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俺もクズだがお前もクソだな…
しおりを挟む今日も今日とて王太子がウザい。
「なあ、セス?
そろそろ頷いてくれないか?」
「何をでしょう?」
授業が終わったから厄介な連中に見つからない内に屋敷に帰ろうと廊下を歩いていたら、俺を探していたらしい王太子とその取り巻きに見つかった。
俺は天然を装って首を傾げてみせる。王太子は眉を下げ、そんな…と肩を落とした。
「だから、番になってくれる話だ」
「…だって、アレス様にはエリオ様がいらっしゃるではありませんか」
少し寂しげに目線を逸らす。
…いっけね、つい癖で。 さも気がありそうな仕草をしてしまった。なっかなか抜けねぇなあ、この悪癖。染み付いてんだな、もうな。
王太子はまんまと勘違いして、背後から俺の両肩に手を置いた。こめかみがヒクつく。俺の後ろを取るとは良い度胸してやがるぜこのポンコツ。
「大丈夫だ。もしエリオと結婚したとしても、番の絆の強さは別だ」
「…は?」
いや、は?気の所為かな…?
今ちょっと……聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたな?
此奴は何を言っているんだ?
「どういう事でございますか?」
「いやだから、エリオと結婚したって、セスと俺が番の関係を結べば…」
「あ?」
此奴が今、とんでもねえ二股発言をしたのをおわかりいただけただろうか?
つまり、エリオとも結婚して俺とも番になって、どっちも手に入れてウハウハしたい…
そう言っているのである。
流石の俺も、これにはコメカミの血管が浮き出るのを止められなかった。
安く見られたもんだ、俺ともあろう者が。随分安く扱おうとしてるな、あの孤高の美しさを持つエリオを。
メリットあんの、てめぇだけじゃねえか。
だからαは嫌いなんだよ。
「…つまり、王太子様は、私に日陰者になれと」
「いや、番の方が…」
「何方も自分の妻にして、抱くと仰っているのですよね?」
「…うん、まあ…そういう…」
「お断り致します」
「えっ」
俺が無表情で断ると、王太子は慌てて何故だと聞いてきた。
よく聞けたな、お前…。
「何故だ、俺はこの国の王太子だぞ?何が不服なのだ」
「立場の問題ではございません。
それに私とて、国へ戻ればエリオ様と同じ公爵家の者でございます」
「…それは、そうだが…」
「私は、そのように軽んじた扱いをされる事には慣れておりません。それは勿論、エリオ様とて同じ事でございましょう。
王族だからと、我々を勝手に慰みものにできると思わないでいただきたい」
普段は幾重にも猫の皮、兎の皮を被って言葉少なに微笑むだけの俺が、突然滔々と喋り出したからか、王太子は驚いているようだった。
「す、すまぬ。軽んじるなどとそんなつもりは…」
「では、どんなおつもりなのでしょう。
いくら通常の婚姻とは別に番婚が認められているとはいえ、婚姻前から二重生活をする気満々とは前代未聞でございます」
「そ、そんな…」
何とか俺を宥めようと必死なようだが、俺は胸に湧いてくる怒りを止められなかった。エリオはこんなつまらない男にこんな風に扱われて良い人間ではない。
彼は…彼は――
…彼は、何だって言うんだ…俺は…。
自分の処遇よりエリオがそんな風に遇されようとしていた事の方がムカついている。
まさか、俺…。
「とにかく、私は不実な人間は嫌いでございます。では、失礼」
「セス!!」
空気のように成り行きを見守っていた取り巻き達に、一瞬ぐるりと囲まれたが、ぎろりと睨み回すと急に臆したように後退した。
舐めるなよ。
こう見えても幼い頃から剣の鍛錬も護身術の訓練も積んで来てるんだからな。
何せか弱いΩなもんで、自分の身は自分で守れるように、辱めを受けないようにと母は俺に教師を付けたのだ。
体格や力で劣るなりの戦い方は知ってるんだぜ。
「ごきげんよう」
振り返って、笑顔も見せず挨拶をして俺は校外に待たせていた馬車に乗る。王太子の呆気に取られていた顔も、俺の溜飲を下げる事は出来なかった。
只、この瞬間、あの凛としたエリオの顔を見たい、と思った。
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