男嫌いのシングルマザーの俺VS絶対俺を番にしたい男

Q矢(Q.➽)

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3 ピカピカαご登場

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「咲太さん、おはようございます!」

「……オハヨウゴザイマス。」


千道…今日も朝から目がチカチカする男だ。

俺は会釈をして挨拶を返しつつ、その男を迂回しながら、娘の莉乃の手を引いて園内に入った。
何でコイツは毎朝毎朝此処に立ってんだ。邪魔だな…。
銅像でも目指してんのか。
朝日を浴びてピカピカ輝いてるからそれも良いかもな。
でもその際にはもう少し端に寄せてくれると助かります、と 千道の日に透ける茶色い髪を見ながら思った。


俺は莉乃を保育士さんに預けて、振り向いて手を振る莉乃に手を振り返して踵を返す。
早く家へ帰って仕事だ仕事。
そう思いながら歩く俺の後ろをニコニコしながらついてくる千道。
これも土日以外毎日の事である。暇なのかな。さっさと仕事行け。

「咲太さん、今日も輝いてますね。それにいい匂い~。」

「…抑制剤飲んでますが。」

「俺にはわかるんです。
ほら、運命なので。」

「……ソウデスカア、ヘエー」

「ははっ、咲太さん相変わらずクールですね~」

「……。」

何故コイツは俺の事を名前で呼ぶのだろうか。
不快なのでやめてくれと抗議しても全然意に介されぬまま今に至る。
別に死ぬ訳でもないから名前くらいはもう諦めてやるが、これ以上の譲歩は1ミリもしたくない。

正直、シカトしたい。
したいが、コイツは莉乃の大好きな嵐くんの叔父であり、忙しい兄夫婦の為に毎日のように嵐くんを送り迎えしている感心なヤツなのだ。それを知ってからというもの、無碍に出来なくて最低限の相手はしている。

但し、千道が嵐くんを園近く迄送ってくるのは運転手付きのベントレーなのでちょっとイラッとしているとこもある。

……なんで嵐くん、この園通ってんのかな?マジで。



「咲太さん、今度の土曜って、」

「すみません、ちょっと急ぎますのでこれで。」

余計な話を長々したくないので途中で遮って歩行速度を上げる。

健康の為にと出来るだけ歩くようにしているが、家から園迄は、ほんの徒歩15分程度。早歩きならもう少し早い。
自転車の時ならもっと早い。
莉乃を連れて歩けば、20分以上はかかるけれど。

俺が歩く速度を上げれば、千道は苦笑いしながらも無理には追っては来ない。それも何時もの事だ。
ついてこられて家が知られるのは怖いから、それには正直ホッとしている。

でも背中に視線を感じるから、きっと今も千道は俺の事を見送っているんだろう。

俺が振り返る事はないけれど。





3年以上前、妊娠が発覚し、様々な事を真由に相談した後、腑抜けていた俺に代わりいち早く動いてくれた彼女の尽力により、俺はΩの支援団体に紹介された この街のマンションに引っ越してきた。
子供が産まれてしまってからでは身動きが取りにくくなると言われ、少し無理をしたけれど、結果的にこれが正解だった。
セキュリティがしっかりしていて 管理人常駐の物件だが、国から補助が出ているので家賃負担は5割程。
マンション周辺も死角が少なく、夜でも街灯が明るい。
リモートなので今の所、夜出歩く事は少ないが、不安要素は出来るだけ少なくしたかった俺にはありがたい住環境だ。

Ωとして登録を行い、仕事復帰出来る迄の間は、受けられる公的支援は全て受けながら莉乃を育てた。

Ωが絶滅危惧種に近い存在で、且つその特性により社会的弱者であり、今ではα以上に国家に庇護されていた事を、俺は自分がこの立場に置かれる迄知らなかった。


夜中の数時間おきのミルク作りにノイローゼ気味になった事もあるが、本当に限界になりかけたら助けてくれる友人(真由)達がいた事が、心の支えになった。

愛せないかもしれないと思っていた我が子に、愛情がわいたと自覚出来た時、本当に嬉しかった。

仕事復帰して、莉乃を預ける事になった保育園に送り迎えをしだしてから間もなく、同じように嵐くんを迎えに来ていた千道と出会った。
すらりと高い身長。
長い手足にはしっかりした筋肉がついているのがスーツ越しにもわかる。整い過ぎた彫りの深い顔立ちも相まって、外国人のモデルみたいだなあ、というのが率直な感想。

挨拶されて、随分若くて綺麗なイケメンパパだと思って少しの間見てしまったのが悪かったのかもしれない。
次の瞬間には両手を取られて握られ、顔をじっと見られて、

「番を前提にお付き合いして下さい。」

と言われた。

ゾゾゾゾゾゾゾッ

握られた手から始まり全身に鳥肌が立ち、ヒイッ、という悲鳴と共に気を失って、再び気がついたのは数分後。
目を開けると、女性の保育士の先生数人が俺を囲んで呼び掛けてくれていた。
1人はスマホを持ち、救急車を呼ぼうとしていたようだったが、俺が直ぐに目を覚ました事で一旦保留。
莉乃は突然俺が倒れた事に驚いたのか、泣きじゃくっていたし、それにつられた他の子供達数人も泣いてるし、カオス。
元凶である千道はと目だけを動かして探すと、少し離れた所で、叱られた犬のようにしょんぼりと済まなそうに此方を見ていて、俺が目を開けた事でホッとしたような表情になった。


だからその時に言ったのだ。

「この通り、俺は男性を受け付けないんです。
申し訳ありませんが。」

そう言うと、その時千道は確かに頷いたのだ。
だから納得してくれたものだと安心していた。

ところがそれからも千道は、俺と会う度に挨拶をしてきて、何かと会話をしたがった。
保育士の先生方に厳重注意されていた癖に懲りないヤツだ。

何時も当たり障りない話題だったからそれなりに付き合っていたら、趣味や好きなものを聞かれたり、最近は休日の予定を探られたりして、とても困惑している。
色良い返事ひとつした事すら無いのに、何故なんだ。
諦めたんじゃなかったのか。

只、倒れた日から一度も触れてこようとはしないので、学習能力はあるようだ。


…まあ、考えてみれば、出会ったばかりの人間に前触れも無く触れた事自体が非常識な事で、これが普通だと思わなくもないが。

そんな訳で、一定の距離を保ってはくれはするが、毎日飽きず会話という接触を図ってくる千道に 俺はストレスを感じている。

そして、Ωというには美しくも可愛らしくも無い普通の男の俺に交際を申し込む千道の事を、薄気味悪くも思っている。

歳上、コブ付き、平凡、極めつけは男性嫌悪。


千道はそんな俺の何を見て、尚も固執するんだろうか。

俺に乱暴したヤツみたいに、嫌がる男を組み敷きたい性癖でもあるんだろうか。


αの考える事はわからない。




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