結婚式の最中に略奪された新郎の俺、魔王様の嫁にされる

Q矢(Q.➽)

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虫除けというより呪い。

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「ときに、そなた、リクという名であっているか?」

「え、はい。リク・カルデアにございます。」

「ふむ。よくそう呼ばれていたゆえ…ふ、良い名だ。」

「はあ、ありがとうございます。」

「名も良いが、リクは可愛い顔をしておるのう…。」


モリオン様が俺の太腿を指先でつつ~っとのの字を書いている。
何だろうか。セクハラだろうか。

「そ、そうですか?あまり言われた事がないなあ~…ははっ…。」

「それはそうであろ。
邪心を起こす奴らがおらぬとも限らぬゆえ、虫除けをしておいたしな。」

「虫除け…?」

「一度、寝ておるそなたに会いに行ってくちづけをしておいたのよ。」

「ヒェッ……」


衝撃の事実。
俺、寝てる間にモリオン様に唇奪われてた…の?
え、何時?

「う~ん?もう3年ほど前かのう。実に美味であった。」

俺が未だショタの頃から。
そんな頃から目をつけられてたのか。犯罪では?
いやでも相手は魔だからそんな事考えないのかな。
ん?だからカノジョとか出来なかったの?
それって虫除けじゃなく呪いでは…。

そんな俺の混乱と疑念を他所にモリオン様は語り続ける。

「我はまだ父について魔王見習いだったゆえ、人の世で長くは姿を保っておれなんだ。
だからくちづけのみしか出来ず…。ほんに歯痒い思いをしたものだ。」

「……ワァ…。」

もしモリオン様が、少し早目に魔王業継いでたら 俺はその場で問答無用で自室で犯されてたかもしれないんだね!
それについては15の俺、ラッキーだった!
しかし、という事は、魔王になった今ならそんな憂いも無く、遅かれ早かれ俺はコマされていたって事なんですね……。
もうここ迄来たらラッキーは起こらないだろうし。

 
俺が虚無の目と心になっていた数秒で、モリオン様は何故か俺の膝に乗っていた。
え?何時の間に?


よいしょ、と俺の腕を自分の腰に回させるモリオン様。

え、抱っこ?抱っこの体勢しろって事ですか?俺がする側?


そこ迄考えて、きちんとモリオン様と、自分の体格差を見てみると、確かにモリオン様、俺よりやや細身かもしれん。
俺は祖父ちゃんも親父も上背もあって結構ガッチリめだから、同じような体格だし、関節もしっかりしてて、多分モリオン様より筋肉量は多い。
でもモリオン様は…骨格からして細そうな。
魔族ってもっと強そうなイメージあったんだけど?


それに、ドレープ大目の黒衣で体のラインが更にわかりにくい。
俺は確認の為に膝の上のモリオン様の腰を両手で触ってみた。

「ひゃっ!!」

「あ、申し訳ございません。
細っ……。」


思った通りというか、モリオン様の腰はいやに細かった。
すすすっ、と腋の下から腰下迄を、手を上下させて触ってみると、モリオン様は、擽ったそうに身じろいだ。

「り、リク…あっ……」

「あ、重ね重ね申し訳ございません。いやマジで細いんですが、ちゃんと食ってます?」

泣く子も黙る恐ろしい筈の魔王様は、顔を真っ赤にして俺を見る。

「……て、おらぬ。」

「え、やっぱり食事抜いてるんですか?偏食?」

「違うわ。」


違うのか。
じゃあ単に体質か。

勝手に納得していると、モリオン様はピンクに染まった頬のまま、少し羞じらうように言った。


「我が肥え太るもやせ衰えるも、そなた次第だ。」

「え?俺?」

俺、料理とか出来ませんが?


「伴侶となったリクの精をたんまり取り込めば、我の体の隅々までそれが行き渡ろうというもの…。」

「え?精?」


それって、つまり、そういう事…ですよね…。 


モリオン様は俺の首に細い両腕を回し頬を擦り寄せた。
す、すべすべ…。


「我の家系では、愛しい相手が現れれば、その者からしか滋養を得られなくなる。
流石にくちづけのみでは3年が限界であった。
これから毎日、宜しくたのむぞ。」

「……え、えええ…、」


そ、そんなの初耳……なんですけど…。


これって、俺は…どっち?






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