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『君と待つ光』
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(や、やってしまったぁ~~~~…………)
俺はひとり、頭を抱えていた。
問題は当然セリオンのことである。セリオン以外で俺を悩ませられる人間なんていない。嘘、そこそこいる。血筋上は弟であるセリオンと先日、初めて感情を露わにする喧嘩をしたのだ。
いや、喧嘩だろうか? セリオンは謝ろうとしたのに、俺が一方的に責めてしまった。それ以降、どうやらセリオンは俺を警戒? 緊張していて。ギクシャクしているような気がする。
「いや、でも、だってなぁ~……」
『なんなんですかデモデモダッテって。真面目に攻略する気あります?』
「魔神は厳しいしよ~」
自分の命がかかってるとなればこれだ。現金な奴め。可能な限り上空に飛び、空気の膜を張ってそこに寝転がる。結界術で視覚とかもろもろを誤魔化し探知されないようにすれば、秘密の簡易型天空ベッドだ。
誰にも知られたくない時こうして寝転び、上にも下にも瞬く星を見て過ごすようにしていた。
結界の中に閉じこもっているから、上空の寒さも感じない。心地いい感覚に魔力を途切れさせないようしつつ力を抜いた。
ちなみに、同じことをする魔法使いはほとんどいない。魔力操作とは元来難しいものであり、こんなふうにリラックスしたり睡眠導入のように行うものではないからだ。
『次は歓迎会でしょう? 手っ取り早くヴィンセントルートに入れるためには、ルースをヴィンセントのペアにしないと』
「お前自分の命がかかった瞬間必死だな」
『当たり前すぎる。宿主の命は換えが効きますが自分の命は効きませんからね』
換えが効くとか言うな、宿主に。指輪叩き割ってやろうかな。俺だってお前を消滅させることくらい死力を尽くせばできるんだぞ、その場合ただじゃ済まないんだけど。
「まぁ実際、ヴィンセントルートに進んでもらった方が死亡フラグが折りやすい。ルートによってはシンプルに事故とか謀殺とかいかれるからな。流石にそこまで進んでしまったらシナリオの運命に逆らえる気がしない……」
事故といっても交通事故から明らかに他殺だが犯人の見つからないものでさまざまだ。一番嫌なのはセリオンルートの一つ、領地への帰宅の際に翼竜から襲われる流れだ。原作者だけが知る裏設定としては、セリオンが魔物寄せを仕掛けたのだが。
何も知らないルースが引きちぎられ食いちぎられた肉片をアーノルドだとようやく認識しショックを受ける中、セリオンが優しく慰めて大団円というやつだ。
「翼竜程度なら倒せるかもしれんが、そこまで来ると俺が死ぬことをシナリオに含まされてそうなんだよなぁ。何より、全盛期のアーノルド=フィレンツェが本当に翼竜に斃されたのか? っていう」
『別の魔物かもしれないと?』
「うん。実際、今の俺でも……大群で来られたら厄介だが、みすみす食い殺されるような事はないんだよ」
アーノルド=フィレンツェは確かに悪役の異常者だが、実力は確かであり魔力は世界二位を誇る。何よりこの世界に生きてみて実感したが、魔法使いとは理不尽の象徴なのだ。
世界の理不尽をより強い理不尽さで跳ね除け、君臨する絶対なる強者。それがこの世界における一流の魔法使い。いくらムカつく悪役とはいえ、正式な教育を受けデバフもない全盛期のアーノルドが、翼竜数匹に殺されるわけがない。
……と思えば。確実に兄を殺すため、セリオンが何か仕掛けをしたのだろうというのは想像に難くない。
その仕掛け、が明らかになっていない限り確実に俺が負ける構成でくるという確信がある。そうなれば死一直線である。
「でも、今のセリオンってあれだろ? あのポヤポヤ具合で、好きな相手に何も言わず、残酷な魔法なんか仕掛けられない気がするんだよなぁ……」
『うーん、それならそのルートは考えなくて良いのでは? ああでも、その代わり本当に偶然でとんでもないことが起こる可能性が出るってことですか』
「そういうわけだ。事前に魔物寄せが仕掛けられてない分、途中で解除も出来なくて詰む」
不透明なルートにはできる限り近付かせたくないというのが所感である。できる限り自分の死の形は知っておきたい。
知っていればある程度対策ができるし、幸いにも錬金術は得意だ。
「狙うは、ルースとヴィンセントの真実の愛ルート! 王道であり正道のルートだけど、俺はその場合婚約破棄され公爵の地位を追われ、王都の貧民街に逃げたところ公爵に恨みを持った人間に襲われ消息不明だ」
『どうしてそんなに暗いんですかあなたの先行きは』
「うるせーーこれでもだいぶ明るい方なんだぞ。貧民街には知り合いも多くいるし、何より原作のアーノルドと大きくかけ離れているのが、裏社会の歩き方を知っているか否かだ」
生まれた時からあった記憶に支えられ貧民街を生きて王都の裏社会とパイプを繋いだ俺と違い、原作のアーノルドはフィレンツェの貧民街から出ることがなかった。つまり、王都には誰も頼れる相手がいなかったのだ。
だが俺は違う。こんなこともあろうかと、きちんとパイプを繋いでおいた。これは大きなアドバンテージであり、生存ルートを最も広げられる切り札になる。
「つまり、俺が目指すのはヴィンセント×ルース、最高ハッピートゥルーエンド! そのためにはまず、歓迎会でペアになって早めにルート確定だ!」
『それさっき言いましたよ』
うるさすぎ。黙って賑やかししてろお前は。
俺はひとり、頭を抱えていた。
問題は当然セリオンのことである。セリオン以外で俺を悩ませられる人間なんていない。嘘、そこそこいる。血筋上は弟であるセリオンと先日、初めて感情を露わにする喧嘩をしたのだ。
いや、喧嘩だろうか? セリオンは謝ろうとしたのに、俺が一方的に責めてしまった。それ以降、どうやらセリオンは俺を警戒? 緊張していて。ギクシャクしているような気がする。
「いや、でも、だってなぁ~……」
『なんなんですかデモデモダッテって。真面目に攻略する気あります?』
「魔神は厳しいしよ~」
自分の命がかかってるとなればこれだ。現金な奴め。可能な限り上空に飛び、空気の膜を張ってそこに寝転がる。結界術で視覚とかもろもろを誤魔化し探知されないようにすれば、秘密の簡易型天空ベッドだ。
誰にも知られたくない時こうして寝転び、上にも下にも瞬く星を見て過ごすようにしていた。
結界の中に閉じこもっているから、上空の寒さも感じない。心地いい感覚に魔力を途切れさせないようしつつ力を抜いた。
ちなみに、同じことをする魔法使いはほとんどいない。魔力操作とは元来難しいものであり、こんなふうにリラックスしたり睡眠導入のように行うものではないからだ。
『次は歓迎会でしょう? 手っ取り早くヴィンセントルートに入れるためには、ルースをヴィンセントのペアにしないと』
「お前自分の命がかかった瞬間必死だな」
『当たり前すぎる。宿主の命は換えが効きますが自分の命は効きませんからね』
換えが効くとか言うな、宿主に。指輪叩き割ってやろうかな。俺だってお前を消滅させることくらい死力を尽くせばできるんだぞ、その場合ただじゃ済まないんだけど。
「まぁ実際、ヴィンセントルートに進んでもらった方が死亡フラグが折りやすい。ルートによってはシンプルに事故とか謀殺とかいかれるからな。流石にそこまで進んでしまったらシナリオの運命に逆らえる気がしない……」
事故といっても交通事故から明らかに他殺だが犯人の見つからないものでさまざまだ。一番嫌なのはセリオンルートの一つ、領地への帰宅の際に翼竜から襲われる流れだ。原作者だけが知る裏設定としては、セリオンが魔物寄せを仕掛けたのだが。
何も知らないルースが引きちぎられ食いちぎられた肉片をアーノルドだとようやく認識しショックを受ける中、セリオンが優しく慰めて大団円というやつだ。
「翼竜程度なら倒せるかもしれんが、そこまで来ると俺が死ぬことをシナリオに含まされてそうなんだよなぁ。何より、全盛期のアーノルド=フィレンツェが本当に翼竜に斃されたのか? っていう」
『別の魔物かもしれないと?』
「うん。実際、今の俺でも……大群で来られたら厄介だが、みすみす食い殺されるような事はないんだよ」
アーノルド=フィレンツェは確かに悪役の異常者だが、実力は確かであり魔力は世界二位を誇る。何よりこの世界に生きてみて実感したが、魔法使いとは理不尽の象徴なのだ。
世界の理不尽をより強い理不尽さで跳ね除け、君臨する絶対なる強者。それがこの世界における一流の魔法使い。いくらムカつく悪役とはいえ、正式な教育を受けデバフもない全盛期のアーノルドが、翼竜数匹に殺されるわけがない。
……と思えば。確実に兄を殺すため、セリオンが何か仕掛けをしたのだろうというのは想像に難くない。
その仕掛け、が明らかになっていない限り確実に俺が負ける構成でくるという確信がある。そうなれば死一直線である。
「でも、今のセリオンってあれだろ? あのポヤポヤ具合で、好きな相手に何も言わず、残酷な魔法なんか仕掛けられない気がするんだよなぁ……」
『うーん、それならそのルートは考えなくて良いのでは? ああでも、その代わり本当に偶然でとんでもないことが起こる可能性が出るってことですか』
「そういうわけだ。事前に魔物寄せが仕掛けられてない分、途中で解除も出来なくて詰む」
不透明なルートにはできる限り近付かせたくないというのが所感である。できる限り自分の死の形は知っておきたい。
知っていればある程度対策ができるし、幸いにも錬金術は得意だ。
「狙うは、ルースとヴィンセントの真実の愛ルート! 王道であり正道のルートだけど、俺はその場合婚約破棄され公爵の地位を追われ、王都の貧民街に逃げたところ公爵に恨みを持った人間に襲われ消息不明だ」
『どうしてそんなに暗いんですかあなたの先行きは』
「うるせーーこれでもだいぶ明るい方なんだぞ。貧民街には知り合いも多くいるし、何より原作のアーノルドと大きくかけ離れているのが、裏社会の歩き方を知っているか否かだ」
生まれた時からあった記憶に支えられ貧民街を生きて王都の裏社会とパイプを繋いだ俺と違い、原作のアーノルドはフィレンツェの貧民街から出ることがなかった。つまり、王都には誰も頼れる相手がいなかったのだ。
だが俺は違う。こんなこともあろうかと、きちんとパイプを繋いでおいた。これは大きなアドバンテージであり、生存ルートを最も広げられる切り札になる。
「つまり、俺が目指すのはヴィンセント×ルース、最高ハッピートゥルーエンド! そのためにはまず、歓迎会でペアになって早めにルート確定だ!」
『それさっき言いましたよ』
うるさすぎ。黙って賑やかししてろお前は。
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