ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)

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翌日、登校して教室に向かう途中でCクラスの前を通りかかった。壱与君の席には、まだ姿はない。まだ来てないのかな。
僕は寂しいような、少しホッとしたような変な気持ちになりながら自分の教室へ急いだ。
おはよーっと挨拶しながら教室に入ったら、先に来てたクラスメイト達がおはようと返事を返してくれたけど、その中に僕を見てギクシャクする人が数人。何?

妙な雰囲気に首を傾げながら席に向かうと、稲取君が変な笑い方をしながら寄ってきた。

「おはよ。具合いどうだ?」

「おはよ。別に、普通」

「でも病院行ったんだろ?」

「行ったけど、異常無かったよ」

「そっか。ほんとは昨日、LIMEで聞こうかと思ったんだけどさ…」

そこまで言って、何故か語尾を濁した稲取君の顔が更にニヤニヤしてる。どしたの?稲取君ってたまに気持ち悪い笑い方するんだよね。

「…聞いてくれたら良かったのに」

「マジで何か発見されてたら、落ち込んでるか家族会議中かもと思って」

「お気遣いだったの…」

変なとこで気ぃ使いだよね、稲取君って。

そうこう言ってる内に席に到着。1時間目って数学だったっけと思いつつ、自分の机の上にドカッとリュックを下ろした。ウチの高校、置き勉OKだから教科書は置きっぱだし荷物はそんなに無いんだけど、登校時はお弁当で重いから下ろすと肩が生き返る~。
僕が座っても、稲取君は席に戻らず話しかけてくる。

「そういや昨日、ランたんの彼ピ来てたよ」

「かれぴ?」

かれぴって、俗にいう彼ピッピの事?
何の事言ってんだろうと稲取君を見ると、

「ちゃんと連絡くらいしてやれよな」

と言ってやっと自分の席に戻って行った。なに、僕の彼ピって。
ポカンと見送ってたら、何時の間にか登校していた隣の湯川君が、稲取君のフォローをするように僕に言う。

「おはよ。昨日、お昼休みにC組の壱与君って子が来てたんだよ。熊の子」

「あ、ああ!壱与君!」

なんだ、壱与君の事かぁ。
壱与君、来てくれたんだ。……でもなんで、壱与君が僕の彼ピッピなんて事になってんの?

よくわからないから素直に聞いてみる事にした。

「なんで彼ピ?」

すると湯川君は何故か顔を赤くしながら、言いにくそうに答えてくれた。

「だって、佐久間君と稲取君が…その、吉田君に壱与君って子の匂いがすごくついてたって…」

「え…」

「獣人の人には皆わかってたらしいよ。
すっごい仲良くしないとあんなに匂いつかないよねって…」

「…すっごいなかよく…?」

「その…しちゃったんでしょ?セッ…ク…」

鈍い僕はそこまで聞いてやっとわかった。
つ、つまり皆は僕に壱与君の匂いがすっごく付いてるのに気づいてて、僕達がセッ…性交渉する関係だって思ってて、だから壱与君は僕の彼ピだと思ってるって事?!

「ごごご、ごか…誤解だから!」

僕は湯川君に胸の前で手を振って、否定した。匂いが付いてるからって何で一足飛びにそんな事になるのさ!

「違うの?」

「まだ違うよ!」

「まだ、なんだ…」

「アッ、違っ、まだっていうか…、」

墓穴。

なんて説明したら良いのかわからなくて焦ってる内に、予鈴が鳴って先生が入ってきた。
良かった…朝のSHR(ショートホームルーム)に助けられた…。
その後、羞恥に悶々としている内にSHRは終わり、すぐに1時間目が始まった。
心做しか、後ろと横からの視線が痛かった。

数学の時間中、僕と壱与君が…?って妄想をする事になって全然授業の内容が頭に入って来なかった。そんで、授業が終わって教室を出ていく先生にも生暖かい目で見られた。

因みに数学の小石川先生は、20代後半の羊獣人ベータ男性です。

次の時間も何とかやり過ごした2時間目の休み時間、後ろがザワついたと思って振り返ってみたら、教室の後ろの出入り口に壱与君が来てた。
朝からいけない妄想をしちゃってた相手の登場に心臓が飛び出しそうになったけど、僕を見つけて嬉しそうに手招きされたら逃げる訳にもいかない。
あー、手を繋いだりキスしたりとかやらしい妄想しちゃってごめんなさいという罪悪感に押し潰されそうになりながらノコノコ壱与君の元へ。

「おはよ、壱与君」

「おはよ。昨日病院行ってきたんだろ?大丈夫だった?」

「…うん、ダイジョブ」

「心配した」

(心配してくれたんだ…)

優しい声に引いてた熱がまた上がってきて、恥ずかしくなった僕は下を向いて答えた。

「は、鼻の…検査だけ、しただけ」

「鼻?」

「ずっと同じ匂いがしてて…あ」

言ってから気づいた。多分、匂いつけた本人なのにそんな事言ったら不味いかなって慌てて壱与君の顔を見上げた。

壱与君は、笑ってた。

「それって、どんな匂い?」

「…えっと、リンゴの…」

「嫌な匂い?」

「ううん、良いにおいだけど…」

そう言ったら壱与君の唇の両端はますます上がって、目は三日月みたいに細くなった。

「そう。良かった」

「…うん」

それってやっぱり壱与君の仕業って事…?でもどう聞こう?どうしたら良いんだろ、って思ってモジモジしてたら、壱与君が口を開いた。

「ごめん。俺のせいで変に混乱させちゃったんだよな」

「いや、そんな…」

やっぱりそうだったんだ。壱与君が先に言ってくれてホッとした。でも、理由を聞かなきゃなんだよね。

じっ、と壱与君を見上げたら、やっぱりそこには優しい目。

…き、聞きづら~い…。

「今日も昼飯、一緒に食える?」

甘ったるい声でそんな風に言われたら、当然頷くしかないよね。

「…お母さんがね、壱与君と食べなさいねってお弁当増やしてくれたんだ…」

「…近々お母様にご挨拶にお伺いしても良い?」

壱与君がCクラスに帰ってった後、稲取君にイチャイチャすんなよなってニヤニヤされたの、顔から火が出そうだった。














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