知らない内に番にされ婚約させられたにも関わらず、本日婚約破棄を言い渡されたが俺はそれを甘んじて受ける

Q矢(Q.➽)

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11 貴方の‪α‬でいられる間(藤川side)


外に出られない。



もう、どれくらい経ったんだろう。

ほんの2、3日のような、もっと経ったような…。

ベッドから起き上がる気力が無い。


冬休みだったのが幸いした。
というか、休みじゃなくたって行けやしなかっただろうな。

あの日あのカフェを出て、榊に送られてマンションに帰りついて 、、、
いつ、ベッドに潜り込んだのかも覚えてない。


何もしたくない。

何もしたくないから、ただ、寝る。
目覚めては泣いて、泣いてる内にまた寝入って。

コートのポケットに入れっぱのスマホからは何時の間にか振動音すら聴こえなくなった。
充電が切れたのかも。

何度かインターフォンが鳴っていたから誰かは来てたんだろうけど、もうどうでも良い。

風呂にも入ってないから髪もボサボサ、無精髭のみっともない姿を見られるだけだから、どうにしろ出られない。
最低限の水を口にする程度で、食事なんか摂れない。泣き過ぎて目は腫れっぱなし。見なくてもわかる。今の俺、きっと過去一ブサイク。

好きな人を失うって、こんなに怖くて辛い事なのか。
こんなの、誰も教えてくれなかった。

俺は、自分の‪α‬という性に集ってくる人間を、必要な時だけ利用して、煩わしくなればヤりすてるような屑だったから、恋も愛も、ましてやそれを失う辛さを知らなかった。舐めていた。
俺が無碍にして切ってきた人達の中には、こんな風に泣いてくれた人もいたんだろうか。

いたんだろうな…。

俺は、他人の気持ちに向き合うのが嫌で、‪α‬である事への享受だけを愉しむ、タダの卑怯な子供だった。

そりゃあんな人を手に入れられる訳が無い。
無理だ。

あの人は、大人で、バース性に振り回されずに自分の足で立っている強い人だ。
‪α‬の庇護なんかアテにもしてない、誰も必要としてない。
…俺の、事も。

本当は俺なんかのそばに収まる人じゃなかったんだ。


でも大人だから、だからこそ、俺のそばにいてくれる選択をしてくれたのに。

あのままおとなしくしていれば、今でもあの人をこの腕に抱いていられたのに。

欲を掻いて、馬鹿な事をして。


後悔、後悔、後悔。

嗚咽しながら胸を掻き毟る。

この一週間、毎秒後悔しているのに、なんでまだ俺は息ができてるんだろう。




もう、泣く気力も体力も残ってないのに。









何時の間にかまた寝入っていた。
窓に目をやると、半端に閉めてあったカーテンの隙間からオレンジ色の陽が洩れていた。

朝…いや、夕陽…だろうか。

ぼんやり見つめる。

下の喧騒も届いては来ない静寂の室内。
また微睡む。

世界が終わったよう。





『♪♪』

突如、静寂を破りインターフォンが鳴った。

(鳴らすなら親ではないな…。)

両親は日頃そんなにあちらから連絡も、ここを訪れる事もないが、来た時は応答が無ければスペアキーで入ってくる。 となれば榊か、他の友人か。

スルーで良いか…。

そう思いながら、一応確認、と オートロックのモニターに緩慢に目をやる。



(え…。)






「…洸さん…」




息が止まった。


反射的に跳ね起きてモニターに駆け寄ろうとして、足が縺れた。転けそうになりながら辿り着いて、食い入るように見つめる。

溢れ出しそうな涙を堪える。流れるな、今は!
洸さんがちゃんと見えなくなる!!

画面の中の洸さんは、数回インターフォンを鳴らす仕草をしては、こちらを見ている。
勿論視線が合う訳では無い、でも、見ている。

少し気がかりそうな表情を作ったなと思った瞬間、画面が消えてしまった。


「…あ…」


帰ってしまったのか。

(あ、スマホ…)


床に放置していジャケットのポケットからスマホを取り出すとやはり電源が落ちていた。


そうだ、と 車道が見える側の窓によたよたと歩み寄り、カーテンを開けて見下ろす。

ウチのマンションのエントランスから駅まではこの道だけだ。

目を凝らすと、枯れた街路樹を飾るイルミネーションの間を小さな米粒のように見える人々が歩いているのが見えた。

もう陽は落ちかけて暮れなずむ中、賑やかな電飾の下のどれがあの人かなんてわからない。


諦めてモニターに戻って、何度も何度も録画された洸さんを観た。
小さな画面を指で撫でた。

会いたい。顔が見られて嬉しい。愛おしい。好きだ。触れたい。会いたい。会いたい。

 
撫でながら、今度は涙が溢れても、止めない。

会わせる顔なんかないと思っているのに、あの人の姿を見ただけで、こんなにも満たされる。
胸を衝かれたように苦しいのに、それでも愛おしい。


やっぱり俺には貴方しかいない。
貴方しかいないんだ。

貴方しか。


例え貴方に愛されなくても。







久々の洸さんの姿を一頻り堪能した後、回り始めた頭で考える。


何で来てくれたんだろ?

あ、番の解除の件か。
律儀なあの人の事だから、きっとずっと連絡くれてたんだろうな。

でもせっかく来てくれたのに、こんなんじゃ会えない。
今の俺は、みっともなくて、小汚くて、格好悪くて、臭い。

こんな姿見せたら、余計に幻滅される…。

洸さんの為にも、番の件がどうなるにしたって、一度きちんと会わなきゃならない。

そして、いっそもう全部打ち明けて、謝ろう。
許してもらえなくても良い、謝ろう。
謝って、ずっと好きだった事も告白しよう。
卑怯だと罵られても、蔑まれても、

自分がしでかした事は自分でケリをつけなければ。
 

(…しっかり、しよう。)



握り締めていたスマホに充電器を差し込む。

洗濯済みのスウェットと下着を引っ掴んでノロノロとバスルームに向かった。

あの人の番でいる間だけでも、みすぼらしい姿でいる訳にはいかない。
これ以上の醜態は晒せない。


その日俺は、久しぶりに髭を剃り、体を洗った。

あの人が褒めてくれた美しい‪α‬の姿を、少しでも取り戻したかった。

まだ俺はあの人の‪α‬なんだから。


















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