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02 旅は道連れ
墜ちた少女
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たとえここが異世界であろうと、生身の飛空魔導師が墜落なんかしたら結果は簡単に予想できる。
現実世界でも長く生きていると様々な見たくない光景を見ることがあったが、見ないですむなら見たくない。
「リーナ!助けられるか?」
「わらわを誰だと思っておるか!まかせぃ!」
おお、リーナを初めて頼もしいと思ったぞ。
「落下地点演算……完了!『えあァァあくっしょん!』」
結んだ両手を振りかざし、魔法を発動させるリーナ。
飛空魔導師は落下しながら近くの森の中に消えるが、何かにぶつかったりするような音は聞こえない。
「助けにいくぞ!場所はどっちだ?」
「そこから右じゃ!」
リーナと2人、森をかき分けて墜落現場に向かう。
森と言っても日本のものと違い、植生もそこまで密集してないし勾配もきつくないのでなんとか歩ける。
……現場に到着すると、予想外の事態になっていた。
飛空魔道士は遠目で見たときは小柄な女性かと思ったが、まだ子供のようだ。
「ケガも無いしちゃんと生きてはおるぞ」
リーナがそういうなら体『は』大丈夫なんだろう。
「なぁちょっと聞きたいんだが『えあーくっしょん』ってどんな魔法だったんだ?」
「文字通り空気を圧縮してクッションのようにしたわけじゃが」
「それって、よく弾むのか?」
「……なにせ突然だったから、ちょっと空気を固めすぎたやもしれんのう」
ビルから飛び降りても大丈夫、という救助用のエアーマットは着地の瞬間に排気することで衝撃を吸収する。
その排気が無かったら、トランポリンのように飛び跳ねてしまうわけで。
「こんな格好、なんかの漫画で見たなぁ」
「なかなか面白い事になっておるのぉ」
たぶん跳ねた拍子なんだろうが、なぜか木に足がひっかかっており
さらにその足でだらんと逆さにぶら下がっている状態。
そしてまるで『ピヨピヨ』と擬音が付きそうなくらいに目を回している。
それだけでもコミカルな状態だが、この事態をもっとアレなことにしているのが
「なんで空飛ぶのにスカートというかワンピースっぽい格好なんだ?」
そんな服で逆さ吊りになれば、当然下着が丸見えになるわけで。
「白か……」
「白じゃな」
それも意外なことに『ひもパン』としか言いようの無い一品。
「ふーむ。布はそれなりの値段するだろうから面積を抑えてコストダウン、というのは理にかなってるんだろうな。さらにこの構造は簡単だから製造も難しくは無さそうだし」
パンツ一枚からでもわかる事は多い。
この世界の事をよく知るために観察する。
「そこを見るのか。もっと違う感想もあろうて……」
「この世界って皆こんなの履いてるのかな?」
「どうじゃろうな。さすがに下着事情まではよくわからんぞ」
「ところでリーナは何履いてるんだ?」
「ふふふ、見たければ夜まで待つのじゃ。ま、わらわの場合服も全部魔素から物質変換しておるで自由自在じゃがの」
「え、服も魔法なのか?そりゃすごいな」
リーナとしゃべりながらも、俺は下着を詳細に観察する。
装飾的な要素は何もない。ただコットンに近いような布を切って縫っただけだ。
ヒモも編み込んだヒモではなく、ただの布地を2重に縫っているシンプルなものだ。
「レースどころかステッチの色を変えることもしていないし。本当に質素なものだなー。あとはクロッチはどうなっているんだろう?」
クロッチ、つまり布地の中央の構造を確認すべく俺は顔をパンツに近づける。
ここを2重にしているかどうか?は意外と重要で、一番消耗する部分の補修が楽になるが製造に手はかかるらしい。
俺が子供の頃は靴下や下着でさえ破れても繕って大事に使う文化がまだ残っていたので、母親からそう聞いた覚えがある。
その母親もずいぶん前に亡くなってしまい、俺の家族と言える人は元の世界に誰もいない。
ま、だからこそこんな異世界に来てもお気楽にやれているわけだが。
「うーん。よく見えないな」
足の陰になっていまいちよく見えないのでもっと近寄ってみたら、ちょうど飛空魔道士が気がついたようだ。
「……ここは……どこや……助かったのかそれとも天国……やろか」
「お、気がついたか。体痛いところとかは無いかい?」
「なにやら……声がする……ん?なんや……これは?」
だんだん意識がはっきりしてきたようだ。
うろ覚えの救急救命手順を頭からひねり出すが、呼吸は正常そうなので心肺蘇生法は必要無い。
あと、えーっとなんと言ったっけ?ジャパンなんとか数値だかスケールだったような気がするが意識の基準があったな。
『目と言葉と動き』の3点が正常かどうかだったはず。
判定するために言葉をかけてみる。
「おーい、目は見えてるか?」
「……見えてるけど、なんやろ?これは」
目はだいたい見えてるようだし、言葉もはっきりしてきたようだ。
これはいい兆候だ。
「うち、逆さになってるんか?ん?そしたらこれはまさか」
さて。
現在の体勢だが。
クロッチを確認するために俺は目いっぱい近づいていたわけで。
ちょうどそのパンツは俺の目の前にある。
そして飛空魔道士の少女は逆さ吊りだから、彼女の目の前にあるのは俺の股間(のちょい下)である。
「いやぁぁぁぁあああぁぁぁアぁぁァァ!!!!!」
飛空魔道士の少女は思いっきり腹筋を使い上半身を跳ね上げる。
俺の股間が目の前にあるのにそんな動きをしたら当然、頭の軌道は弧をえがくから
「!!!!?!oh おh:」ぁ !!!!!!!! bぃkhj!!!」
俺は股間に走る激痛に崩れ落ち、声にならない無音の悲鳴をあげて転げ回る。
でもこれで目も言葉も動きも大丈夫な事が確認できたから、彼女は問題無さそうだ。
俺はもうダメそうだが……!
現実世界でも長く生きていると様々な見たくない光景を見ることがあったが、見ないですむなら見たくない。
「リーナ!助けられるか?」
「わらわを誰だと思っておるか!まかせぃ!」
おお、リーナを初めて頼もしいと思ったぞ。
「落下地点演算……完了!『えあァァあくっしょん!』」
結んだ両手を振りかざし、魔法を発動させるリーナ。
飛空魔導師は落下しながら近くの森の中に消えるが、何かにぶつかったりするような音は聞こえない。
「助けにいくぞ!場所はどっちだ?」
「そこから右じゃ!」
リーナと2人、森をかき分けて墜落現場に向かう。
森と言っても日本のものと違い、植生もそこまで密集してないし勾配もきつくないのでなんとか歩ける。
……現場に到着すると、予想外の事態になっていた。
飛空魔道士は遠目で見たときは小柄な女性かと思ったが、まだ子供のようだ。
「ケガも無いしちゃんと生きてはおるぞ」
リーナがそういうなら体『は』大丈夫なんだろう。
「なぁちょっと聞きたいんだが『えあーくっしょん』ってどんな魔法だったんだ?」
「文字通り空気を圧縮してクッションのようにしたわけじゃが」
「それって、よく弾むのか?」
「……なにせ突然だったから、ちょっと空気を固めすぎたやもしれんのう」
ビルから飛び降りても大丈夫、という救助用のエアーマットは着地の瞬間に排気することで衝撃を吸収する。
その排気が無かったら、トランポリンのように飛び跳ねてしまうわけで。
「こんな格好、なんかの漫画で見たなぁ」
「なかなか面白い事になっておるのぉ」
たぶん跳ねた拍子なんだろうが、なぜか木に足がひっかかっており
さらにその足でだらんと逆さにぶら下がっている状態。
そしてまるで『ピヨピヨ』と擬音が付きそうなくらいに目を回している。
それだけでもコミカルな状態だが、この事態をもっとアレなことにしているのが
「なんで空飛ぶのにスカートというかワンピースっぽい格好なんだ?」
そんな服で逆さ吊りになれば、当然下着が丸見えになるわけで。
「白か……」
「白じゃな」
それも意外なことに『ひもパン』としか言いようの無い一品。
「ふーむ。布はそれなりの値段するだろうから面積を抑えてコストダウン、というのは理にかなってるんだろうな。さらにこの構造は簡単だから製造も難しくは無さそうだし」
パンツ一枚からでもわかる事は多い。
この世界の事をよく知るために観察する。
「そこを見るのか。もっと違う感想もあろうて……」
「この世界って皆こんなの履いてるのかな?」
「どうじゃろうな。さすがに下着事情まではよくわからんぞ」
「ところでリーナは何履いてるんだ?」
「ふふふ、見たければ夜まで待つのじゃ。ま、わらわの場合服も全部魔素から物質変換しておるで自由自在じゃがの」
「え、服も魔法なのか?そりゃすごいな」
リーナとしゃべりながらも、俺は下着を詳細に観察する。
装飾的な要素は何もない。ただコットンに近いような布を切って縫っただけだ。
ヒモも編み込んだヒモではなく、ただの布地を2重に縫っているシンプルなものだ。
「レースどころかステッチの色を変えることもしていないし。本当に質素なものだなー。あとはクロッチはどうなっているんだろう?」
クロッチ、つまり布地の中央の構造を確認すべく俺は顔をパンツに近づける。
ここを2重にしているかどうか?は意外と重要で、一番消耗する部分の補修が楽になるが製造に手はかかるらしい。
俺が子供の頃は靴下や下着でさえ破れても繕って大事に使う文化がまだ残っていたので、母親からそう聞いた覚えがある。
その母親もずいぶん前に亡くなってしまい、俺の家族と言える人は元の世界に誰もいない。
ま、だからこそこんな異世界に来てもお気楽にやれているわけだが。
「うーん。よく見えないな」
足の陰になっていまいちよく見えないのでもっと近寄ってみたら、ちょうど飛空魔道士が気がついたようだ。
「……ここは……どこや……助かったのかそれとも天国……やろか」
「お、気がついたか。体痛いところとかは無いかい?」
「なにやら……声がする……ん?なんや……これは?」
だんだん意識がはっきりしてきたようだ。
うろ覚えの救急救命手順を頭からひねり出すが、呼吸は正常そうなので心肺蘇生法は必要無い。
あと、えーっとなんと言ったっけ?ジャパンなんとか数値だかスケールだったような気がするが意識の基準があったな。
『目と言葉と動き』の3点が正常かどうかだったはず。
判定するために言葉をかけてみる。
「おーい、目は見えてるか?」
「……見えてるけど、なんやろ?これは」
目はだいたい見えてるようだし、言葉もはっきりしてきたようだ。
これはいい兆候だ。
「うち、逆さになってるんか?ん?そしたらこれはまさか」
さて。
現在の体勢だが。
クロッチを確認するために俺は目いっぱい近づいていたわけで。
ちょうどそのパンツは俺の目の前にある。
そして飛空魔道士の少女は逆さ吊りだから、彼女の目の前にあるのは俺の股間(のちょい下)である。
「いやぁぁぁぁあああぁぁぁアぁぁァァ!!!!!」
飛空魔道士の少女は思いっきり腹筋を使い上半身を跳ね上げる。
俺の股間が目の前にあるのにそんな動きをしたら当然、頭の軌道は弧をえがくから
「!!!!?!oh おh:」ぁ !!!!!!!! bぃkhj!!!」
俺は股間に走る激痛に崩れ落ち、声にならない無音の悲鳴をあげて転げ回る。
でもこれで目も言葉も動きも大丈夫な事が確認できたから、彼女は問題無さそうだ。
俺はもうダメそうだが……!
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