知らない内に番にされ婚約させられたにも関わらず、本日婚約破棄を言い渡されたが俺はそれを甘んじて受ける

Q矢(Q.➽)

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未来編 思春期くん。 6 (葵)




「‪α‬には、責任がある。」

「…責任…。」

「そのひと噛みで、相手の自分を狂わせてしまうかもしれないって事だ。」


人生を、狂わせる…。

まだそこまで深く考えた事は無かったから、ドキリとする。 

「本来は、お互いに想ってる事が前提じゃなきゃいけないと思う。本当に、そうじゃなきゃいけないと思う。
そのくらい重い事なんだ。相手の人生背負う覚悟が要る事なんだ。」

「…ん。」

「‪Ωはリスクの多い性だ。

そのΩと関わると言う事は、ただ恋人関係や夫婦関係を結び、解消するのとは 訳が違う。
本来、番の契約は体に刻むとはいえ、実際は相手の命…魂を縛る契約だ。
解除はメール一通の別れ話や紙切れ1枚で済む話じゃない。そして実際に解除ともなれば、今度はまたそれを無理矢理引き剥がす処置をしなきゃならないんだ。
それはΩの体になされる事だし、心身の負担は壮絶なものだ。体の中で起きてる事だから、目に見えないけれど、それが死に直結する場合も多いんだ。」

「死に…。」

「だからこそ、もしΩと出会った時は、慎重に。
俺が言える事じゃないけど、抑制剤は絶対に持ち歩く事だ。決して衝動的に行動して、自分も相手も傷つけて後悔するような事には、なって欲しくない。」


自分のような事はするなと、父さんは言ってるんだ。

父さんの、母さんにしてしまった事への強い後悔を感じた。



「紆余曲折あって、それでも洸さんとお前を捜し出した俺を、洸さんは受け入れてくれたから今があるけど…、それは洸さんの器が大きかったからってだけなんだ。その上、結婚までしてくれて、こんな素晴らしい息子まで与えてくれた。

俺は一生、あの人には頭が上がらないんだ。」


惚れてるってのもあるけどさ、と父さんは笑った。

「そうだったんだ…。母さん、男前なとこあるもんね。よくドキッとさせられるもん。」

僕も少しクスッと笑ってしまう。
飄々としてるんだけど、結構大胆で頼れるとこ、すごくある。

「でもさ、これは洸さんにも言った事ないんだけどさ。」

少し此方に身を乗り出して、小声で話し出す父さん。何?

「5年半以上捜して、やっと見つけた時、子供がいるって知ってさ。
最初は他の人と一緒になったんだと思ったんだ。普通に考えれば、Ωとはいえ男性だからさ。
もしあの空白の期間に洸さんが女性と結婚してて、相手の女性が子供を産んでれば、今頃は洸さんが お父さん!って呼ばれてたかもしれないし…。

拒否反応が出なければ男性と結婚して、子供を作る事だって可能だった訳だ。なのに洸さんはそうせずにいてくれた」


そこで父さんは一旦言葉を止め、それからまっすぐに僕を見つめて、続けた。


「だから今、こうして一緒にいられて、息子にまで恵まれたのは、やっぱり俺には洸さんが運命の人だったんだと、確信してる。」


力強い声だった。

そして父さんは僕を見て、

「子は鎹、って言葉もあるしな。」

と、ニヤッと笑った後、


「産まれてきてくれて、本当にありがとう。」

と頭を下げて来たから僕は不覚にも目頭が熱くなる。

「…なんだよ…もう。なにそれ…。

…僕こそ、」



           ありがとう。


僕は父さんと母さんの子供で、本当に良かった。





「ところでさ。」


一頻り僕を泣かせたあと、落ち着いてきたのを見計らって父さんが言う。


「…何?」

「葵の好きな、…あの子はβだよな?」

急に児玉くんの事に触れられてドキッとする。

「うん…。だから、無理だって思ってる。」
 
「無理?」

「だってさ。βの男の子が俺と付き合ってくれるメリットって、無いじゃん。だから友達のままで良いかなって。」

膝の上で手指をもじもじ絡ませて、僕は児玉くんの事を考えた。

小さくて可愛い児玉くん。 
最初はそこを好きになった。 
でも今は、彼が努力家だったり、家族思いだったり、弟妹達を大事にしてたり、決めた事は全力だったり、そういう真っ直ぐで優しい性格にも惹かれてる。
多分、これから成長していく毎に綺麗になっていくんだろうな。
男らしくなっちゃうかも。
それはそれで、また萌える。

どんな風に成長しても、ずっとそばで見守っていたい。


僕が、頭の中でそんな事を考えてしょんぼりしていたら、父さんは呆れたような顔で僕を見た。


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