17歳、男子高校生、聖女経験あり〼。

Q矢(Q.➽)

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運命…?(左近)

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「窓、開けて良いですか?」

少し話せませんか、
問われているようでいて、実際は有無を言わせぬ口調で言われ、返事を返す暇も無く俺は店外の駐車スペースに停められていた車に連れ込まれた。
正しく、連れ込まれたのだ。

従業員カウンターに入ってきたJrに手を取られ肩を引き寄せられて連れ出されたんだから、連れ込まれたであってる筈だ。
およそ初対面の人間に対する行動ではなかった。
例えほぼ実質雇用主であったとしても、これは無い。
俺が女性ならこれかなり問題になるんじゃないのか。いや男だから良いって訳でもない。
コンプラ的にどーなんよ。

車は黒のプリウスだった。
見た目の印象から外車にでも乗ってそうなのに意外に堅実に国産車って点は好感持てるな。
俺も免許取ったらセダン車にしよう…。

「…窓?」
「このご時世ですから密はどうかと。」
「…それは…そうですね。」

運転席からの操作で開けてくれた。
俺の様子から、騒がれる事も無いと判断されたのかもしれない。

「シートもジェルもあるから、ご自由に。」

消毒用のウェットシートとアルコールジェルが差し出された。
いやそこまでは……せっかくだから、使うけど。
でもアルコール除菌でもウェットシートって気休めって聞くよね。一応俺も常備してるけどね。
一頻り無言で手を拭いた後、チラッとJrを見てみたら、視線がかち合った。
え、ずっと見てたの?

「…君は、」

Jrは視線を外さないまま何故か俺の右手を取った。いや瞬きもしないのちょっと怖い。

「はい。」

何故さっきから断りも無しに初対面(笑)の同性の手を…?いや、同性だからか?
やんわりと外そうと手を捻るが、思いの外力が強くて失敗する。一旦諦めるか…。

「覚えて、いるのか?」

一応は質問のていを取っているが、恐らくほぼ確信しているんだろうな…。
戸惑いを含んではいるが、声色が落ち着いている。誤魔化しても良いかなと思ったけど、下手にそうしても拗れそうな気もする。

「俺が聖女と呼ばれていた時代の事を仰っているのなら、そうですね。」

「…そう、か…。いや、そうだろうな…。」

やっぱり、という反応。

「あー…、元気そうで…なにより…。いや、まさか男性に…」

えー、そこ?戸惑ってたの、まさかそこなのか。

「あの後はずっと男性ですよ、俺は。」

女性としての人生が最悪過ぎたからか、次は男に生まれてみたらいやに快適だったので、魂的に男性向けなのかもしれない。
いや絶対にそう。
今生に至るまでに数回の人生を全うしたからもう確信してる。
あの頃は女性という性が合わなかったからあんな結果になったんじゃねえかな…?

「そうなのか…。なんというか…すまない。」

心底済まなそうな表情で謝罪されて、何と返したら良いのか困った。

「いえ、もう随分昔の事ですよ。」

これは本心だ。
あの頃は辛く悲しかったが、あれはもう、仕方なかった。なるようにしかならなかった。
人の心が変われば状況も変わるものだしそれによって運命も変わるものだ。
離れた心を取り戻すのは難しい事だ。
魔術にでも手を染めない限り。

それよりも気になっているのは、

「じゅ…、貴方は、」
「雅臣だ。綾門雅臣。」
「あやじょう、たかおみさん…」

そんな名前だったのか。

「君は…えと、?」

名札と顔を交互に見比べてくる綾門さん。

「羽田左近です。はた、さこん。」
「さこん…」

いや、一応、今生初対面。
羽田くんだろ、普通。

「綾門さんは、」

距離を取っている事をこれで察してくれたりしないかな…。

「雅臣で良い。」

…無理だった。

「綾門さんは、何時から記憶が?」

まさか自分以外に前前前前前前世関係者が今更現れるなどと思わず…、しかも記憶を有しているなんて夢にも思わなかった。
ホントになんて巡り合わせだ。
どういう意図があるというんだろうか、天には。
時を経て全ての因縁を消化してフラットになった状態とはいえ、あの頃の関係者にはすすんで会いたいとは思わないのだが。

「……いや、実はまだ俺も混乱していて、気持ちの整理がついていないと言うか…。
実は、ついさっき君に会った瞬間に、なんだけど…。」

こめかみを長い指で押さえながらじ…、綾門さんは溜息をついた。
マスク越しでも良い声だな。

「いきなりぶわっと記憶の波が押し寄せてきて、これが流行りの存在しない記憶ってやつかと思ったけど…、」

流行りに乗っかれる人らしい。

「本当にあった事なんだな、ってのは、なんか…わかった。」

意外と素直な人なんだな。
未だ戸惑いの表情を隠しきれない綾門さん。
それを助手席から眺める俺。
品の良いスーツを着こなし運転席で頭を抱えるイケメン成人男性と、それを眺めるバイトの男子高校生。
何この図?
帰りたい。カウンターに。

とぼんやり思ってたら、綾門さんがぱっと顔を上げた。

「言い訳にしかならないんだけど、親父が倒れてからずっと忙しくて人員募集も各店舗の店長達に一任しっぱなしなんだ。上がってくる書類にもろくに目を通してなくて…。
左近は何時から、ウチの店に?」
「今日からです。」
「今日?!」
「一通り店内の在庫とか一通り説明受けて、さっきレジ操作を少しだけ教えていただいてたとこでした。」

だから早く戻らせてくれないか。

「今日…。そうか、今日か。なるほど…これが、運命…。」

え、

「運命が再び俺達を…。いやでも、何故、男…?
いやいや、性別なんて些細な事に拘るなんて今どきダッサいよな…や、でも…男…か…男…。」

???


チラッと横目で俺を見てくる綾門さん。
と思ったら、今度はじいっと顔を眺めた後、全身を嘗め回すように観察され…、


「………肌、綺麗だな、左近。」


ゾワッと全身の毛が逆立った。
いや、どういう事?
マスクから出てる皮膚だけで判断したの?
いや違うか、鎖骨とか首とか手の甲とかすんごい見てたもんな。いや怖。
綾門さんの中でどういう結論になったのか、聞くのが怖い。

「顔も小さくてスタイルも良いし…。そうだよな。これは運命に違いない。互いの気持ちさえあれば、性別なんて障害にすらならない…。」

いや待って。

互いのって、なんだ。
俺は既に今の俺であって、アンタに気持ちなんかもうゼロなんだが。

残念ながら思い込みの激しさは転生しても健在のようだ。




※お詫び

各タイトルでの主人公の名前表記が間違えておりました。
ギリギリまで名前で迷っていたのがバレバレ…。ややこしくして申し訳ありませんでした。m(_ _)m
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