっと頭を冷やそう、その間にセリオンの頭もどうにか冷えているだろう。
セリオンの、仔猫みたいな速さの心臓がとくとく、と流れて。魔法使いはみんなそうなのだろうか。いつも生き急いでいるような気がして、少しゆっくりになってくれないかと頼みたくなる。
「……あんた、時々びっくりするくらい柔らかいよね。関節じゃなくて、体が。ふかふかで、温かい……」
兄弟の健全なじゃれあい、である。その筈だ。俺はセリオンによくぎゅうーっと抱き付いていたし、俺の腹くらいまでしかなかったセリオンはいつも最初だけ抵抗して、結局は胸元で落ち着いて。だから、ハグは健全な触れ合いだ。俺たちは兄弟だから。
「そう、だな? 子供体温らしい……俺はよく分からんが」
「ふーん。じゃ、誰かに教えられたんだ? 経験豊富な誰かに、体温がわかるくらい触らせて?」
「言い方悪いな、否定できないけど……」
だが何故だろう。なんだか、首筋のあたりがゾワゾワする。翼竜に凄まれた時とは似て否なる感覚だ。セリオンの美しいアメジストの瞳が俺をじっと見据えた。醜い火傷のそばかす男──極々平均的な、最低保証顔の。
骨ばった指が先ほどまで掴んでいた腰を撫でる。その感触に背筋が粟立つようで。衣擦れの音がやけに耳に響いた。
なんか、おかしな雰囲気だ。
「え。えっと、セリオン? これ……」
「なに?」
「これ、戯れてるだけ、だよな?」
本人に確認するなという話だが、正直俺はパニックだった。俺自身はじゃれあいのつもりで抱きついて、乗っかったのに。いや、これ、下心出した判定になるのか? 厳しくないか? でも今乗っかってる状況で、心臓がならないかと聞かれたらそうじゃなくて。
部屋の中が暗いのにも拍車をかけていた。今から寝るところだったらしいセリオンの声は低く潜められていて、色気のたっぷり含まれた低い声が耳元から流し込まれる。
「じゃれあいにしたい?」
「え」
それは一体、どういう意味で。
顔が熱くなっているのがわかる。俺は今、恋して愛した男の上に、乗っている。体温がブワッと高くなって、どうしようもない。恥ずかしい。逃げたい。
思わず腰を引けば、体制を崩される。長い腕が俺を抱きすくめた。そうだ、セリオンは大きくなって、俺を覆えるくらいになって……だから、小さな男の子を抱きしめる感覚じゃダメだって、わかってたのに。何が頼り甲斐があるから頼らせてもらうだ、バカ!
「あんたが……そうしたいなら、見逃してあげる。真っ赤になって、可愛いね……慣れてないんだ?」
「あ、当たり前だろ……! 慣れてたまるかこんなの!」
「ふふ、頭おかしくなりそう……」
なんで。何が。俺の方がおかしくなってしまいそうだ。ぎゅうっと力強く抱きしめられる。その強さにまた心臓がドクンと高鳴った。
「あんたにも慣れないことあったんだ、って……当たり前なのにね。バカだなぁ、兄さん」
「言い草がひどすぎないか? セリオン、俺一応お前のお兄ちゃんなんだが」
「そのお兄ちゃんって言い方、えろいからやめた方がいいよ」
……っは?
今こいつ、なんて言った。
弟の口から出る言葉とは思えなくて、一瞬思考が停止する。え、エロいって言ったか? 俺に!?!? セリオンが!?!?
「ふ、普通だろ! 俺、お前のお兄ちゃ、兄なんだから!」
「あ、意識してる。かーわいいね……」
「それやめろ!」
なんかすごい良くない展開になっている気がした。心臓が跳ねて跳ねて、いつか止まってしまいそうだ。セリオン、お前は知らないかもしれないけど、お前が今抱きすくめている男は、お前が小さい頃から恋も愛も下心も真心も捧げさせてきた相手なんだぞ。その可愛さで狂わせた第一人者なんだぞ、俺は。
ファムファタール? オムファタールというやつだな、そして俺は狂わされる側です。の、筈だよな? セリオン?
「な、なんか。良くないって、俺たち兄弟で、だから、離れ、離して」
「混乱してるんだ。小さい弟に迫られたくらいで。へぇ、兄さんが。あの兄さんが?」
「あのって何がだよ」
下ネタを振ってくる兄がいざ迫られたらビビるのがおかしいのか? それは、まぁそうか。好きなだけ笑ってくれ。俺もわりと面白いと思う。良かった、他人のこと滑稽だと思う性格の悪さは残ってたのかセリオン。それでこそお前だ。
それでこそお前なので、離してほしい。
ぐいっと離れようとすればさらに距離が縮まる。セリオンが俺を離そうとせず、力を込めて抱きしめているからだ。無理やり抵抗したら傷つけそうなので出来ない。お前、俺の愛情を逆手にとって。いや勝手に逆手に取られてるだけなんだけどね。俺が。
「セリオン? いいから離──ッ!」
「あ」
あ、じゃない。
腰を引こうとした瞬間、硬いものにあたった。位置的に、その、骨盤とかではない。硬いものは硬いものだ。えっちになればなるほど硬くなるものってなーんだ! の別解である。
「……バレちゃった?」
「──ッッッッ!!!!!!!!!」
ブワ、と頭に血が昇る。
お前、この、お前……ッ!
「欲求不満まで俺で解消しようとするなこの馬鹿弟が!!」
「は!?!? ちょっと何言っうわ力つよ!」
あーもう期待した俺が馬鹿みたいだ。いや期待してる方が悪いんだけど!
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