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9 寂しさの思い出し方 前編 (立川sideかっ
(既読もつかない…。)
藤川に呼び出されたカフェで番と婚約の解消を言い渡されて、既に1週間が経っていた。
番になったあの日以来、こんなにも連絡が取れなかった事は無い。
あの後、ウチにも来ないのは当然にしても、
連絡しても既読にならないし電話も出ない。
ーー俺は帰り際に、解除処理に必要な連絡をする旨を確かに伝えた筈なのにーー。
「…仕方ないか。」
今は未だ、俺の連絡どころではないのかもしれない。
色事に疎い俺にだって出会いたての番がどんな状況かなんて、考えなくてもわかる。
ましてや運命の番、だなんて事なら、それはもう凄い事になってるんじゃないのか。
…と、そこまで考えて、微妙にモヤッとした。
(俺としてた事を、今あの新しい番の彼としてるんだろうな。)
…まあ、そりゃそうだよな。
なんたって、運命って事らしいから。
しかし実際にあるんだな、運命の番って。
古い文献なんかには確かに記録が残っているようだが、眉唾ものという説が一般的だ。
それは、αとΩが人口比に対して極端に少ない上、如何せんその心身の状態は本人同士にしかわからないものだから。
本人達以外の外野の人間に、確認する術が無いんだから本人達が運命と言えば運命になってしまうんじゃないのか。
まあ…どうにせよ、俺には一生理解できそうにない事だけど。
久々に1人の週末を過ごしている。
ゆっくりとコーヒーを淹れ、買ったは良いものの 時間が無くて積むだけになっていた本に目を通す。
ふと物音が聴こえた気がして、窓の外に視線をやると思いの外、蒼く澄んでいる。
そしてガラス越しの陽射しは穏やか。
なんだか通りの様子を見たくなって換気ついでに少し窓を開けると寒気が一気に流れ込んできた。
見下ろすと、マンション前の歩道の街路樹に葉は無いし、時折通行人があるだけで、眺めていても別段面白い事もない。
どこからか、幼い子供の声がする。
「子供か…。」
最近は、何となく 子供を持つ自分を考える事も増えていた。
自分のような人間が人の親になれるのか、なんて。
一生ひとりで生きていく事を想定して日々を過ごしていた自分に、あの日突然伴侶が出来た。
それもかなり歳下の、物凄く格好良い子。
αであれだけの容姿なら、どんな相手もよりどりみどりの筈なのに。事実、構内でも何時でも数人の綺麗な子達が周りを囲んでいた。
そんな子が、はずみで繋がった関係とはいえ、自分なんかを本当に番にするなんて。
藤川ってやつは本当に変わってる。
ふふっ、と笑みが洩れてから気づく。
そう言えば藤川は、もう俺の番ではないのだ。
正確には、未だ解除された訳ではない。
しかし時間の問題だ。
落ち着いたら直に連絡が来る筈だ。
一緒に解除に病院に行きましょう、と。
そして、藤川との番が解除された後は、
自分にはもう、家族を持つ未来は無いのだ。
「家族、か…。」
藤川との家庭はどんなものだったんだろうな。
少しだけ、胸が痛む気がした。
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