男嫌いのシングルマザーの俺VS絶対俺を番にしたい男

Q矢(Q.➽)

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28 お泊まり会から1夜明け

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番のαを受け入れるという多幸感は、さっき迄の比ではなく、俺はそれから何度も達した。
何をされても、何処に触れられても、肌にかかる吐息にさえ、俺は感じた。

それは多分、名城も。

必死に交わった後半の記憶は朧げだけど、名城の必死な表情と、切なげに俺の名を呼び続ける声が耳に残っていて。

次に気がついた時には、翌朝だった。

目を覚ました時に、見慣れない天井や室内に、此処がどこだかを思い出すのに数秒を要し、横に寝ている名城を見て、寝顔可愛いとほっこりし、でもその可愛い男に散々鳴かされた事を思い出して赤面し、莉乃の事を思い出して顔面蒼白になった。


「やば、莉乃…!」

「大丈夫、連絡済み。」

起き上がってベッドの端に座り頭を抱えた俺を、何時の間に起きていたのか名城が背中から抱き込んできた。

「…起きてたのか…。」

「最初から。
起きた咲太さんがどんな反応するか楽しみで。」

「……人が悪いぞ。」

名城は あはは、と笑いながら肩越しに俺の頬に頬擦りをした。

「親失格だ…子供の事を忘れるなんて…。」

「別に放置した訳でも無し、専門の人も義兄もいるんですから。それに、お泊まり会するって言ってたでしょ、莉乃ちゃんと嵐。」

「…とは言っても…。」

それとこれとは違うのでは。

「保育園にだって何時間も預けるでしょ。大丈夫ですよ。

さっきも連絡来ましたけど、昨日もご機嫌でお姫様してご飯食べて、義兄の部屋にお姫様ベッドを運んでもらって、嵐と3人で寝たらしいですよ。
今朝は未だぐっすりらしいですけど。」

「うわ…由人さん、ごめんなさい…。」

「?さっきおめでとうって言われましたけど?」

「ひ、ひえ…。」

早速報告されてる…!!

つまり、何があったのか由人さんに知られてるって事…。

「あ、大丈夫です。義兄には、今回でキメるからって事前に言っといたんで。」

「……えっ?」

「そしたら、ならシッターさん全員連れていってバックアップするから頑張れよ、って。」

「…………。」

「今回の為に莉乃ちゃんの好きそうなオモチャとかアイテムとか色々リサーチして。
あ、勿論咲太さんが温泉好きなのは最初の段階で知ってたんですけどね。
だから先々月に急遽岩風呂を発注したんですけど。

ばっちりハマりましたよね!いやあ、よかったよかった。」


…え?何?シッターさん3人ってその為だったん?
てっきり幼児2人いるからかなって…。
…え、由人さんに予告してたの?
莉乃好みのって、もしかしてあのお姫様テントとかの事?
いやそれより、俺が温泉好きってどっからの情報?あ、もしかしてママ友の凛子さんに1回だけ学生時代に行った旅行の事を話した事から…?
それとも、どっかで温泉でも行きたいなとか知らない内にボヤいてた?

…つーか、計画的犯行だったの?
こんな邪気の無い顔して?
嘘だろ?


「末永く、よろしくお願いしますね!」

「……こちらこそ、よろしく、な…。」



αってこんな感じなの?







散々やらかしたので腰も体も怠かったが、今日は動物園に行くと言っていたと思い出した。
取り敢えずもう一度風呂に入った俺は、ヘロヘロの状態ながら名城に支えられ、邸に帰る為に車に乗った。

あれだけ俺の中に精を発散した筈の名城はご機嫌で今日も元気いっぱいだが、αという種の体力はどうなっているのか。
ほんとに同じ人間なのだろうか。
神とは何処迄も不平等である。
俺と名城はよっぽど相性が良いのか、起きたら既に番として痕は定着していたし、3日は続くと言われているヒートも何故か落ち着いていたし、ハッピーな筈なのに何だか腑に落ちん。

「……ハメられた?」

外堀から埋められてお膳立てをされて?
首を捻る俺に、名城が笑う。

「あはは!!確かに俺が咲太さんにハメちゃったもんね!」

嘘だろ名城。お前、そんなオヤジみたいな事言えたの?
品の良い爽やかお坊ちゃまは?
意外というか、ちょっとびっくりして名城を見た。

しかし運転中の名城は、俺の視線を平然と受け流しながら言う。

「俺がどんな人間でも、もう逃げられないからね。」

「え、別にそんな事 考えてないけど…。」

「…幻滅されたかと思って。」

「幻滅?」

「……色々、必死だったでしょ、俺。貴方が欲しくて。

結構寒い事も言っちゃうし。」


そんな言われたら、詰るも責めるも出来ない。
そう思いながら、名城の横顔を見つめる。

名城は、不安だったんだろうか。俺なんかにそんなに必死になる必要なんかなかったのに。



「早くしないと咲太さんを真田の跡取りに取られるって、急ぎ過ぎました。」

「え…っ、」

名城の口から真田の名が出て大きく心臓が鳴った。
真田には、あの料亭での昼食の日以来、会っていないけれど。
でも何故、名城は猫ランで一度会っただけの真田の名を知ってるんだ。
俺はそこ迄話してはいないのに。

 
「…なん、で…。」

「どっかで見覚えのある顔だと思って、調べたら。以前仕事関係のパーティーで会ってた。」

「そう、か…。」

「莉乃ちゃんのお父さんだよね。」

それも、知っていたのか。

「…うん、ごめん。
ちゃんと話してなくて。」

名城は邸の前の駐車スペースに車を停めた。
昨日の初老の使用人が気づいて近寄ってこようとするのを、窓越しに手で制して言葉を続ける。


「貴方の過去に何があって誰がいても良い。

只、他の誰かを選ばれるのだけは、嫌だ。」

思いの外、思い詰めていたようだ。

「だから、謝らないよ。
だから、咲太さんも謝らないで。

もう貴方の過去も全部、俺のものだから。」


名城の静かな声のトーンが、深くじわじわと俺の胸に沁みた。

俺だって同じ気持ちだ。

手放せない、もう。
お前だけは。


俺は名城の手を取り、その甲に口づけた。


俺はお前のもので、お前も俺のものだと、誓いの意味を込めて。



愛おしい、俺のただ一人のα。


















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