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第一章
9話目 灯里と食事
「ちゃんと着けたみたいで良かった」
「良いお宿教えてくれてありがとうございます」
「でしょ! じゃあ次はオススメの食事処をおしえてあげるね」
そう言って灯里さんに連れてきてもらったのは宿の近くの食事処だった。
「私がこっちに来た時からの行きつけなんだ」
扉を潜るといらっしゃいませと言う声とガヤガヤとした賑やかな声が聞こえてきた。
「灯里ちゃんそっちの席空いてるよ」
はーいと返事をする灯里と共に店員さんに教えて貰った席に腰を下ろす。
「桜さんは何食べたい? 私はレッドボアのガーリック炒めと逃げにんじんの浅漬けとフライドポテト」
「逃げにんじんって何…?」
「文字通り食べられたくないがために畑から逃げ出すにんじんだよ。 面白いでしょ」
「異世界っぽい」
「でしょでしょ」
「じゃあ私はオークのステーキにしてみようかな。 あとレッドボアのシチュー」
「良いねいいね」
すみませーんと忙しなく働く店員さんを捕まえて注文した。
「さてと……」
灯里さんが鞄から手のひらサイズの置物を取り出しテーブルに置き徐にスイッチを押した。
「これは……?」
「盗聴防止の魔道具だよ。 異世界っぽいでしょ」
「うん! 異世界っぽい!」
「では改めまして本宮灯里です。 歳は23歳、ここに来て5年になるね。 残りの魔力は3百万ちょい。 貰った魔法は回復魔法だよ」
「そこまで話していいの?!」
「うん。 私の魔法はこの街の人には知れ渡ってるからね。 というか瀕死の怪我人が出たら私らが対応するし」
「そうなんだ。 回復魔法ってどんななの? 瀕死ってどれくらい治せるの?」
「死んでなきゃ全回復。 古傷も消えるよ。 ……凄いでしょ」
「それは凄いね」
「ただ消費魔力は一回1000、かすり傷だろうが瀕死の重傷だろうが変わらないの。 だから軽症では呼ばれないんだよね」
「軽症でも変わらないなら……そうなるよね」
「私としては聖女みたいな異世界物に憧れてたから少し残念なんだけどね」
「そうなんだ」
「桜さんの魔法聞いてもいい?」
「さん付けしなくていいよ。 私は橋沼桜、歳は25歳。 貰った魔法は自分が買ったことがあるものを取り寄せる魔法だよ」
「年上?! じゃあ桜って呼ぶね、私も灯里って呼んでね。 ……って取り寄せ系なんだ! ……あれ? 通販とかスーパーじゃなく自分が買ったもの?」
「うん。 私が食べたいものは通販でもネットスーパーでも無いから。 だって期間限定品なんて通販で売ってないじゃない!!」
「……そうだね。 そうか取り寄せ系なんだ……」
そう言い何か考え始める灯里。 そんな最中頼んでいた料理が運ばれてきた。
「じゃあまずは食べようか」
「うん」
「「いただきます」」
熱々に熱されたステーキを切りソースをつけて食べる。
「うまぁっ」
ポークステーキそのまま!ソースの酸味も丁度いい。 一緒に運ばれてきたパンも頬張る。
合う~!
「こっちも美味しいよ」
灯里が勧めてくれるのでそちらも一口ずつ貰った。
あぁこっちも美味しい! ガーリック合う!
逃げにんじんも美味しい幸せ。 ……足がピクピクしてるけど。 なんかタレでダイイングメッセージ書いてるけど。 なになに……逃亡失敗?……見ればわかるよ!!
お互いに食事を味わい幸せに浸った。
「あー食べた食べた」
「お腹いっぱいだ」
お互いに運ばれてきた皿を綺麗に食べ切りお腹をさする。
「……ねぇ。 桜頼みがあるの」
そんな中灯里は表情を改め真剣な眼差しでこちらを見た。
「桜が怪我をした時必ず治すから……いいえ、これは当たり前だからダメだね……。 お金を払うから取り寄せてもらえないかな」
「な、何を?」
灯里のあまりの迫力に仰け反ってしまった。
「私こっちに来て5年じゃない? だからこっちにいる時成人を迎えたの。 それまでお酒飲んだこと無くて……、でもこっちだとエールくらいしかお酒が無くて……。 コーヒーリキュールって取り寄せて貰えないかな? カルーアミルク飲んでみたいの」
「カルーアミルク?」
「そう!」
「灯里はこのあと時間ある?」
「あるよ?」
「じゃあ私が泊まる宿に行こう! そこで二次会やらない?」
「いいの?!」
「もちろん!」
そうと決まれば空いている食器を片付けてお金を支払って宿屋へ戻った。 支払いは灯里が奢ってくれた。
「すごいね」
机の上には封が開いているリキュールを並べた。 並べるところが足りなかったので灯里が手持ちの机を出してくれた。 外で活動するときに使ってる奴だそうな。
「まずご所望のコーヒーリキュール。 牛乳で割る系の抹茶、チョコ、いちごリキュール。 定番のカシス、ピーチ、ライチ、オレンジ、ナッツ系、あとは女性に人気の梅酒。 私梅酒も色々飲んでたから種類あるよ。 ついでに割る牛乳とかオレンジジュースとか取り寄せちゃおう! おつまみでチーズとかお菓子も!」
手軽に飲み比べできるように紙コップも準備した。
なんなら缶のサワー系とか酎ハイとかも出せるけど一本開けなきゃいけないから色々飲みたい時は不便なんだよね。
「すご……すごいね!」
リキュールの瓶ってそれだけで圧倒されるよね。 分かるなぁ。
「まずはご所望のコーヒーリキュールからにしようか」
「うん!」
「あ、その前にウコン飲んでおこう」
二人でウコンを飲みアルコールを楽しんだ。
灯里が飲みすぎて千鳥足になってしまったので泊まってもらった。
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