ホテル清掃員の俺がオーナーの御曹司に見初められちゃって自分を略奪してくれって頼まれちゃった話聞く?

Q矢(Q.➽)

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行きつけ…行きつけか…。

だよな、こんな育ちの良さげなエリート‪α‬君の行きつけの店が食べ放題3980とかな訳が無かったな。


フッ。(自嘲)




連れていかれたのは、俺の中の焼き肉店の概念を覆す店構えの超高級店だった。


店員の 元気な らっしゃーせ!も無く、いらっしゃいませ、と文字の入った出入口の玄関マットも無い、シックな雰囲気の出入口と和モダンな内装の店内。

俺こんなカッコで大丈夫? この店、ドレスコードとか無い?

…そして、素晴らしく慇懃な店員さんが案内してくれたのは個室…。


ドキドキしながら座る俺。

いや待って…。此処、半分は個室なんじゃん?
招待券?こんなお一人様ウン万って感じの店も招待券とかってあんの?
予約の取れにくい店とかそういう感じに見えますけど気の所為?

そしてやたら高級感を漂わせるメニュー…。

…焼き肉…焼き肉か。確かに焼き肉もあるな。ステーキとかがメインっぽいけど。

足出た分割り勘とかありそう。
いくら持ってたっけ、今日…。しくったなー。
一万くらいしか入ってなかった気がする。

やっぱ会ったばっかの他人と飯なんか来るもんじゃない、と早速後悔する。
いざとなれば近くのコンビニATMに走るか、と覚悟を決めた俺。

そんなお俺の気持ちをどこ吹く風で涼しい顔の梁瀬さんは、ドリンクをオーダーしている。

「鈴木さん、お飲みになられますか?
それとも最初はノンアルで?」

とか言いながら本人は泡とか言ってる。
泡って何?生とかじゃなくて?

どだい俺は下戸なので烏龍茶をお願いします。
 
「メニューは…どうしましょうか。満遍なく食べられる方が良いですかね。」

「…オマカセシマス。」

下手したら半月分くらいの給料が飛びそうだけど、もうどうとでもなれ。


「では…取り敢えずこのSSコースを2人前。」

暫くするとドリンクが運ばれて来て、俺の前に烏龍茶、梁瀬さんの前にはバスケットに寝かされたボトルが…えーと、何なに…。
どん…ぺりにょ…。


見なかった事にする。

意味がわからない。焼き肉来てドンペリ。

そしてコースが供され始めて、俺は詰んだと確信した。

焼き肉屋でトリュフとか出されたの、俺初めて。


明日からは当分白飯だけだな。幸い米だけは毎月月初めに10kg買ってあるから、それで凌ごう。

諦めの気持ちで皿の上に乗ったブランド牛を眺めていると、梁瀬さんが口を開いた。


「急にお誘いしてすみません。
実は、昨年末にいただいた全額無料招待券の期日を見たら今日迄だったのを思い出してしまいまして。なのに今日に限って友人の1人も捕まらないので困っていたんですよ。」

「えっ、全額?」

「はい。本当に今日、鈴木さんとお知り合いになれて良かった。危うく無駄になる所でしたよ。」


ほ、本当?マジでこれ無料?!
一気に気分が急浮上。

にっこり綺麗に微笑む梁瀬さんが神様に見えてきて、危うく拝みそうになる。

俄然食欲が戻ってきた。


28にもなっていじましいと思われるだろうが、先々の心配をしながら食う肉と、何の気がかりもない奢り肉って、全然違うじゃないですか?(圧)


梁瀬さんって…良い人だなァ…。

現金な俺は早くも絆されかけていた。ちょろし。

えー、でも友人はともかく、カノジョとかいるだろうに、何で俺なんか誘ったんだろ。



少し炙られただけのそれが舌に乗り、体温で更にゆるっと溶けていく。いい脂~。



「鈴木さんは今のお仕事、長いんですか?」

梁瀬さんが泡とやらを飲みつつ俺に話を振る。急だな。

「いや、2年くらいですね。最初は新卒で銀行に3年ばかり勤めたんですけど、合わなくて。」

「そうだったんですか。」

どうでも良いけど梁瀬さん、全然食べないな。

「召し上がらないんですか?冷めますよ。」

俺が梁瀬さんの前の皿を目線で指すと、梁瀬さんはじいっと肉を見てから、ノロノロと箸を取った。
え、アナタが誘ったのに、もしかして肉に乗り気でない?
マジで招待券消費の為だけに来たのか…?


ゆっくり肉を口に運ぶその表情は何故か苦々しい…と、数秒後その表情が驚きに変わった。
そして咀嚼して飲み下すと、一言。

「旨い…。」

と呟いた。


え、何?その…初めて肉食べた時みたいな反応。


「…旨い…。嘘みたいだ…。」

残った肉にも手を付けてみてる。
おー、食う気になりましたか。

「味がある…。」

食べる度に妙な事を言うのでつい聞いてしまった。

「…どうしました?」

梁瀬さんは、ハッとしたように俺を見て、恥ずかしそうに箸を置いた。いや何で?食いなよ…。

そして思いがけない事を言ったのだ。

「最近、ずっとものの味がわからなくて。食事に興味を失くしていました。だから適当に済ませるようになってしまってて。」

「味覚障害ですか?」

あ、いやでもさっき旨いって言ってたもんな?


「病院では何の病気も引っかからなかったんで、ストレスなんだと思ってました。
だからあまり食欲も無くて。
でも確かに、昼間少し味がしたような気がしてたんだよな…。」

「昼間…。」

昼間…あ、ゼリー飲料飲んでましたね。
そっか、だからゼリー飲料か。
一応のエネルギーとカロリーだけ補給ってか。

そう言われてみると、スタイルが良いとは言え少し顔色も青白かった気がする。


「最近って、何時からなのかわかってるんですか?」

会ったばかりの相手に突っ込んで聞くのもどうかなと思ったが、話の流れで聞いてしまった。
まあ、話したくなきゃ言わないだろ、と思いながら烏龍茶を飲む。

「…半年前からです。婚約が決まった辺りですかね。」


思いがけず返答されてしまった。
あ~…まあ、こんだけの肉をご相伴に与るんだから、愚痴くらいは聞きますか。


「所謂政略結婚なんですが…
本当に合わない相手で…。」


そう語りながら見つめてくる。

何?その熱い眼差し?


「鈴木さん、僕の話、聞いていただけますか?」




あ~、下手こいたかも。

厄介事の予感しかしな~い。







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