トライアングルの真ん中で

Q矢(Q.➽)

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30 知らない内に護られていた (充視点)

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仲が良くない、腐れ縁。
そう聞いていたのに、王太子様の事をそんなに寂しげな顔で語られるとは思わなかった。
レイス様は俺の身を案じているようでいて、王太子様の心配をしているように思えた。




湯木がちょっとランニングしてくると言って行ってしまい、俺は神殿から邸に戻って洗濯の続きをしなきゃならない事を思い出した。洗濯は浴室でやる。洗濯機欲しい。
何枚か石鹸をつけて洗ってバスタブの中に放り込んでおいたやつを両手で揉んでると泡が果てしない。
でも洗いながら考えた。今からじゃ外に干せないよな。夕方迄間が無い。水に浸けちゃってるから洗うけど…。
異世界迄来て部屋干しかあ。大丈夫かな、部屋干し臭。二階の風通しの良い部屋に干すか。

わしゃわしゃ洗いながら、確か足で踏んで洗濯する方法とかあったよな、と思い出す。…足で…。ラクかも。やるか?
俺は一旦浴室を出て、長ったらしい服を脱いで下着だけになってから改めてバスタブへ。
そのままってのも抵抗があるしと足を綺麗に洗ってからバスタブに入った。
お湯を少し足して、足踏みしてみると、泡と濡れた布を踏む感触がわりかし楽しい。気がつけば無心でふみふみしていた。
暫く頑張った後、濯ぎをしてギッチギチに絞ってから二階に干しに上がった。
因みに作業中はずっとパンイチだ。どうせ家には俺だけだしという油断がそうさせた。
干し作業を終えて、汗だくになったからシャワーを浴びてしまおうてと階段を降りてたら、玄関ドアが開いた。

「ただい…ま…。」

「お、おかえり…。」

帰ってきた湯木にパンイチ見られた。



何故か俺のパンイチに劣情を催したという湯木に襲われて汗まみれの全身を舐め尽くされた後、洗濯とセックスで疲れた俺は、湯木に風呂に入れてもらった。ぐったりだ。でももう少し休んだら夕食も夜のお祈りも行かなきゃな。俺の唯一の仕事だからな。
あと小一時間くらいで体力回復するだろうか。
不安が顔に出たのか、湯木が頭を撫でてくれながら言った。

「ごめんな、あんまり可愛いから我慢出来なかった。」

「…やっぱ湯木の美的感覚はちょっとおかしいな。」

「みつは謙虚だな~。」

「……。」

やっぱ湯木って変わってる。


結局俺はちゃんと着替えて神殿に行き、食事と仕事をこなした。まあ、お祈り…ぶっちゃけ座ってるだけで体力は必要ない。これって俺、何か役に立ってんの?という事は気にしたら負けなので考えない。
レイス様がそれで良いというならそうなんだろう。  

神殿から帰宅して、お茶を入れて二人でボーッとソファに座ってたら、昼間の話を思い出した。

「俺が加護を与えられるって、ほんとにお地蔵さまのお陰なのかなあ。」

湯木は、そうだなあ、考え込んだ。

「でも他に心当たりある?」

「…無いねえ。」

「じゃあやっぱそれしかないんじゃね?」

湯木はそう言うが、俺には引っかかっている事があった。

「でもさ、もしお地蔵さまに信心した事でそれが来てるならさ、俺自身にはその力は作用しないのかな?」

ハッとしたような顔をする湯木。

「あ、膝…。」

「うん、俺、中学ん時事故で膝やってんじゃん?」

帰宅時に交通事故に巻き込まれた。警察には、規模の割りには死人が出なかったのが奇跡とは言われたが、俺は両膝の靭帯を損傷して一時は車椅子生活を送った。幸い、回復も早くて日常生活には支障無いくらいになったけれど、部活は辞めざるを得なかった。
何せ所属してたのが陸上部だったから、まあ仕方ない。でもあの後、湯木迄部活辞めたんだっけ。
俺は湯木の走る姿がカッコよくて好きだったから、何で辞めたんだって怒ったんだよな。だけど湯木は、みつが居ないとつまんないって聞かなかった。
俺が車椅子生活になった時からずっと、湯木は学校帰りに俺を送ってくれた。
高校に上がって、カノジョができるようになってからも、湯木と一緒に帰る時は何時も家迄送ってくれたのだ。多分湯木は、また俺が事故に遭うのを恐れてたんだろう。
思い出して、少し泣きそうになった。

でも…。

「お地蔵さまが守ってくれてるなら、何であんな事故に遭ったんだろ?」

さっきの話を聞いた時、その事を真っ先に思い出した。いや、別に俺は大した選手でもなかったから、あの事故に対して今更恨み言を言う気も無い。只、純粋に不思議だったのだ。他人に加護を与えられる程に守られてるのなら、何故俺自身には加護が働いてなかったのかと。
すると湯木は少し考え手から言った。

「まあ、確かに事故には遭ったけどさ。みつ、警察にも足の怪我や腕のかすり傷だけで済んだの奇跡だって言われたって言ってたじゃん。
みつが助けた子供も無傷で、トラックの運転手も軽い怪我で済んで。」

「そう言われたら、そうだよな。」

言われて思い出した。
そうだ。あの時、俺は車道に出ていた3歳の女の子を助ける為に荷物を投げ出して走ったんだった。

「子供、守ってるじゃん。やっぱみつにはちゃんと護りがついてるんだよ。」

「そっか…。そうかも。」

一生不自由するかもと言われた膝は、今は気にもならないくらいに治った。
それ以外には大きな病気をする事も無かった。

…まあ、湯木には殺されちゃったけど、今はこうしてまた隣にいる。

「そっか。俺、護られてたのかぁ。」


よくわかんないけど、お地蔵さま、ありがとう。



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