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01 ヌーボー・レース
ドラゴン?デコ金髪ゴスロリとの出会い
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頭痛で目が覚めた。
頭痛で意識無くなったのに、それで今度は目が覚めるとは実に皮肉だ。
まぁ頭撃たれたんだから、多少痛いのは当然かとぼんやり思う。
「……とはいえ、二日酔いよりはマシか」
わざと声に出しつつ横になったまま体の状態を確認する。
実際、体のだるさ、むかつきが無いぶんまだ良さそうだ。
手を少し動かす――OK
足を少し動かす――OK
ゆっくり起き上がってみる。
上半身目視確認――OK。
血が出たりはしていないようだ。
そのまま立ち上がれるか試してみたら、ふらつきながらもなんとか立てた。
首を動かしてみるが違和感無し。
ん?空が明るくなり始めているようだ。
下半身目視確認――足も大丈夫そうだ。立っても痛み等は無い。
ズボンにはベルトやファスナーは無く、ヒモとボタン式だ。
ふと、思い立ってボタンを外してみる。
「……違う、な。」
ぽろんと出してみたが、見慣れたモノではないアレだった。
ぷらぷらしてみる。うん。ちょっと長いかな?
でも形状はよく似ている。
機能が同じかどうか?尿意のような感じがあったので確かめて見るべく振り返ったら
「エァスト ヴォナ グェ※?ァ シィク〓ァ 」
(ほう、中々立派な逸物じゃのう)
「誰だっ!」
と言った直後に
「クゥァト!」
と、脳でスムーズに別の言葉が出てくる。
どうやら現地語が使えるようになったようだ。
理屈は不明だが意識せず使える
いつの間にか後に少女が座っていた。体育座りで。
黒いドレスのような服……確か「ゴスロリ」とか言うやつか?を着た10歳くらいの白人少女。
大きな青い宝石のペンダントをしている。
顔は北欧系かロシアの血が入った感じで恐ろしく整っており、
金髪ショートヘア、青い瞳が衣装とあいまってまるで人形のようだが、
だが「にやっ」というかニタニタ笑っている表情は子供のような感じではない。
あれ?こんな顔、最近どこかで見たような気が?
さて。
そんな少女が後ろにいたわけだが。
で。俺は丸出しでそっちを振り返った、とする。
「ほぉほぉ。そのようなモノをわらわに見せつけて、どうして欲しいのかのう?」
少女にナニを真正面から堂々と開陳しておりました……
「違うんだァァァぁぁぁぁっ!」
あわてて収納。
ファスナーだったら挟んでたかも。
「そんなに隠さんでもよかろうに。どれ、もっと良く見せい」
ホント、勘弁してください……
元の世界じゃ事案通り越して即逮捕されるぞ。
「で、話は変わるが。どうじゃ?生き返った気分は」
「生き返った?」
「そうじゃ、おぬしはそこの沼の前で倒れたのじゃが、わらわが見つけた時はもう死んでおったわ」
そこで蘇生の魔法を使い、生き返らせたと言う。
「体はほとんど壊れておらんかったのじゃが、魂を見つけるのにはちとに苦労したわ」
死んですぐなら普通簡単なのじゃがのう、今回はおかしくて中々見つからなんだ。それに蘇生してすぐまた倒れた時はダメかと思うたぞ。だがそれでも成功するのはさすがわらわじゃ!
と腕を組んでうんうん頷いている。
魂?蘇生魔法?さっき流れ込んできたイメージの中にも蘇生に関する魔法は無かったのだが……
「人間ごときの魔法使いには使えない技なのじゃ。褒め称え恐れ敬うがよいぞ」
?ということは人間以外の存在なのか?この少女は。
それよりもこうなった原因がこの子なら、まずは言っておかなくてはならない。
「いや、あの。俺、この人じゃ無いんだが?全然別人だぞ」
「何を言うておる?魂が違う入れ物に入る筈がなかろう?」
「だから人違いだって。というか、それ以前に世界とか次元とかから違うんじゃないかなー」
「はぁ?そんなわけなかろう。おぬし、死んで頭おかしくなったのと違うか?」
おぬし、ちょっとそこに直れ、と言われたので少女の前に座る。
「どれどれ。これでおぬしの事がわかると言うものじゃ」
そう言うと少女は大きめのおデコを俺の額に付けてくる。
子供のやることとはいえ微妙に気恥ずかしい。
「さて、記憶要素でこーぉど!インデックス付けてかてごらいず。論理まっぷ検索」
ぴったりデコを付けたままブツブツ言ってる。
何かいい香りだがこれ何の匂いだろう?
「ん?んんんンン?」
デコから汗がダラダラ出てきた。
子供の汗のせいか不快には感じないものだな。不思議。
「なんじゃこりゃ!?2人分の記憶と1人の人格じゃとな?」
どういう事なのじゃ―――!!!!わらわとあろう者がやらかしてもうたのか!
もしかして魂が似てるけど違うのを突っ込んでもうたのか?
……そうか、それで記憶が多重化してもうたのじゃ!
なんかブツブツ言ってる声がだんだん大きくなってきたが
そのおかげで、おおよそ察しがついてきた。
「おぬし、その、頭大丈夫かの?」
「いきなりひどいな!」
「普通ありえぬ事でのう。『魂』と『魂の器』たる体はワンセットなのじゃ」
だから入れ間違う事は無い。
それでも入ったと言うなら相当の負荷がかかっている筈、ということらしい。
「いや、気がついた直後は凄く痛かったが、今は軽い痛み程度だ」
「も1人の方の記憶は読み取れるのか?」
「ちょっと待て……」
意識して色々思い出そうとすると、断片的に記憶らしきものが出てきた。
生まれた家のこと、遊んだ子供時代のことなどなど。
どうやらこの体の持ち主、そこそこ裕福な家の出らしい。
あくまで俺個人の記憶が主で、体側の記憶は探さないと出てこない感じだ。
でも言語などの基本的なことはスムーズに出てくるので助かる。
「全部かどうかは知らんが少しは見えるぞ?」
「脳のほうがなんとか折り合いをつけたようじゃの。まったくヒトの脳とは、わらわの力をもってしても実に謎の多い器官じゃ」
それでの?とデコを離して少女は言う。
「おぬしの記憶を読んだが、いったい……何者なのじゃ?」
「むしろこっちが聞きたいぞ。というか俺の記憶を見たのか」
「おうさ。もう1人のほうのも全部まるっと見たぞえ。おぬしはヒトではあるようじゃが、理の一部がなんだか異なる世界のようじゃのう」
「見られたのか……まぁいいか。しかし体とかはほとんど同じように見えるんだが、本当に世界が違うのか?ここは」
「おそらくそれ程離れた世界ではあるまいに。そもそもわらわの魂探査はあまり遠くに手を伸ばしておらんかったしの」
何でも、言わば「手を伸ばして届く程度の狭い範囲」で
この体に合う魂をちまちま探索したらぴったりのが見つかったから、
これだ!と思って回収したようだ。
それだけ近ければ似ていても当然なのじゃ、と言うことらしい。
よくわからないが、なんとなくそういうことだと思っておこう。
「ところで、この体の持ち主はいったい何で死んだんだ?そこの記憶はよく読み取れないんだが」
「ああ、それはのう。正直わらわのせいでもあるのじゃ」
少女が話した内容によれば、何でもこの少女、奥地にある砂漠に住む
「いわば神みたいなものかの?おぬしの方の言葉ならドラゴンとでも言うほうが近いのじゃ」
という存在で本来体に相当する部分はけっこう大きいらしい。
「ずっと皆でマナが豊富な砂漠で暮らしておったのじゃが、先日、ヒトが物凄い魔法を使ったのを感じてのう」
それでヒトの世界に調査に行くため、探査系魔法にすぐれた自分が行くこととなり
「薄いマナでも生きられるよう体の一部を分離圧縮して小型の存在に作り変えたのじゃ。凄いであろう?」
ドヤ顔で言うが、見た目は10歳くらいの金髪少女なのでちょっとカワイイ。
「……ただのう、最初元の姿をそのまま小さくしただけだったのじゃが、それがヒトにとっては恐ろしい姿だったようなのじゃ……」
小さいとはいえ、ドラゴン。
それがろくなライトも無く夜を徹して走る馬車の前に現れたら。
「驚いて、馬車を置いて逃げようとして、沼地の湿った土で転倒して、たまたまあった石に胸をぶつけて、それが原因で死んだのか」
多分、タイミング悪く胸を強打したせいで心室細動が置きたのだろう。
この世界――元の世界の中世に近い感じだ――にAEDは無さそうだし。
「それで哀れに思うて蘇生魔法を使ったのじゃが……こうなってはやり直すこともできん。悪いことをしてもうたのう」
「事情はわかった。わざとじゃないんだろ?色々不幸が重なっただけだ」
「おぬしにも迷惑をかけてもうた。違う世界に放り込まれたらさぞや不安であろう?」
「いや、それが正直元の世界にはあまり未練が無くてね」
「そう言ってもらえると有難くはあるのう」
金髪少女がいかにも申し訳ないという顔をしていると、中身は違うとわかってはいても
あまり強く責める気にはならない。
そういや、ミニドラゴンからどうして金髪少女に?それもゴスロリとか?
ゴスって、この世界にもあるのか?まぁ元々ゴシック様式は中世発祥なのではあるが。
そのへんどうなの?と質問してみたら
「ああ、それはおぬしが気を失っている間表層に浮かんでいたイメージからコピーしたのじゃ」
気を失ったり寝ていたりすると、記憶をうまく読めないらしい。
サーバーがシャットダウンされてるようなものか?
「だがそれでもこのイメージが浮かんでおったのじゃから、余程好きなのかと思って姿を似せたのじゃが……どうじゃ?気に入ったかの?これなら怖くなかろうも?」
そりゃ怖くは無いがこんなゴスロリ金髪少女がイメージに?覚えが無いんだが?
でもなんか見たことあるんだよなぁ……?
「あっ!」
「お、どうしたのじゃ?」
「思い出した。それ!」
女子高校生アルバイトがえらく熱心に最近流行りのゲームを勧めてきたのだが
それに出てくるキャラクターだ!
「けんむす」という日本全国の市町村を美少女化したゲームで、
このキャラはどこかの村の擬人化で、元ネタは外国人の少女が幕末にどうとか言うエピソード。
イチオシとやらで詳しく詳細に細かく丁寧に説明されたのだが、全部忘れた。
真面目そうな女子高校生が熱心に説明する姿にインパクトがあったから覚えてたんだな~
「くはぁ!なんじゃと、ゲームとやらの架空の姿か?!どうりで記憶フォルダ『知ってる女性』の中に見当たらん筈じゃ!」
俺の記憶はフォルダ分けされてるのか。
俺の中の隠しフォルダも見られてるんだろうなぁ……
「ところで、まだまだ話を聞きたいところなのじゃが」
「ああ、俺もまだ知りたい事はたくさんあるぞ」
「おぬし、何で夜を徹して馬車を走らせてたか覚えておらんのか?」
「?どういう事だ?」
「元の体側が受けてた仕事の記憶は無いのかえ?」
思い出してみる。
慣れてきたのか?だんだん、体側の記憶もうまく読めるようになってきた感じだ。
「えーっと、馬車に乗る前の話だからっと」
時系列を逆に思い出してみる。
「ワイン積み込んで……ここにもワインあるんだ……その前に契約書を交わして、さらにその前に契約の内容の話をしたな」
「よし。記憶のテストじゃ。その契約内容を言ってみるがよいぞ?」
「ワインはヌーボーで、解禁日に酒蔵から積み込んで、それを……えーっと、真っ先に街に持ってくると賞金たっぷり?」
「よく出来たのう。そうじゃ。ヌーボー・レースじゃよ」
「そうか、レースだったな。着順予想して賭けもしてるんだったな」
「よしよし。よく出来たのう。で、急がなくても良いのかえ?」
あ。
深夜から明け方まで気を失っているので、だいたい6時間程度のロスか?
いくら馬車のレースとはいえ、この時間単位のロスはまずーい!
「ちくしょう!異世界に来ても慌ただしすぎだろ!」
馬車に飛び乗ると、荷台に少女も乗り込んできた。
「わらわが手伝ってやろうか?」
相変わらずのニヤニヤ笑いだ。
「何か手はあるのか?」
「あるかもしれんし、ないかもしれんのう。ただ、優勝したら頼み事を聞いてもらえるならいい手が浮かぶかもしれんのう」
くそっ、他に手は無いか。
記憶をさらに引っ張り出してみると、この体、結構な借金背負ってレースに賭けていた様子。
優勝しないと、ちょっと本気でまずそうだ。
「仕方ない!行くぞ!頼りにしてるぜ。えーっと……」
「わらわの名は『リーディヤ』じゃ。リーナとでも呼ぶが良いぞ」
「俺の魂のほうの名は菊池 原。ハルでいい」
「よい名じゃ!記憶見たから知っておったがの」
「だろうな!じゃぁ行くぞ!」
細かい事は後だ。
とりあえずこのレースが終わらないと何も始まらない。
ここから、この世界で始めよう。
今度こそ、後悔しない生き方をしよう。
そのスタートを今こそ切るときだ。
「……あ!」
「なんじゃ?どうかしたのか?」
「すまん、まずトイレ行ってくる。我慢できないっぽい」
「やれやれ、前途多難じゃのう」
トイレというか立ちションですが。やり方は同じでした。
でも体が若いからキレが良くて本気で感動してしまいました。
若いって最高!
頭痛で意識無くなったのに、それで今度は目が覚めるとは実に皮肉だ。
まぁ頭撃たれたんだから、多少痛いのは当然かとぼんやり思う。
「……とはいえ、二日酔いよりはマシか」
わざと声に出しつつ横になったまま体の状態を確認する。
実際、体のだるさ、むかつきが無いぶんまだ良さそうだ。
手を少し動かす――OK
足を少し動かす――OK
ゆっくり起き上がってみる。
上半身目視確認――OK。
血が出たりはしていないようだ。
そのまま立ち上がれるか試してみたら、ふらつきながらもなんとか立てた。
首を動かしてみるが違和感無し。
ん?空が明るくなり始めているようだ。
下半身目視確認――足も大丈夫そうだ。立っても痛み等は無い。
ズボンにはベルトやファスナーは無く、ヒモとボタン式だ。
ふと、思い立ってボタンを外してみる。
「……違う、な。」
ぽろんと出してみたが、見慣れたモノではないアレだった。
ぷらぷらしてみる。うん。ちょっと長いかな?
でも形状はよく似ている。
機能が同じかどうか?尿意のような感じがあったので確かめて見るべく振り返ったら
「エァスト ヴォナ グェ※?ァ シィク〓ァ 」
(ほう、中々立派な逸物じゃのう)
「誰だっ!」
と言った直後に
「クゥァト!」
と、脳でスムーズに別の言葉が出てくる。
どうやら現地語が使えるようになったようだ。
理屈は不明だが意識せず使える
いつの間にか後に少女が座っていた。体育座りで。
黒いドレスのような服……確か「ゴスロリ」とか言うやつか?を着た10歳くらいの白人少女。
大きな青い宝石のペンダントをしている。
顔は北欧系かロシアの血が入った感じで恐ろしく整っており、
金髪ショートヘア、青い瞳が衣装とあいまってまるで人形のようだが、
だが「にやっ」というかニタニタ笑っている表情は子供のような感じではない。
あれ?こんな顔、最近どこかで見たような気が?
さて。
そんな少女が後ろにいたわけだが。
で。俺は丸出しでそっちを振り返った、とする。
「ほぉほぉ。そのようなモノをわらわに見せつけて、どうして欲しいのかのう?」
少女にナニを真正面から堂々と開陳しておりました……
「違うんだァァァぁぁぁぁっ!」
あわてて収納。
ファスナーだったら挟んでたかも。
「そんなに隠さんでもよかろうに。どれ、もっと良く見せい」
ホント、勘弁してください……
元の世界じゃ事案通り越して即逮捕されるぞ。
「で、話は変わるが。どうじゃ?生き返った気分は」
「生き返った?」
「そうじゃ、おぬしはそこの沼の前で倒れたのじゃが、わらわが見つけた時はもう死んでおったわ」
そこで蘇生の魔法を使い、生き返らせたと言う。
「体はほとんど壊れておらんかったのじゃが、魂を見つけるのにはちとに苦労したわ」
死んですぐなら普通簡単なのじゃがのう、今回はおかしくて中々見つからなんだ。それに蘇生してすぐまた倒れた時はダメかと思うたぞ。だがそれでも成功するのはさすがわらわじゃ!
と腕を組んでうんうん頷いている。
魂?蘇生魔法?さっき流れ込んできたイメージの中にも蘇生に関する魔法は無かったのだが……
「人間ごときの魔法使いには使えない技なのじゃ。褒め称え恐れ敬うがよいぞ」
?ということは人間以外の存在なのか?この少女は。
それよりもこうなった原因がこの子なら、まずは言っておかなくてはならない。
「いや、あの。俺、この人じゃ無いんだが?全然別人だぞ」
「何を言うておる?魂が違う入れ物に入る筈がなかろう?」
「だから人違いだって。というか、それ以前に世界とか次元とかから違うんじゃないかなー」
「はぁ?そんなわけなかろう。おぬし、死んで頭おかしくなったのと違うか?」
おぬし、ちょっとそこに直れ、と言われたので少女の前に座る。
「どれどれ。これでおぬしの事がわかると言うものじゃ」
そう言うと少女は大きめのおデコを俺の額に付けてくる。
子供のやることとはいえ微妙に気恥ずかしい。
「さて、記憶要素でこーぉど!インデックス付けてかてごらいず。論理まっぷ検索」
ぴったりデコを付けたままブツブツ言ってる。
何かいい香りだがこれ何の匂いだろう?
「ん?んんんンン?」
デコから汗がダラダラ出てきた。
子供の汗のせいか不快には感じないものだな。不思議。
「なんじゃこりゃ!?2人分の記憶と1人の人格じゃとな?」
どういう事なのじゃ―――!!!!わらわとあろう者がやらかしてもうたのか!
もしかして魂が似てるけど違うのを突っ込んでもうたのか?
……そうか、それで記憶が多重化してもうたのじゃ!
なんかブツブツ言ってる声がだんだん大きくなってきたが
そのおかげで、おおよそ察しがついてきた。
「おぬし、その、頭大丈夫かの?」
「いきなりひどいな!」
「普通ありえぬ事でのう。『魂』と『魂の器』たる体はワンセットなのじゃ」
だから入れ間違う事は無い。
それでも入ったと言うなら相当の負荷がかかっている筈、ということらしい。
「いや、気がついた直後は凄く痛かったが、今は軽い痛み程度だ」
「も1人の方の記憶は読み取れるのか?」
「ちょっと待て……」
意識して色々思い出そうとすると、断片的に記憶らしきものが出てきた。
生まれた家のこと、遊んだ子供時代のことなどなど。
どうやらこの体の持ち主、そこそこ裕福な家の出らしい。
あくまで俺個人の記憶が主で、体側の記憶は探さないと出てこない感じだ。
でも言語などの基本的なことはスムーズに出てくるので助かる。
「全部かどうかは知らんが少しは見えるぞ?」
「脳のほうがなんとか折り合いをつけたようじゃの。まったくヒトの脳とは、わらわの力をもってしても実に謎の多い器官じゃ」
それでの?とデコを離して少女は言う。
「おぬしの記憶を読んだが、いったい……何者なのじゃ?」
「むしろこっちが聞きたいぞ。というか俺の記憶を見たのか」
「おうさ。もう1人のほうのも全部まるっと見たぞえ。おぬしはヒトではあるようじゃが、理の一部がなんだか異なる世界のようじゃのう」
「見られたのか……まぁいいか。しかし体とかはほとんど同じように見えるんだが、本当に世界が違うのか?ここは」
「おそらくそれ程離れた世界ではあるまいに。そもそもわらわの魂探査はあまり遠くに手を伸ばしておらんかったしの」
何でも、言わば「手を伸ばして届く程度の狭い範囲」で
この体に合う魂をちまちま探索したらぴったりのが見つかったから、
これだ!と思って回収したようだ。
それだけ近ければ似ていても当然なのじゃ、と言うことらしい。
よくわからないが、なんとなくそういうことだと思っておこう。
「ところで、この体の持ち主はいったい何で死んだんだ?そこの記憶はよく読み取れないんだが」
「ああ、それはのう。正直わらわのせいでもあるのじゃ」
少女が話した内容によれば、何でもこの少女、奥地にある砂漠に住む
「いわば神みたいなものかの?おぬしの方の言葉ならドラゴンとでも言うほうが近いのじゃ」
という存在で本来体に相当する部分はけっこう大きいらしい。
「ずっと皆でマナが豊富な砂漠で暮らしておったのじゃが、先日、ヒトが物凄い魔法を使ったのを感じてのう」
それでヒトの世界に調査に行くため、探査系魔法にすぐれた自分が行くこととなり
「薄いマナでも生きられるよう体の一部を分離圧縮して小型の存在に作り変えたのじゃ。凄いであろう?」
ドヤ顔で言うが、見た目は10歳くらいの金髪少女なのでちょっとカワイイ。
「……ただのう、最初元の姿をそのまま小さくしただけだったのじゃが、それがヒトにとっては恐ろしい姿だったようなのじゃ……」
小さいとはいえ、ドラゴン。
それがろくなライトも無く夜を徹して走る馬車の前に現れたら。
「驚いて、馬車を置いて逃げようとして、沼地の湿った土で転倒して、たまたまあった石に胸をぶつけて、それが原因で死んだのか」
多分、タイミング悪く胸を強打したせいで心室細動が置きたのだろう。
この世界――元の世界の中世に近い感じだ――にAEDは無さそうだし。
「それで哀れに思うて蘇生魔法を使ったのじゃが……こうなってはやり直すこともできん。悪いことをしてもうたのう」
「事情はわかった。わざとじゃないんだろ?色々不幸が重なっただけだ」
「おぬしにも迷惑をかけてもうた。違う世界に放り込まれたらさぞや不安であろう?」
「いや、それが正直元の世界にはあまり未練が無くてね」
「そう言ってもらえると有難くはあるのう」
金髪少女がいかにも申し訳ないという顔をしていると、中身は違うとわかってはいても
あまり強く責める気にはならない。
そういや、ミニドラゴンからどうして金髪少女に?それもゴスロリとか?
ゴスって、この世界にもあるのか?まぁ元々ゴシック様式は中世発祥なのではあるが。
そのへんどうなの?と質問してみたら
「ああ、それはおぬしが気を失っている間表層に浮かんでいたイメージからコピーしたのじゃ」
気を失ったり寝ていたりすると、記憶をうまく読めないらしい。
サーバーがシャットダウンされてるようなものか?
「だがそれでもこのイメージが浮かんでおったのじゃから、余程好きなのかと思って姿を似せたのじゃが……どうじゃ?気に入ったかの?これなら怖くなかろうも?」
そりゃ怖くは無いがこんなゴスロリ金髪少女がイメージに?覚えが無いんだが?
でもなんか見たことあるんだよなぁ……?
「あっ!」
「お、どうしたのじゃ?」
「思い出した。それ!」
女子高校生アルバイトがえらく熱心に最近流行りのゲームを勧めてきたのだが
それに出てくるキャラクターだ!
「けんむす」という日本全国の市町村を美少女化したゲームで、
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イチオシとやらで詳しく詳細に細かく丁寧に説明されたのだが、全部忘れた。
真面目そうな女子高校生が熱心に説明する姿にインパクトがあったから覚えてたんだな~
「くはぁ!なんじゃと、ゲームとやらの架空の姿か?!どうりで記憶フォルダ『知ってる女性』の中に見当たらん筈じゃ!」
俺の記憶はフォルダ分けされてるのか。
俺の中の隠しフォルダも見られてるんだろうなぁ……
「ところで、まだまだ話を聞きたいところなのじゃが」
「ああ、俺もまだ知りたい事はたくさんあるぞ」
「おぬし、何で夜を徹して馬車を走らせてたか覚えておらんのか?」
「?どういう事だ?」
「元の体側が受けてた仕事の記憶は無いのかえ?」
思い出してみる。
慣れてきたのか?だんだん、体側の記憶もうまく読めるようになってきた感じだ。
「えーっと、馬車に乗る前の話だからっと」
時系列を逆に思い出してみる。
「ワイン積み込んで……ここにもワインあるんだ……その前に契約書を交わして、さらにその前に契約の内容の話をしたな」
「よし。記憶のテストじゃ。その契約内容を言ってみるがよいぞ?」
「ワインはヌーボーで、解禁日に酒蔵から積み込んで、それを……えーっと、真っ先に街に持ってくると賞金たっぷり?」
「よく出来たのう。そうじゃ。ヌーボー・レースじゃよ」
「そうか、レースだったな。着順予想して賭けもしてるんだったな」
「よしよし。よく出来たのう。で、急がなくても良いのかえ?」
あ。
深夜から明け方まで気を失っているので、だいたい6時間程度のロスか?
いくら馬車のレースとはいえ、この時間単位のロスはまずーい!
「ちくしょう!異世界に来ても慌ただしすぎだろ!」
馬車に飛び乗ると、荷台に少女も乗り込んできた。
「わらわが手伝ってやろうか?」
相変わらずのニヤニヤ笑いだ。
「何か手はあるのか?」
「あるかもしれんし、ないかもしれんのう。ただ、優勝したら頼み事を聞いてもらえるならいい手が浮かぶかもしれんのう」
くそっ、他に手は無いか。
記憶をさらに引っ張り出してみると、この体、結構な借金背負ってレースに賭けていた様子。
優勝しないと、ちょっと本気でまずそうだ。
「仕方ない!行くぞ!頼りにしてるぜ。えーっと……」
「わらわの名は『リーディヤ』じゃ。リーナとでも呼ぶが良いぞ」
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「だろうな!じゃぁ行くぞ!」
細かい事は後だ。
とりあえずこのレースが終わらないと何も始まらない。
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そのスタートを今こそ切るときだ。
「……あ!」
「なんじゃ?どうかしたのか?」
「すまん、まずトイレ行ってくる。我慢できないっぽい」
「やれやれ、前途多難じゃのう」
トイレというか立ちションですが。やり方は同じでした。
でも体が若いからキレが良くて本気で感動してしまいました。
若いって最高!
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これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
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