知らない内に番にされ婚約させられたにも関わらず、本日婚約破棄を言い渡されたが俺はそれを甘んじて受ける

Q矢(Q.➽)

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16 立つ鳥 (藤川side)


(未練だよなァ…。)

壇上に立つ洸さんを眺めながら小さく溜息を吐く。

解除に行った病院を最後に、俺と洸さんはもう私的に会う事はなくなった。

まあ…当然っちゃ、当然。


番という関係が消滅してしまえば、俺と洸さんは元の准教授と学生なのだ。

でも救いは、講義がある日ならその時間中は洸さんをずっと眺めてても許されるって事。
目は…合わせてくれないけど…。

もう触れちゃいけない人だけど、想うくらいは、良いよな…。

自業自得でこの状況なのはわかってるから、…洸さんの強い意志を尊重するしか、なかった。

でも解除したからって直ぐに気持ちの整理が出来る訳でも、思い切れる訳でも無い。
心があの人を求めるのは止められない。

でももう、必要以上には近づかないから。
だから、見ているくらいは、良いだろ…。

あの人への想いを、大切に持ってるくらいは、許して欲しい。










ーーーーー





週末、番解除と、婚約解消の報告をしに実家に帰ったら、父は「そうか…」とだけ言って言ったきり、何時もの朗らかさはなりを潜め、考え込んで何も話さなくなってしまった。

母は、泣いた。
2人とも洸さんを気に入ってたから、寝耳に水の事で驚いたんだと思う。

全部話した。
番になった経緯も、全て。

そしたら1発、強烈な平手を母から食らった。

「最低の事よ。卑怯な事よ。」
「…うん。反省、してる。」
「反面なんかで済みますか!人を傷つけて、人生を狂わせる事なのよ。」

洸さんと同じΩで、若い頃 父と出会う前には結構怖い思いもしてきたという母からしたら、他人事ではなかったんだと思う。
それも聞いていたのに、俺は…。

「一生、悔いなさい。
貴方は‪α‬だから この先、誰かと一緒になる事も、あるかもしれない。でも…絶対に、忘れちゃ駄目。」

母は泣きながら、語気を強めながら続けた。

「赦してくれただけでも、立川さんに感謝しなさい。」

父は難しい顔をして黙っていたが、

「…解除後のΩの負担は心身共に大きいと聞くから…気をつけてあげるんだぞ。」

とだけ言って、また黙ってしまった。


洸さんにも両親にもこんな顔をさせて、泣かせた俺は、本当にどうしようもないろくでなしだ。


その日はずっとお通夜状態で、両親に申し訳なくなった俺はそそくさとマンションに帰った。

帰りに榊に電話をかけると2コールで出た。
暇なの?


「済んだのか。」
「うん。さっき報告終わって、すげー泣かれて怒られた。」
「だろうよ。」

榊の声は呆れを含んでいた。

「でもまあ、なんだな…。
お前が悪いけど、絶対お前が悪いけどさ。
あんなに好きで、大事にしてたのにな。」

榊なりに同情してくれているようだ。

「…仕方ないよ。洸さんの身になれば、それは関係無いと思うし。」
「まあ、なあ…。」

被害を受けた当事者でなきゃ、わからないよな、そんなの。

でも、なんと言うか…洸さんの場合は、自分の身に起きた事よりも、自分が俺を傷つけたんじゃないかと自分を責めていた。お人好し。

貴方に離れていかれる方が、俺には辛い事なのに。
でも、言えなかった。

俺は加害者だから。

俺の勝手な都合と気持ちをこれ以上押し付ける訳にはいかなかった。



「…ま、俺らに出来るのはさ、幸せになってくれって願うしかなくね?」
 
榊の言葉に小さく頷く。

そうだな。それしか、できない。

話してると、また洸さんの顔がチラついてうっかり涙が出てしまう。

「じゃあまた」

涙声になる前に、それだけ言って電話を切る。


歩き出してふと気づいた。
ここ、あの居酒屋の近くなんだな…。



もしも、あの日に戻れたら。

そしたら、絶対に噛んだりしない。
もっと時間をかけて、回数を重ねて、信頼を得て、気持ちが俺に向くように長期戦覚悟で臨む。遠回りでも。

正攻法で、プロポーズする。
番になって下さいって。

じっくり築いた関係なら、俺の気持ちが疑われる事も きっと無いだろ?


今更、取り返しなんか つかないけど。





俺の心をよそにして、、それでも日々が過ぎていく。


そして、4月。2年に上がった新学期。


久々に姿を見られると心待ちにして向かった学校で、洸さんの姿は、構内のどこにも見つけられなかった。

それから暫くして、洸さんが大学を辞めた事を知った。



血の気が引いて、咄嗟に洸さんのマンションに向かった。
顔馴染みになっていた管理人に聞くと、少し前に引っ越したという。
引っ越し先も、告げられてはいないと。
体を壊したようだと言われた。


頼み込んで入れてもらった部屋は、もぬけの殻だった。

何一つ…、本当に、何一つも残さず。


俺は空虚になった部屋の中でへたり込んだ。


「どうして…」



洸さんは忽然と姿を消してしまったのだ。

あの人の痕跡は、全ての部屋のどこを探しても、残ってはいなかった。

それこそ、髪の毛1本たりとも…。



俺は本当にあの人の人生を、狂わせてしまったのだ。







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