高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。

マーチ・メイ

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第一章 始まり

1話目 突然の声

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〝職業【錬金術師】 になりました〟



「え?」

季節は春、時間は夕方、日が暮れ始める頃。
始業式から数日経った高校からの帰り道、珍しく部活がお休みだった友人たちと一緒に帰り、駅で別れ、家までもうすぐと言う場所でそれは頭の中に響いた。

私、橘優奈たちばなゆうなは誰かに言われたものだと勘違いして、辺りを見渡した。
けれども都心から、さらには県庁所在地から離れた町で暮らす私の周りには人っ子一人居なかった。

気のせいかと小首を傾げつつ家まで辿り着くと、鞄から鍵を取り出し扉を開け中に入った。

私の両親は共働きで帰宅時間には居ない。 
他の家族は姉が一人。
その姉は今は家から遠い大学に通うため、一人暮らしをして家を出ている。
その代わりに優奈を出迎える者がいた。

「ニャー」

「シロ、ただいま」

足にすり寄るふわっとした毛並みの白い猫。 
見た目はノルウェージャンフォレストキャット並みにでかくモフモフしているがれっきとした雑種だ。

家の軒下で生まれた子猫で兄弟は4匹、親猫含め近くの家でバラバラに引き取られていった。
その中で一番小さくか弱そうだったせいか残ったのが〝シロ〟 だ。 毛並みが白かったからしろ。 安直な名前だ。
今では小さい頃の面影は毛色くらい。
人見知りもせず、よく食べよく寝る子で病気に罹ったことなど無い健康優良児だ。

「よーしよしよし、良い子だね。 今ご飯用意するよ」

リビングを横切りキッチンへ向かう。
戸棚にしまってある買い置きのレトルトパウチを一つ取り出し、シロ専用の小皿にあける。

がっつくシロを横目にさっきの声を思い出す。

「確か錬金術だったっけ? なんだったんだろう。 あれかな? ステータスオープンとか言ったら出るのかな? ステータスオープン。 ……なんちゃって」

そう言うと目の前に半透明のタブレットサイズのディスプレイが表示された。

「えっ? なにこれ? って、いったあーい!!」

触ろうとしたらすり抜けた。
触れるものだと思ってたから体制を崩し転んでしまった。

転んだ私にびっくりしたのかご飯の最中だったシロは逃げてしまった。

「あぁ、シロごめんね」

私は逃げたシロを追いかけるでもなく目の前に表示されているディスプレイに釘付けになった。


ステータス
MP30/30
※他のステータスはロックされてます。

【名前】  橘優奈 
【職業】 錬金術師
【スキル】 作製、分解、鑑定、適応、精錬、抽出、上位交換、下位交換


「なに……これ」

ツンツンと指でつつこうとしてみたがすり抜ける。

「錬金術師? スキル? なにこれ使えるの?」
 
しばし画面と睨めっこをする。 こう言う場合見てると使い方が出てきそう。
だけれどもその思惑は外れたみたい。
何も出てこない。 時間だけが過ぎていった。

「……今出来そうなのは鑑定かな? 他のは部屋の中でやったら危ないよね」

どれにしようかなとキッチンを見渡し近くにあった椅子に目が止まった。

「よし、椅子を鑑定してみよう。 鑑定」

―鑑定に失敗しました―

失敗!? 

「使えた……けど失敗するの? 鑑定!!」

次はお皿に向けて鑑定を唱えた。

―鑑定に失敗しました―

「また失敗?」

どうやったら成功するんだろう。
そう思いキッチンにある物を片っ端から鑑定していった。

「全部失敗ってなんで? レベルとかあるの? 表示ないけど」

むむむ、と首輪捻り蛇口に向かって鑑定を唱えた。

―MPが足りません。 スキルを実行できません―

「え?」

ステータスを見るとさっきまでMP30となっていた部分が0となっていた。

「MP使うの? 無くなったらスキル使えないの? 回復……回復方法ってなにー?!」

その場で地面にへたり込む。
せっかく面白そうなことが出来そうなのに進展もないまま使い切ってしまった。
無いものはない。 気持ちを切り替えて、しょうがないので夜ご飯の準備をすることにした。

「ただいま。 シロお出迎えありがとう、んーいい香り、優奈もご飯ありがとう」

「お母さんお帰りー」

時刻は19時を過ぎたところ。
リビングでテレビを流し見しつつステータス画面を見ていた。
MPがいつ回復するのか気になった為だ。
というのも夜ご飯の準備が終わっても、お風呂に入っても回復しなかった。
と言うことは回復は時間経過じゃ無い?
アイテムが必要なの?
アイテムって何さ。 薬?

スマホでSNSでステータス出たと検索しても、よく分からない流行りのゲームのステータスや、人間としてのステータスとかよく分からないものばかりで、求めている情報は出てこなかった。
ネットにアップしようとしても写真に撮ることもできなかった。

「眉間に皺寄ってるわよ、若いうちからそんな皺作ってどうするの」

玄関からリビングにやって来た母にそう言われた。 私だって好きで皺を寄せているんじゃない。

「これの回復方法が分からなくて……」

「これ? スマホ? 充電器に挿せばいいでしょ」

「違うよーこれ……見えてないの?」

「スマホでしょ?」

会話が噛み合わない。
お互い顔を見合わせ首を傾げる。

こんなにはっきりと見えてるのに?
私しか見えてない?

「……うん、スマホ充電してくる」

自室に戻りスマホを充電器に挿しベッドにダイブする。

「……ステータス」

そう呟くと目の前に現れる。

「やっぱりあるよね」

むー、と両手で髪をぐしゃぐしゃとかき乱す。

「分からん!! 寝る!!」

起きたら何か変わるかもと、この日は早めに寝ることにした。

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