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第四章 それぞれの生活
113話目 面会
しおりを挟む「最初に優奈のこと知って、かつ私が助けを求めた時まで口外しなかったから……。 そもそもこんなことにならなきゃ良かったんだからね」
姉が気まずそうに顔を伏せる。
こんなことにならなきゃ錬金術なんて使えなかったから私は同意もできずに口をつぐんだ。
だって錬金術楽しいんだもん!!
「話は戻るけど……まず話してなかったけど……私は優奈の錬金術とスキルを亘理さんに報告した。 証拠として薬の類を提出したわ。 優奈、勝手に動いてごめんなさい」
姉はそう暴露し私に向かって頭を下げた。
「うえ?! 薬って……あれ? 回復薬の類? どこまで?」
「優奈の部屋にしまってあった怪我、病気、解毒全部」
「うっそお?!」
だから部屋が荒らされてたのか!!
原因がわかり、ふむと納得した。
「……その結果を伺ってもよろしいでしょうか?」
メルディスさんが姉に話の続きを促す。
「前政権が総辞職に追い込まれ新政権が樹立した」
「政権……? 王が倒されたということでしょうか?」
「王ではなく…‥なんて言えばいいのかな。 国の中枢は国民によって選ばれるの。 だからこの国では政を行うのはそちらの世界だと平民って言うのかな」
「平民が政を?」
メルディスさんがこちらの価値観を擦り合わせようとしている間ミーリアは私のスマホに興味津々だった。
こっちは考えることはやめたみたい。
「なら今の政府は私のスキルを知ってるってこと?」
「……そうなるわ」
「私大々的に探されてる?」
「……私のところに来た情報だと、まず行方不明届けを警察に出して行方不明の女子高生として探されたわ。 それでも情報が集まらなかった。 それで国として重要人物として探してもらえるようにスキルを開示し、証拠物……薬を提出した」
「その結果前政権の総辞職」
私の言葉に姉が頷く。
怖っ……。
「正しくは優奈を利用しようとした人達が排除された、というのが私の認識よ。 亘理さんはその過程で内閣入りしたわ」
「亘理さん大臣になったの?! すごい出世したね!!」
「……喜ぶとこそこ?」
私の情報でそこまで出世できるなんて凄いね。
「魔族領で引き続き保護した方が宜しいのではないでしょうか?」
私が喜んでいるとメルディスさんと姉がなんとも言えない表情で見つめてきた。
「優奈の情報を勝手に開示した私を怒るべきよ優奈は……」
「だってそれは仕方がなくない? お父さんが連絡取らせてくれなかったし……お姉ちゃんは他に手段無いって。 全てはお父さんが悪い」
「貴女の人生がかかってるのよ?!」
「お姉ちゃん」
自分を責めるように言う姉。
その姿を見て私は責めることはできなかった。
「私がもう良いって言ってるの。 お姉ちゃんはよく頑張ったよ。 はい、これからのことを考えよう。 ね?」
「……優奈~!!」
姉がガバッと私に抱きついてきた。
頭をよしよしと撫でる。
そして羨ましそうに見ている父に向かってふんと鼻を鳴らし軽く睨みを入れた。
父は苦虫を噛み潰したような顔をした。
これくらいの対応をしてもいいはずだ、なんて言ったってお姉ちゃんをここまで追い詰めたんだからね!!
「話は戻しますが入閣というのはどういうことでしょうか?」
私と姉のやりとりを見ても動じないメルディスさん。
「政の主要人物の仲間入りをしたってことよ。 そっちでいうとこの……内政の……なんだろ宰相の下くらいかしら? もっと下? どうだろ。 ダンジョン関係で内閣府特命大臣で……新設されたダンジョンに関する……ダンジョン対策本部だったはず」
「なるほど」
自分の情報に当てはめて馴染ませていくメルディスさん。
渋々私から離れてメルディスさんに向き合う姉。
「その方と会うことは可能でしょうか?」
「アポイントを取ってみるわ。 忙しい人だから会えるか分からないけど」
「アポ……?」
「……面会予約かしら?」
「お願いします。 それから出来れば私は姿を隠して行きます。 私の方でも少し見極めさせてください」
そしてそれからは亘理さんに話す内容を決めていった。
亘理さんとのアポが取れたのはこの話から一週間後だった。
「三波さん……」
指定された場所は三波さんが入院している病院。
三波さんの部屋は個室になっており広々している。
枕元には他の見舞客が置いていった花が飾られていた。
「この人が先日言っていた魔力中毒の患者でしょうか」
「うん」
「これくらいならすぐ良くなりますね、安心して下さい下さい」
メルディスさんは姿を隠して私のそばにいる。
魔法が得意なだけあって誰も気づいていない。
この場にいるのは眠っている三波さんと私とメルディスさんのみ。
優奈達は家にいる。
血の気の失せた顔で眠っている三波さんは少し前の母のようで、見ていて胸の辺りが苦しくなる。
コンコン。
不意にドアがノックされる。
ドアが開き現れた人物はスーツに身を包んだ亘理さんだった。
その手にはお見舞い用の花束があった。
「遅れたか? 久しぶりだな」
「いえ、私も今きたところです」
「言語翻訳、静寂」
頭をそっと下げる。
久しぶりに見た亘理さんは少しやつれたようだ。
どうやらすごく多忙らしい。
だが身なりはきちんとしている、忙しい時でさえ清潔感は大事にしているようだ。
「先に花瓶にさしてもいいか?」
「はい」
そういうと亘理さんは花束の包み紙を解き、空いている花瓶へと差し水を入れた。
包み紙は丁寧に畳んでゴミ箱へと入れた。
「それで話とは? すまないが優奈君のことはまだ分からないんだ」
私からのアポと聞いてその事が頭に浮かんだらしい。
ずっと気にかけてくれていたことに感謝する。
「いえ、話はそのことではありません。 それよりも亘理さんもお忙しいようですね」
「違うのかい? まあ、新設された部署だからやる事が山積みさ。 本格始動まで地ならしが大変だ」
「この……三波さんの症状もその一つですか?」
「……あぁ、橘君の母君もか」
私の言葉で何かを察した亘理さんが聞き返す。
「はい、ただ母は治りました」
さもなんとも無い感じでサラッと話す。
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