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異動(ディビット視点)
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ミュスカさんがヴォルフガング辺境伯と結婚をしてしまう。
レスター・ヴォルフガング辺境伯は社交界でも、女性に愛想もない冷酷な辺境伯だと有名だった。
そんなヤツがミュスカさんと結婚するなんて……!
ミュスカさんは聖女の力も認められて、筆頭聖女にもなったし、ヴォルフガング辺境伯はミュスカさんを利用するつもりなのでは!?
ミュスカさんがヴォルフガング辺境伯に冷たくあしらわれると思うと、居たたまれなくなる!
あの口付けは二人の気の迷いで、本当は愛し合ってないかもしれない!
「ミュスカさんを助け出さなくては! 俺が結婚式を止めなくてはミュスカさんが不幸になってしまう!」
「……何を言っているんだ? お前は?」
「ミュスカさんを結婚式から連れ出します!」
「これ以上バカなことをするなよ!」
「バカとは何だ!? バカとは!? ……ハッ、
だ、団長……? いつの間に……」
「ノックしても反応がないから、部屋に入ってみたら……何をおかしなことを言っているのだ……!」
ミュスカさんのことばかり考えていて、団長が来たことに全く気が付かなかった。
「……ディビット、ミュスカ様は筆頭聖女になられて、ヴォルフガング辺境伯の奥方になられるのだ。二人は誰が見てもお似合いで、領民からも祝福されている。お前が出る幕はないぞ……」
「そ、そうでしょうか?」
「ハリーからも、ハッキリとお前はフラレたと聞いたぞ?」
くっ! 思い出しただけで胸が苦しい!
「私はレスター様が……」と言われた時は奈落の底に落ちそうだった。
「……それと、お前の異動願いだが、異動はさせてやる。その話を伝えに来たのだ」
「ほ、本当に! では、俺はスノーブルグの教会の聖堂騎士団に異動になりましたか!」
そうだ!
俺はミュスカさんの騎士になろうと、新しく建設中のスノーブルグの聖堂騎士団に異動願いを出したんだ!
謹慎が終わればすぐに、ミュスカさんのところに行きますからね!
「……異動は異動でもスノーブルグではない」
「……え? では、どこに?」
「大聖堂の塔の警備につけ。シャーロット・バクスターが幽閉されている塔の警備につくのだ」
「えぇっー!? 何故俺がシャーロット・バクスターの!?」
「異動したかったのだろう?」
「スノーブルグのミュスカさんのところにです!」
「スノーブルグの人員は既に決まっているからな。シャーロット・バクスターの警備でいいだろう? 大聖堂勤務になるぞ?」
「あの! シャーロット・バクスターですよ!」
「お似合いじゃないか。大聖女様からも許可がでているしな」
何がお似合いだ!
あんな女の警備なんて嫌だ!
やはり、ミュスカさんを結婚式から華麗に拐って行くしかない!
「ミュスカさんの結婚式はいつですか!?」
「……結婚式に行きたいのか?」
「勿論行きます!」
「では、騎士団の者を付けよう。そのまま、お前は大聖堂に異動していいぞ」
「えっ……大聖堂に異動は決定ですか?」
「さっき大聖堂の塔の警備につけと、伝えただろう」
「し、しかし、ミュスカさんに会わずに大聖堂に行くなんて!」
「だから、結婚式には騎士団の者を付けるから、見るだけ見ればいいだろう?」
「くっ……!」
何だか、ミュスカさんと引き離されている気がする。
シャーロット・バクスターの企みのせいで!
そして、ミュスカさんの結婚式当日。
何故だか、同僚の聖堂騎士にぐるぐるに縛られてしまっている。
「何をする!?」
「団長からの指示だ」
「ミュスカさんの姿を見るだけだぞ!」
「お前は思い込みが激しいからな。どこで火がつくかわからん!」
こんな姿では、何も出来ないではないか!?
縛られたまま教会の人だかりに連れて行かれるが、皆がミュスカさんとヴォルフガング辺境伯の結婚式に興奮し、俺の縛られている姿に不審に思わない!
縛られているコスプレでもしていると思われているのか!?
そんな時に、ミュスカさんの乗った馬車が教会に着いた。
結婚式使用に飾られた馬車から、降りてきたミュスカさんは、真っ白のウェディングドレスが神々しかった。
あぁ、あれがヴォルフガング辺境伯のものになるとは……。
気がつけば、ミュスカさんの名前を必死に叫んでいた。
しかし、ミュスカさんは俺に気付かない。
「ディビット……失恋したのだから、諦めろ。男は諦めが肝心だぞ」
「あんなに叫んだのに、ミュスカさんは気付かなかったな……」
「どうでもいいからじゃないか? 叫んだのがヴォルフガング辺境伯なら、駆け寄ると思うぞ」
「……そうなのか?」
「そうだろ」
どうでもいい……。
好きでもなく、嫌いでもない。
………どうでもいい! だと!
「それって、嫌いよりも不味いんじゃないか!?」
「まぁ……記憶にも残らんだろうな」
「記憶に残らない!」
あぁ、ミュスカさん。
あなたにとって、俺は道端の石ころと同じなんですね?
縛られたまま膝をつき、項垂れてしまうと、紐を持っている聖堂騎士が、早く行くぞ! と、紐を容赦なく引っ張る。
このまま、俺は大聖堂の塔の警備につくことになる。
もう、ミュスカさんはいない。
……大聖堂?
それって、出世じゃないのか?
「大聖堂勤務なら、出世か!?」
「違うだろ!!」
「この失恋を癒すには仕事しかない! すぐに、大聖堂に行くぞ!」
「……行く気になってくれて良かったよ」
そして、俺は出世コースを求め、大聖堂へと向かった。
レスター・ヴォルフガング辺境伯は社交界でも、女性に愛想もない冷酷な辺境伯だと有名だった。
そんなヤツがミュスカさんと結婚するなんて……!
ミュスカさんは聖女の力も認められて、筆頭聖女にもなったし、ヴォルフガング辺境伯はミュスカさんを利用するつもりなのでは!?
ミュスカさんがヴォルフガング辺境伯に冷たくあしらわれると思うと、居たたまれなくなる!
あの口付けは二人の気の迷いで、本当は愛し合ってないかもしれない!
「ミュスカさんを助け出さなくては! 俺が結婚式を止めなくてはミュスカさんが不幸になってしまう!」
「……何を言っているんだ? お前は?」
「ミュスカさんを結婚式から連れ出します!」
「これ以上バカなことをするなよ!」
「バカとは何だ!? バカとは!? ……ハッ、
だ、団長……? いつの間に……」
「ノックしても反応がないから、部屋に入ってみたら……何をおかしなことを言っているのだ……!」
ミュスカさんのことばかり考えていて、団長が来たことに全く気が付かなかった。
「……ディビット、ミュスカ様は筆頭聖女になられて、ヴォルフガング辺境伯の奥方になられるのだ。二人は誰が見てもお似合いで、領民からも祝福されている。お前が出る幕はないぞ……」
「そ、そうでしょうか?」
「ハリーからも、ハッキリとお前はフラレたと聞いたぞ?」
くっ! 思い出しただけで胸が苦しい!
「私はレスター様が……」と言われた時は奈落の底に落ちそうだった。
「……それと、お前の異動願いだが、異動はさせてやる。その話を伝えに来たのだ」
「ほ、本当に! では、俺はスノーブルグの教会の聖堂騎士団に異動になりましたか!」
そうだ!
俺はミュスカさんの騎士になろうと、新しく建設中のスノーブルグの聖堂騎士団に異動願いを出したんだ!
謹慎が終わればすぐに、ミュスカさんのところに行きますからね!
「……異動は異動でもスノーブルグではない」
「……え? では、どこに?」
「大聖堂の塔の警備につけ。シャーロット・バクスターが幽閉されている塔の警備につくのだ」
「えぇっー!? 何故俺がシャーロット・バクスターの!?」
「異動したかったのだろう?」
「スノーブルグのミュスカさんのところにです!」
「スノーブルグの人員は既に決まっているからな。シャーロット・バクスターの警備でいいだろう? 大聖堂勤務になるぞ?」
「あの! シャーロット・バクスターですよ!」
「お似合いじゃないか。大聖女様からも許可がでているしな」
何がお似合いだ!
あんな女の警備なんて嫌だ!
やはり、ミュスカさんを結婚式から華麗に拐って行くしかない!
「ミュスカさんの結婚式はいつですか!?」
「……結婚式に行きたいのか?」
「勿論行きます!」
「では、騎士団の者を付けよう。そのまま、お前は大聖堂に異動していいぞ」
「えっ……大聖堂に異動は決定ですか?」
「さっき大聖堂の塔の警備につけと、伝えただろう」
「し、しかし、ミュスカさんに会わずに大聖堂に行くなんて!」
「だから、結婚式には騎士団の者を付けるから、見るだけ見ればいいだろう?」
「くっ……!」
何だか、ミュスカさんと引き離されている気がする。
シャーロット・バクスターの企みのせいで!
そして、ミュスカさんの結婚式当日。
何故だか、同僚の聖堂騎士にぐるぐるに縛られてしまっている。
「何をする!?」
「団長からの指示だ」
「ミュスカさんの姿を見るだけだぞ!」
「お前は思い込みが激しいからな。どこで火がつくかわからん!」
こんな姿では、何も出来ないではないか!?
縛られたまま教会の人だかりに連れて行かれるが、皆がミュスカさんとヴォルフガング辺境伯の結婚式に興奮し、俺の縛られている姿に不審に思わない!
縛られているコスプレでもしていると思われているのか!?
そんな時に、ミュスカさんの乗った馬車が教会に着いた。
結婚式使用に飾られた馬車から、降りてきたミュスカさんは、真っ白のウェディングドレスが神々しかった。
あぁ、あれがヴォルフガング辺境伯のものになるとは……。
気がつけば、ミュスカさんの名前を必死に叫んでいた。
しかし、ミュスカさんは俺に気付かない。
「ディビット……失恋したのだから、諦めろ。男は諦めが肝心だぞ」
「あんなに叫んだのに、ミュスカさんは気付かなかったな……」
「どうでもいいからじゃないか? 叫んだのがヴォルフガング辺境伯なら、駆け寄ると思うぞ」
「……そうなのか?」
「そうだろ」
どうでもいい……。
好きでもなく、嫌いでもない。
………どうでもいい! だと!
「それって、嫌いよりも不味いんじゃないか!?」
「まぁ……記憶にも残らんだろうな」
「記憶に残らない!」
あぁ、ミュスカさん。
あなたにとって、俺は道端の石ころと同じなんですね?
縛られたまま膝をつき、項垂れてしまうと、紐を持っている聖堂騎士が、早く行くぞ! と、紐を容赦なく引っ張る。
このまま、俺は大聖堂の塔の警備につくことになる。
もう、ミュスカさんはいない。
……大聖堂?
それって、出世じゃないのか?
「大聖堂勤務なら、出世か!?」
「違うだろ!!」
「この失恋を癒すには仕事しかない! すぐに、大聖堂に行くぞ!」
「……行く気になってくれて良かったよ」
そして、俺は出世コースを求め、大聖堂へと向かった。
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