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24 おむかえに行こう (立川side)
俺を捜し出して会いにきてくれた藤川に抱かれてみた。
月並みな表現だけど、このまま死んでも良いと思うくらい気持ちよかった。
性急に求めて俺を穿つ彼の分身は、以前よりも逞しさを増していたし、触れ合う肌は狂いそうに熱かった。
密着したところから癒着して、ひとつに融けていけたら、と思うほどに幸せだった。
それで確信できた。
これは、愛だ。
記憶の中の彼だけで良いと自分を慰めてきたのに、リアルの彼を前にしたら、溢れて溢れて止められなくなった。
俺は彼に発情している。渇望している。
身も、心も。
もう、認めざるを得なかった。
俺はとっくの昔に、彼を愛しく思っていたんだと。
今朝は葵を幼稚園の送迎バスに乗せた後、郵便局に行く用事で少し出かけた。
天気が良い日で、青空が心地良い。
秋に向けて気温も落ちてきてるとは言え、歩けば未だ少し汗ばむ。
道沿いの家の庭木や花を眺めたり、呑気に塀の上を歩く顔見知りの猫に声をかけたりしながらぶらぶら帰る。
洗濯は葵が起きる前に済ませたし、昨日無事に納期は乗り切ったし、今日は久々に仕事部屋の整理と掃除でもするかな…。
葵の迎えは3時。現在、10時。まだまだ全然間がある。
そう頭の中で算段しながら緩い坂を登る。
家に近づくにつれ、何かに気づいた。
滅多に客なんか来ないウチの玄関に人影が見える。宅配業者でも無さそうだし…。
影になっていた人影が動き、日が当たると塀越しに上半身が見えた。
長身に、仕立ての良さそうな濃紺のスーツ。
ゆるく撫でつけられた亜麻色の髪。
後ろ姿だけでも、誰だかわかってしまった。
心臓が早鐘を打つ。
まさか。
染髪した茶髪なら他にもいる。
それこそ多種多様な髪色の人間が、珍しくもなくウロウロしている。
でも、あの色は違うのだ。
光に透けると周囲に溶ける、その色味。
明るい亜麻色のようでいて、プラチナブロンドのような毛束がところどころに混ざる、特徴的な色合い。
凡そ、通常の日本人では考えられないような奇跡の色。
それが、ルネッサンス彫刻のようでありながらもオリエンタルな雰囲気を共存させるソフトな顔立ちと相まって矛盾無く存在する事が、藤川が特別なαである事を 見る者の心に刻みつけるのだ。
「…藤川…?」
振り向いた彼は、頬が幾分シャープになり、だいぶ大人びていたが確かにずっと心に抱いていた、彼だった。
ーーーーーーー
「…そろそろ、葵が帰って来ちゃうな…。」
離れていた時間を埋め合うように何度も求められた。疲れて、藤川の腕の中で少し微睡んでいると、離れた場所からアラームが聴こえた。
14時30分。。
送迎バスが近所の乗り場まで到着するまでにあと30分…。
ハッ、と覚醒する。
軽くシャワーでも浴びなきゃこのままでは迎えに行けない…。
色んな液体が付着して、お互い酷い有り様だ。
「…ん…どうしました?」
同じく微睡んでしまっていた藤川が目を覚ました。
「もうすぐ葵が、帰って来るから…準備しなきゃ。」
流石にこんな惨状を見せる訳にはいかない。
葵と聞くと、藤川は急に跳ね起きて、緊張した面持ちになって言った。
「早くシャワー行って下さい!ここは俺が片付けますんで!!」
シャツとスラックスをサッと着て、散らばった服や動いてしまった家具なんかを戻してくれているのを見ながらバスルームへ急ぐ。
手早く髪を洗い、体を流して戻ると、藤川は窓を開けて換気してくれていた。
「君も急いでシャワーしといて。
服は…俺のは小さいだろうから、仕方ないとして、髪と体だけでも。」
バスルームを指すと、藤川は頷いて足早に向かったので、タオルを準備して置いておく。
14時50分。
普通に歩いて5分ちょいの送迎場所に、早目に行って待つのが日常だ。
「20分後くらいには帰るから。」
お客さんが来てるからケーキを買って帰ろう、と葵を誘って時間を稼ぐつもりで、俺は藤川に声をかけて、シャツを羽織り髪を手櫛で梳かしてから急いで家を出た。
歩き出してから気づく。
(あ…眼鏡、忘れた…。)
視界が微妙にぼやけてる。
「おかあさん、めがねは?」
「…」
気づかれた…。
だよな、普通にわかるよな。
幼稚園バスから降りてきた葵は、いつも俺を見るとにぱっと笑って手を繋ぐ。
それが今日は、見た途端に、ん?と首を傾げて顔を覗き込んで来た。
眼鏡を外された時の事を思い出して、黙って赤面した俺を、葵が心配そうに、
「おねつかな?」
と小さな手で額をはかってみてくれる。
……。
すまない、葵。
真昼間っからあんな…。
こんな淫らな母さんで、すまない…。
無垢な子供の純真さが眩しい。
流しはしたがあちこちに藤川の匂いが残ってるような気が…
「おかあさん、いつもとちがうにおいするね。」
不意打ちに指摘されてドキリとする。
「ち、違う?シャンプーの匂いかな?」
「うーんとー、…ちがうけど…。」
ニコッと笑って、葵はご機嫌で歩き出した。
…なんか、子供ってたまにすごく鋭いんだけど、その違う匂いって何の匂いなんだろ…。
聞きたいけど聞くのが怖い。
気を取り直して、話しかける。
「葵、ケーキ屋さんに寄ろうか。」
葵は大きな目を輝かせて、
「ほんと?」
と喜ぶ。
「ほんと。
お客さんが来てるから、葵も好きなケーキ選んで良いよ。」
そう言うと、途端に表情が曇る。
「…どうした?」
「もんぶらんも、すきなんだけど、すふれもおいしいよね。でもいちばんすきなのはちょこなんだよね…。」
恒例の、ケーキ屋さん前のお悩みだ。
いっちょまえに顎に手をあてて目を閉じて真剣だ。
「…葵は好きなケーキたくさんあるもんな。」
「でもやっぱりちょこにする。」
「良いの?チョコで?」
そう聞くと 大真面目な顔で、
「いいの!だっていちばんすきだから。ほかはいいの。」
だって。
あれだけ悩んで、やっぱりいつものチョコケーキ。
思わずプフッと笑ってしまった。
どれだけの選択肢が与えられても、お気に入りには頑固なまでに一途なところ。
君達って本当に、似た者親子だな。
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