Two Man Cell

刕 朧㞳

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1巻

第2話 多分、異常者

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空には朝日が上り、 朝露が葉を滴った。
天気は満点の晴日和だ。

鳥のさえずりにカクシは起こされた。

うーんと背伸びをし、
数秒間ぼーっとした後、
「もう朝か、、、だる」
と言ってベッドから立ち上がった。

ドカっ! バンっ!ゴツ、、、

カクシは寝ぼけているせいか、
周りに体をぶつけまくった。

「、、、ん?
、、、なんか騒がしいわね?ネズミ?」
すでに下の階にいたアイミィが何事かと思い
上を見上げた。

カクシは倒れており、
「イタッ」と言って起き上がって
階段を降りた。

食器を洗っていたアイミィが 
下に降りてきたカクシを見て
「朝から騒がしいわね~
寝相悪くてベッドから落ちたの~?」
と言った。

「、、、」

「あれ?聞こえてない
まだ寝ぼけてるわね」

カクシは寝ぼけながらも
カウンターへと座ると、
頬杖をついてまた寝始めた。

「なんでここでも寝るかな~
お~い、おきろ~~」
そう言ってアイミィはカクシの頭にチョップした。

「これでも起きないか~
ほら!!朝ごはん!起きな!」

アイミィがカクシの目の前に朝食を置いた。
焼いたパンの上に目玉焼きが乗った
The 朝食っといったやつだ。

「おぉう、ありがと、、、」
とカクシは手づかみで食べ始めた。

「、、、猿かよ」

「ん?なんか言ったか?」

「ううん、何も言ってないわよ」

「あぁ、、、そう?」

「あ、昨日の例の情報の事だけど、マスターにも見せたわ」

 アイミィがカクシに昨晩の出来事を
「マスター」という者に話したらしい。

「え?マスターに?マスターはなんて言ったんだ?」
アイミィの言葉を聞いたカクシはちょっとだけ目が覚めた。

「驚いた顔なのか、、、興味無い顔なのか、、、
なんともいえない顔して研究室に戻って行ったわ」

「あ、なるほどな。返答はなしか。
 てか、研究室から一応出てきたんだな」

「私の顔を見るためだったらしい」

「どゆことだよ」

とそんな話をしていると、

バンっ!!!!!!

カウンターの横の扉からものすごい爆発音が聞こえてきた。

「うわっ!なんの音!?」
とアイミィがびっくりして声を上げると、
その扉からモクモクと白い煙が漂ってきた。

「煙!?なんで!?火事ぃ!?」
アイミィはさらにびっくり。

ギィィ、、、

扉がゆっくりと開いた。

煙の中に大きな影が現れ、 
こちらに歩いてくる。

「ゲホゲホっ!!!ゴホッゴホッ!、、、
あぁ~呼んだ~??さっきから咳とくしゃみが止まらなくてさ~。もしかして大尉の言霊?」

部屋の中から
大きな巨体で 割の合わない小さな丸メガネし、白衣姿の大男が現れた。
カクシのことを大尉って呼んでいるらしい。

「別に言霊でもなんでもねぇよ。
そんな能力俺にはございませーん。
絶対さっきの爆発のせいだろ」

「絶対そうよ
この引きこもり」
とアイミィの追い打ち。

「うぅ、、、」

「あーあ、アイミィが責めるから」

「なんであたしよ!」

「今の引きこもりは言い過ぎだろ」

「、、、言いすぎだわ」


「だろ?
ところでマスター。
昨日の例の情報見たんだよな?
どう思った?」
カクシはマスターにそう聞くと、

「あ~、昨日の紙の事ね~、
う~ん、、そうだな~
僕たち、、、
手を出しちゃまずいのに手を出したみたいだね。
って思ったかな~」

「あ、やっぱりか」

「やっぱりだったわね」
2人はそうだろうなって思い、うなづいた。


するとマスターがカクシ達に対して
「多分、相手はまだ大尉だと気づいていないだろうから大丈夫だとは思うけど、、、やるなら今のうちだよね」
と言った。

「やっぱりやるなら早めにだよな~、
だるいな~」

「だるいとか言わないの~。
せっかく大事な情報を掴めたんだから!」

「じゃあ僕はまた研究所にもどりやす。では」
とマスターは扉へと背を向けた。

「ちょ、おい!まさか、、、俺一人で実行しないといけないわけじゃないだろうな!?」
カクシはそれはいけないだろと大きな声を上げた。

「あの引きこもりは研究があるからダメ。
わたしはBARの仕事の方があるからダメ。
、、、ということは?」

「俺一人だな、、、て、おい!なんでだよ!
おいおい、マジかよ~、それは1番だるいやつだって~」

「はいはい。だるいだるい言ってないでさっさと行きな!」
とカクシの背中を強く押し、外に追い出した。

カクシは外へと思いっきりダイブし、
バンっ!と扉がしまった。

「いってぇー、たくっ!あの怪力女め~」
カクシは背中をすりすりとさすった。

「あ、財布、、、」
財布がないことに気づいたカクシ。

ポイッ、、、

扉の中から財布がポイッと。

「扱い雑いな~、、、」


カクシは考え事をしながら、とぼとぼと街中を歩き始めた。

(任務遂行するにしても、何から始めればいいんだよ。大体の情報は片っ端からもう集めたんだけどなぁ、、)

カクシは昨日とは違うラフな格好で外に出されていた。
強いて言うなら、、、パジャマだ。

行くあてもないため、とぼとぼと当たりを散歩し始めた。
すると、カクシの耳に大きな声がつんざいた。

「みなさん!こちらはガヴァメントです!
皆さんの質問や、不安なお声を聞いて、
私たちは皆さんになにかできないかと
政治家やガヴァメントの皆さんで提案をしております!!
地域の活性化、より良い日本の経済循環など
皆さんの不安を消せるように努力しますので!
どうかガヴァメントの支援をよろしくお願いします!!」

ワゴン車の上でメガフォンを片手に
演説するガヴァメント。
それを流し目で見るカクシ。

「、、、朝っぱらから元気だな~
本当は全然ろくなことやってないくせによ
見とけよ。全部吐き出させてやる
この正義の皮を被ったネズミが。
、、、正義の皮を被ったネズミ、、?
なんか違うな。まぁ、いっか」

カクシは通りすがりにぼそっと呟いた。
いや、ぼそっとの量では、、、ない。 


そして時刻は昼へと。

「はぁ~、カヴァメントの新しい情報を集めれたのはこれっぽっちか~。
なんならこの集めたのも知ってる情報だしな~
、、、てかもう昼じゃ~ん」

追加で色々とガヴァメントの情報を得たカクシは腹が減っていたため最寄りのレストランへと足を運んだ。

カランコロ~ン

「何名様でしょうか~?」
と女性の店員さんがカクシに聞くと、

「あ、1名でーす」といい、窓際の席へと案内された。

(うわ、、窓際じゃん。絶対熱いやつじゃ~ん)
と心の中で愚痴をこぼす。


席に座り、メニュー表へと手をかけた。

(ふむふむ、、、結構美味そうなやつばっかりだな、、、
どれにしよ、、、)

そして20分後。

「あ、すみませーん」
と頼むものが決まったカクシは店員さんを呼んだ。

「ストロベリーパフェで」 
と店員さんに頼んだ。

あんなに悩んだ結果頼んだのはこの1個である。

(こんな暑いところで熱いやつ食えるかっつーの) 
とまた心の中で愚痴をこぼすカクシ。

「少々お待ちください」
店員は厨房へと入っていった。

何分かしてパフェが届き、カクシはもくもくと食べ始めた。

(うん。味は悪くない)

「はぁー食った食った
さぁ、帰ろうかな、、!」

カクシはパフェを食べ終え席を立とうとすると、

「キャー!!」

と女性の悲鳴が店内に響き渡った。

「おぉ!なんだ!?」

カクシはその悲鳴に驚いて、立ち上がると辺りを見渡した。

すると、さっきの店員が、灰色のニット帽に
サングラスとマスクをしている強盗特有のテンプレ衣装の男にナイフを突きつけられていた。

「おいっ!!動くんじゃねぇぞ!!
金だ!金!!早く用意しろ!
店のやつ以外 1ミリでも動いてみろ!
こいつを刺すぞ!」

男は店員を人質にして、ナイフを振り回した。

「おぉ、強盗か、、実際に対面してみると怖いねぇ」
カクシはこの状況にちょっとだけビビった。
大事なことなので2回言おう。
ちょっとだけビビった。
ちょっとだけ。

店にいたものは怖がって悲鳴を上げたり、
しまいにはその場に座り込んでしまう人もいた。

そう、1人を除いては。


「あの~、、、もしかして強盗っすか?」

なんということでしょう。
カクシは強盗犯に声をかけたのです。
その謎の光景に驚きを隠せなく、店にいるものたちはぽかんと口を開けカクシを見つめた。

「あぁっ!?なんだお前!!なんで話しかけてくんだよ!俺の言ってることが聞こえねぇのか!!動くなっ!て言ってんだよ!
座れ!!そこに座れってんだよ!」
男は興奮しているせいか、カクシのその言動に
さらに逆上した。

「大丈夫大丈夫、聞こえてますから~
でも、そんなか弱い女性を人質にしてなんのメリットがあるんですか~?」

カクシは男に問いかけ、
さらに徐々に男に近寄っていくではないか。
周りのものたちは強盗犯よりもカクシの方に驚いて注目している。
もう強盗犯より目立っているのはカクシの方だ。

「おい!てめぇ!動くなって言ってんだろ!!ふざけんじゃねぇぞ!!なにちまちま近づいて来てんだよ!それ以上近づくと刺すぞ!」

男は脅すが、そんな脅しは通用しないカクシ。

しかも、なんの躊躇もなく段々と男のほうに近寄っていく。
そして、カクシは男の目先の距離まで来ていた。

「刺せるんなら刺してみな?って言うか交渉があるんだけど、、、

その子じゃなくて俺を人質に取りなよ」


「、、、、」


 「は?」 「は?」


男と店のもの達が一斉に放った一言だった。


「あら?俺なんかおかしなこと言った?」



「お、、おまえ、、、な、何言ってんだ?頭いかれてんのか?」
男はカクシの言葉にすごく動揺している。

「まぁ、この状況を見て君も頭いかれてると思うけど?」
カクシはさらに男を煽る。

「お前と同じにすんじゃねえ!ぶっ殺すぞ!」
男はまた再び逆上した。

「あ~、うるさいな~。も~
自分より弱い相手にしか手を出さないのか?
DV男もいいところだな~」
カクシは続けざまに煽った。

「、、、くそっ!うるせぇのはそっちだろ!
そう言うんなら仕方なくお前にしてやるよ!
仕方なく!だぞ!
その代わり下手な真似してみろ!
すぐにこれで首根っこぶっ刺してやるからな!」
と言いながら人質の女性を突き放した。

「あぁ、怖い怖い。
自分、弱いですから安心してください。
見た目もチビでしょ?
体細いでしょ?」
カクシは男の方へと歩いていき、背後を取られる姿勢になった。
首元にはナイフの刃先が突きつけられた。

(、、、あぁ、首が冷てぇなぁ
ひんやりきもち~)

 カクシの頭の中はそれだけだった。

「ね?何もしないでしょ?」

「お前いちいちうるせんだよ!黙ってろ!」

「はーい、、、」

 レストランで立て篭もって数十分が経過した。

(この男何を考えるんだ。立てこもるやつの気が知れねぇ)
とカクシは心の中で呟いた。

(こいつ人質にしてくださいなんて何を考えてんだよ。頭沸いてんじゃねえのか) 
男は心の中でそう呟いた。

「お前マジでアホだな。自分から人質になるなんて言い出すやつがどこにいんだよ。病気だ病気!」

男がカクシの背後でつぶやく。

「病気、、、まぁ、間違ってはないかな。
てか、、、近くに警察が来てるみたいですね」


「あ、警察だ?嘘言ってんじゃねぇよ!」

「いえ、嘘ではないよ。俺、耳はいいから」

「いきなり自慢してんじゃねぇ!殺すぞ!」

すると外から
「おい!立て篭もっている犯人!下手な抵抗はやめて出てこい!」
と警察が犯人に言った。

「くそ!まじで来てんじゃねぇか!誰だ呼んだやつ!」
男は警察の声を聞くと怒りだした。

あたふたと慌てふためいている犯人。
この状況に怖がる店の人たち。
人質としてじっといるカクシ。

訳の分からない光景が広がっている。

「くっそ!やべぇじゃねぇか、、、」
男が動揺していると、、、

ドスっっっつ!!

「痛でぇぇえ!!!!!!!!!!」

男は悲鳴を上げて倒れ込んだ。

腕からカクシが解放され、続けざまに
男の手に持っているナイフを蹴飛ばした。

「おい!痛えだろ!何もしないって言っただろうが!」

カクシは油断した男の足の甲を
かかとで思いっきり踏んずけたのだ。

男はすぐさま立とうとした。
だが、カクシは男の顔目掛けて蹴りを入れた。

バコンッ!!

、、、、バタンっ、、、

鈍い音とともに男は気絶した。

「、、、ふぅ、皆さん!これで安心です!
すぐに外に出てください!」
カクシがそういうと店の中にいるものたちは
倒れている男を踏みつけながら入口へと向かった。

「はぁ~~~やっと解放された~、、、
も~~~~う、疲れた!
帰ろ」
カクシがとぼとぼと外へと出た。

「あ、警察さ~ん。もう来るの遅いっすよ~。
男に蹴り、
一発かましてやりましたから!
もう安心してくださいね。」
とガッツポーズ。

ガチャ。


「え??」

「過剰防衛です」

「、、、
嘘だろ~~~~!?!?!」


時刻は夕方となり、空はオレンジ色に染まっていた。
カクシはやっと警察との話を終え外へと出た。

「もう!なにやってんのよ!暴力振るったらそうなるに決まってんでしょ!」
アイミィがカクシを迎えに来ていた。

「いや、ならあのまま何もしてなかったら、下手したら誰か死んでたんだぞぉ」
カクシは納得行かない様子だった。

「あ~あ、これだから警察は嫌いなんだよ~」

「はいはい。そうやって警察の人をバカにしないの~」
カクシはアイミィからあしらわれた。

「、、、ところであれは使ってないんでしょうね?」

「ん?あぁ、あいつは俺に完璧な殺意はなかったよ。だから使えなかった」 

「そう。それならいいんだけど、、、
あまり表では使わないようにしててよ
今はこの世界では腫れ物扱いされてるんだから」

「あぁ、分かってるよ
【エレメンター】同士か、殺意のあるやつにしか使えないから大丈夫だ。」


2人は夕暮の河川敷を歩いてBARへと帰って行った。
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