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第三章 進路とダンジョン攻略
45話目 姉の気持ち
しおりを挟む「欧州でもクリアかぁ……」
勉強に飽きてゴロゴロとベッドの上でスマホを弄る。
続々とダンジョンクリアの報告が上がっている。
アメリカではすでに6個、欧州では各国でばらつきがある物の1~3個、アジアや中東でもクリアの報告が上がって来てるみたい。
ネットでは発見されたアイテムまとめなる物も出ていた。
気になるのは公式発表されていない国。
特に小国になるとダンジョンを管理しきれない国もあるみたいだ。
だってオークション情報なる物もまとめられていてその中には下級回復薬や魔道具なんかも高額で出品されていた。
動画もアップされている。
その動画は一部にモザイクがかかっており、どうやら腕を怪我させて下級回復薬をかけて治す動画みたいだ。
「なになに……下級回復薬が1本1000米ドルから……? えっと……? 日本円で10万越え?! しかも値段上がっていってる!!」
かすり傷程度を治す薬なのに?!
うひゃーと思いながら下級回復薬を仕舞っているカラーボックスに視線を向ける。
あれを売ったら100万以上……。
思わず喉が鳴る。
私も売ったら儲かるのかな、とかそんなことを考えていたら、オークション記事のその下の記事を読んで我に返った。
そこにはダンジョン出現以降治安の悪化が懸念と書かれていた。
現地の人と治安当局との間でダンジョンを巡る争いが勃発、別の場所では地元マフィアがダンジョンマフィアとして君臨しているのが問題視され……と記載されていた。
私も見つかったら酷使されちゃう? 日本でも起こりうる話? ヤクザ絡みになっちゃう?
お姉ちゃんもそれ懸念して販売するなって言ったのかな?
……内緒にしておこう。
ネット販売する気は失せてしまった。
「じゃあ行ってくるね」
「遥気をつけてね」
「……行ってらっしゃい」
今日はお姉ちゃんが初めてダンジョンに潜る日だ。
朝7時に母と一緒に見送った。
あれから姉とは会話らしい会話をしていない。
私の方が意地になってしまいなんとなく気まずくなってしまった。
姉を見送るとリビングでテレビをぼんやりと眺める。
今日は報道各社がどこも張り切ってダンジョン特集を組んでいる。
既に潜るダンジョンの前から中継してる局もあった。
「優奈どうしたの? 元気ないわね」
「……お母さん」
ぼんやりとテレビを眺めていたらコーヒーの入ったコップを片手に母がリビングへやって来た。
「隣良いかしら?」
「……うん」
二人で並んでテレビを見る。
「凄いカメラの数ね。 遥また有名になっちゃうわね」
「……そうだね」
お姉ちゃんはどんどん遠いところに行ってしまうなぁ……。
盛り上がるリポーター達とは裏腹に気分が落ち込んでいった。
「……優奈もダンジョンに行きたいの?」
「……え?」
テレビを見ながら母が話しかける。
そう言われ母の方を見るが、表情はいつもと変わりない。
「違った? だって遥がテレビに出始めてからよね? 優奈が空元気になったり、落ち込んだりしたのって」
「……」
それに答えずテレビの方を向いた。
そう言われると姉が有名になって嫉妬しているみたいだ。 ……そうなんだよね。
そうなんだけど、私が思ってる事と少し違って、でもなんて言っていいか分からなくてだんまりを続けた。
「お姉ちゃんはお姉ちゃんなりに優奈に良いとこ見せたいだけよ? カッコつけさせてあげてね」
「……え?」
「ほら、優奈はお姉ちゃんと違って料理も上手だし、きちんと片付けするし、おおらかだし、お姉ちゃん優奈に甘えてるの分かる?」
「だってお姉ちゃん私なんかより頭良いし、皆に好かれるし、行動力あるし、頼られるじゃない」
「二人とも無い物ねだりねぇ。 優奈はお姉ちゃんのそんなところが羨ましいのね。 反対にお姉ちゃんは優奈のそんなところが羨ましいのよ?」
「……だっていっつも注意されるよ?」
「お姉ちゃんだもん。 優奈に危険な目にあってほしくないのよ」
「ならお姉ちゃんがダンジョンに入ったのって……?」
「その理由は分からないわ、ただ一つ言えることは、お姉ちゃん優奈に対してかなり過保護よ」
そう言って母は優しく私に笑いかけた。
「……お母さんはなんで反対しなかったの?」
私がそう聞くと母が私の両腕を掴んだ。
「……お父さんの子供だもん。
……だいたいお父さんが何も対策してないわけないじゃない。 あなたたちが持ってるお守り、それ全部お父さんの手作りよ。 何かあったら守ってくれるわ。 必ずね、私が保証する」
そう言った母は何故か凄く迫力があった。 何があったんだろう。
「じゃなかったら即決できなかったわ」
深くため息をつく母。
母は母でなにやら葛藤があったみたいだ。
母から話を聞いて意固地になっていた自分をかえりみて反省した。
あんなに訓練頑張っている姉に対してするべき態度じゃなかった。
いつも嫌な顔せずに手伝ってくれて、共感してくれて、守ってくれてるのに……。
姉がダンジョンから戻ってきたら謝ろうと、そう思った。
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