異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ

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第三章

227話目

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この日は国中の貴族が城へ集まっていた。



「これはこれはブリストウ伯爵、お久しぶりです」

「ソルレイユ伯爵お久しぶりです」

いつもより身なりを整えオリヴィアと共に登城する。

早めに到着したはずがすでにホールは人で溢れていた。
私たちが到着した事を示す名前が読み上げられると、それまで笑顔の仮面を張り付けて談笑していた貴族たちが一斉にこちらを向いた。

……これはこれは。

素知らぬ顔をしオリヴィアをエスコートする。

今日のオリヴィアはモスグリーンのドレスに薄手のショールを身にまとい、香りはあちらの世界で購入した香水を、化粧品もあちらで新調した物を使用している。 
ブルベ? と言われたオリヴィアは、その場で化粧品を色々試してもらい化粧品を一新した。
今までのただ塗りたくる化粧とは違い、肌に合っており艶めかしく美しい。 この場に居るどの貴婦人よりも綺麗だ。

そんなオリヴィアが声を掛けてきたソルレイユ伯爵に挨拶をした。
ソルレイユ伯爵は見惚れ、ソルレイユ夫人にひじ打ちされた。
我に返り動揺したのが見て取れた。

「これは失礼した。 オリヴィア夫人が美しくて見惚れてしまいました」

「ご冗談がお上手ですね」

ふふふ、と笑みを浮かべるオリヴィア。

「オリヴィア様は一段とお美しくなられましたね、何か秘訣でもございますの?」

ソルレイユ伯爵夫人がそうオリヴィアに尋ねる。
周りにいるご婦人方もどうやら気になっているようだ。

「いえ……お褒め頂き光栄ですわ。 メイドが腕を上げたせいかしら」

上品に扇子で口元を覆いながらオリヴィアはそう言い、ソルレイユ伯爵夫人の言葉を流した。
いくつか言葉の応酬を繰り返し、ついにソルレイユ伯爵が本題を切り出した。

「そう言えば、ブリストウ伯爵は今回の陛下から頂いた手紙の件何かご存知ですか?」

「陛下からの手紙の件ですか?」

周りにいる者達の耳が大きくなるのが分かる。
所在についてまだ突き止めていない者も多いのだろう。

「はい、渡り人の保護など今までに前例が無いものでして……渡り人が良く集まるブリストウ伯爵でしたら何か存じ上げませんか?」

「渡り人は確かに多いですが……お恥ずかしながらすべてを把握しているわけではないので存じ上げません」

「そうですか」

私の発言を聞いて歩みを戻す者もいた。


そして陛下の到着が知らされ皆が一斉に頭を垂れた。

陛下からは渡り人の魔力の回復について告げられ、手出しを禁ずる旨通達された。

それまで陛下の発言を静かに聞いていた貴族たちは事の大きさに次第にざわめきが大きくなった。
陛下の発言を疑う者、興奮して保護を息巻く者、不敬にも陛下に質問を投げかける者。

そして保護者として私が指名され、嫉妬の視線にさらされることになった。

「アルフォート卿」

「ヴァンドーム公爵、お久しぶりに存じます」

「橋沼桜の保護を譲れ、貴公には荷が勝ちすぎておる。 わしの所で預かろう」

このタイミングで登場するとは。
陛下がそこにおられるのだぞ? 何考えてるんだヴァンドーム公爵は。

陛下からヴァンドーム公爵の件で手紙が来ていたので何かしら接触はあると思っていた。
話の前なのか、終わってからかは分からないが。

でもまさか陛下が話をされてすぐだとは思ってなかった。
というかヴァンドーム公爵自体は気づいておられるのか? 
陛下の決定を反故すると言う事は反逆の意志があると捉えられるぞこれは。

別のことで内心冷や汗が出た。

遠巻きに見ている貴族たちも陛下の出方を伺っているようだ。

「ヴァンドーム公爵」

そんな時、ヴァンドーム公爵の後ろから声がかかった。
……この声は……。

「今は取り込み中故後にしてくれ」

振り向くことなく追い払おうとする公爵。
その対応はまずいぞ。

「ヴァンドーム公爵!!!!」

「なんだ……兄上?!」

凄みのある笑顔を浮かべたベルゲマン公爵が騎士を引き連れその場に居た。

「ブリストウ伯爵、ヴァンドーム公爵、ここは人が多い。 こちらへ来てもらおう」

騎士に囲まれるヴァンドーム公爵。
ベルゲマン公爵が先導する形で騒がしいホールからお暇することになった。
オリヴィアは休憩室に案内してもらい、私はそのまま公爵達について行く。

騎士達も下がらせ人払いを済ませる。


「……ブルクハルト卿、処分は免れぬぞ」

「処分とは何のことでしょう? 私は分不相応な場所に陛下が保護する者を置いておけぬと思ったまでです」

「それが分不相応だと分からぬか」

凄みのある声でヴァンドーム公爵をしかりつけるベルゲマン公爵。
私まで肝が冷えるようだ。


「貴様はあの衆人観衆の中で陛下の決定に異を唱えたのだぞ。 その場で反逆者として捉えられてもおかしくない……恥を知れ!!!!」

「ですが……!! 何故伯爵家なのですか。 公爵家ではダメな理由を教えてください」

「くどい。 ……処分は追って陛下から言い渡されるだろう。 決して軽いものだと思わぬように。 ブリストウ辺境伯には申し訳ないことをした。 愚弟がすまぬ」

「なぜ兄上が伯爵に頭を下げるのです!! 止めてください!!!!

「黙れ!!!! ブリストウ辺境伯、愚弟はこちらで預かる故今日の所はお引き取りを」

「かしこまりました」

ベルゲマン公爵に頭を下げられ肝が冷えっぱなしになる。
下がる許可を得られたのだ早々に館に帰ろう。
どうせホールに戻っても疲れるだけだ。

そう思い、休憩室に居るオリヴィアを迎えに行くとそのまま王都の館に帰ることにした。


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