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第四章 それぞれの生活

111話目 話し合い(物理)

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「優奈の姉カ?」

「……羽の付いた魔族」

気の抜けた声でミーリアが姉に問う。

姉は私を背にかばいミーリア達を睨み付けたままだ。

「遥……ちょっと落ち着け」

「お父さんは!!!! 黙って!!!!」

姉を宥めようとした父は逆に姉に怒鳴られた。

「……っ」

「……私の質問に答えて。 お父さんは敵?」

低く唸るような声でそう父に問いかける姉。
父はそんな姉の剣幕に圧され答えに窮しているようだ。

「優介、彼女は?」

姉の質問をぶった切るのはメルディスさん。

メルディスさんにとっても姉は突然乱入してきた人物に他ならない。

「敵ね。 ……よく分かったわ」

姉がそう吐き捨てると睨みあいを止めて父に向って飛びかかった。

「っ遥、落ち着け!!」

姉の拳が父の顔面目掛け飛んでいく。

父はそれを避ける。

避けて体勢を崩したところを狙って今度はお腹に向かって蹴りを繰り出す姉。
父はそれを腕で力を外へと受け流す。

遠心力を使い受け流された足を地面に着けると軸足としさらに回転を加えて冗談回し蹴りを繰り出す姉。

父は防戦一方だ。

しばらく姉と父の攻防が繰り広げられた。

「捕縛」

「なっ!?」

が、メルディスさんの魔法で姉が捕らえられて戦いに終止符が打たれた。

「放せ!!」

「お姉ちゃん」



「ぶん殴らせろこのくそ親父ぃいいい!!!!」

怒り心頭の姉は強制的に動きを止められてもなお父に飛びかかろうともがいていた。


「話を聞ける状態ではないので落ち着かせますね」

そう言ってメルディスさんは姉に近づくと額に手を置こうとする。
姉はそれを避けようともがくが拘束された身では大した抵抗も出来なかった。

額に手が触れるとそれまで暴れていた姉の目がゆっくりとトロンとし動きが遅くなりそして瞼が落ちた。

「メルディスさん!? お姉ちゃん?!」

メルディスさんは眠った姉をそっと床に寝かせた。

「お姉ちゃんに何したんですか?!」

「眠ってもらいました。 だいぶ疲労も貯まっていたようなので」

穏やかな声色でそう告げるメルディスさん。
そう言われて姉に視線を向ける。
確かに目の下には隈が出来ていた。

「優介、巻き込んで申し訳なかったですね」

「……俺がしたいようにしただけだ」

「そのせいで家族が辛い目にあったではありませんか」

「……っそれ……でもだ」

時折メルディスさんと父の会話についていけない。
もうちょっと説明してくれてもいいと思う。
二人の世界に浸ってて私には分からないよ。


そう思ってはいるものの中々口に出せずにいる。

「まずはお姉ちゃんが起きたらお父さんは謝ってよね。 心配かけたんだから!!」

まず一番にしなければいけないのはそれだと思う。
こんな状態になるまで追い詰めたんだから。
というかさっき避けまくったけどぶん殴られても文句言えないと思うよ。

お姉ちゃんが起きたら一度ぶん殴られた方が良いよ。

「本当に……こんなに心配かけたんだから」

そう言って眠る姉の頭をゆるやかに撫でた。

夜も寝れないぐらい追い詰められていたんだと思う。
私が姉の立場だったら……、突然姉が消えたら同じように探しまくったと思う。

「悪かった……」

「私じゃなくてお姉ちゃんとお母さんに謝って!!」

しょんぼりと落ち込む父に追い打ちをかけておいた。


姉と母が眠るリビングで話し合いは続行された。
席順は私とメルディスさんが隣同士に座りメルディスさんの目の前の席に父が座る形だ。

「ここまで影響が出るとは思いませんでしたね」

「元々魔力を持たないからな……」

「メルディスさん。 魔法でババッと魔力集められないんですか?」

これだけ体調不良になる人が大勢いるんだ。
その人たちが不要な魔力を貰えたら魔王様達の回復に役立つんじゃなかろうか!!

我ながらナイスアイディアと言わんばかりに期待した目でメルディスさんを見る。


「……流石に無理です」

「ならお父さんは?」

「無理だ」

にべもなく切り捨てられた。

「じゃあどうすんの? どうやってこの病……病なの? これ。 まぁいいか、病どうするの?」

「一人一人吸い出すか排出させるしかすべはない」

「ですがダンジョンや人から魔力が溢れ出ている現状ではすぐにまた元通りになってしまいますね」


「それを防ぐすべか……」

「お母さんに渡した指輪は? あれ量産できないの? 私のスキルで作れないの?」

「作れるには作れるが……」

「どうやって配るかですね……」

「今こうしている間にも病状は悪化しているからな……」


ミーリアは話に入れずに家の中をウロウロしていた。

話の落としどころが見当たらずに3人であーだこーだと話をしていたら……


「……お母さんが倒れたのもあんたたちのせいなのね」

眠っていた姉が目を覚ました。

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