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獣化の呪いの元凶は!!
聖獣様を抱っこしたままで部屋に帰り、今は聖獣様が食事をしていた。
大皿の上に何個か用意された骨付き肉やミルクを美味しそうに食べている。
「まだ子供なのに、よく食べますね」
何の警戒もなく、聖獣様が私の置いた大皿から骨付き肉を頬張っていた。
不思議と誰も近づけない聖獣様。あのヴォルフラム殿下でさえ、近づくと警戒して怒っていた。
……どうして私に懐いているのだろうかと、不思議だった。
ルチアに力を奪われていって、私は聖女じゃなくなっていった。
そして、出来損ないの聖女もどき。もしくは、欠陥品の聖女。不安定な力の私は、いつしかそう呼ばれていた。
思い出すと、胸に重いものが圧し掛かっていた。聖獣様が私の膝に乗り、骨付き肉を食べ始めているからかもしれない。
「くぅん」
あっという間にミルクも無くなっている。
「ヴォルフラム殿下は、まだ来ないですね……ミルクのおかわりを頂いてきましょうか……」
育ち盛りだから、よく食べるのだろう。
聖獣様を膝から降ろして立ち上がると、急に聖獣様が毛を逆なでだ。
「どうしましたか?」
「グゥ……」
すると、ノックの音がした。そっと扉を開けると、ヴォルフラム殿下が部屋に入ってきた。
「遅くなって悪かった……その……」
慣れない手つきで、ヴォルフラム殿下が私に両手いっぱいの青いバラを差し出してきた。
「アイスローズ……」
「セリアに贈りたい」
「これを私に……?」
アイスローズは城でしか作られてない。魔法で作られた、特別で貴重な青いバラだ。王族専用の庭園にしか、咲いてないのだ。だから、持ち出せるのも、王族だけで……。
「アイスローズの意味も知っているとは思うが……」
知っている。花言葉は『祝福』。王族は、好いた女性に求婚する時に贈るのだ。
「……ヴォルフラム殿下が、私が聖女のままでいられるように、かけあっていたと聞きました」
「聖女ではないと、セリアと結婚できないからな……聖女でなくても、結婚したいのは、セリアだけなんだ。だから、嫌われてでも、聖女を止めさせるわけにはいかなかった。すまない……俺が王太子候補をやめるべきだった」
「それはダメです。ヴォルフラム殿下は、王太子殿下に相応しい立派な方です」
ヴォルフラム殿下が、ずっと努力をしていたのを知っている。それを、なかったことにはできない。
ヴォルフラム殿下が、私を抱き寄せてそっと背後の扉を閉めた。
「聖女に戻したかったのも、ルチアに君の聖女の力を奪われたままにしたくなかった。俺の自分勝手だ」
「私がうかつだったのです。ブランディア伯爵邸の自分の部屋に魔法陣が展開されていることに気付かなくて……」
だから、妃教育だという名目で城の私の部屋に逃げていた。そのせいで、ブランディア伯爵邸に帰ってこない私にしびれを切らして、ルチアが聖女の力を完全に手に入れることができずに、バルコニーから突き落とした。
「そうだったのか……だが、もう大丈夫だ。ルチアは、閲覧禁止の区域への不法侵入と禁忌の書の無断使用、セリアを突き落とした罪も含めて、先ほど捕らえた。今頃ブレッドが牢屋へと送り込んでいる」
それで、私の部屋に来るのが遅くなったのだ。
「ルチアに突き落とされた時に、私を助けて下さったのは、聖獣様ではなくてヴォルフラム殿下だったのですね?」
「あの時は間に合わなかった。ルチアを張っていたのに、突然姿隠しの魔法で見失って……見つけた時には、セリアが突き落とされていた。手を伸ばしたのに届かなくて、俺も一緒に飛び降りたんだ。あのタイミングで獣化したのも予想外だった」
ヴォルフラム殿下の獣化が不安定だと言う。自分の意志で獣化するわけではないから、いつ大きな狼に変わるかも、そして、人間の姿に戻るかもわからないと言う。
「でも、誰が獣化の呪いを? ヴォルフラム殿下にかけることができるなんて、やり手ですね」
意外と隙のない殿下だった。魔法も使えるし、剣術の腕も一流だった。
「……そこにいる聖獣様だ」
「は?」
「だから、そこで寝ている聖獣様だ。ルチアと会い出してから、怒って俺に呪いをかけたんだ」
「聖獣様が!?」
「そうだ。セリアに懐いているのも、君だけが聖獣様の聖女だからだ、と思う。俺はそう確信している」
この聖獣様が?
そう思うと、驚いたと同時に、くすりと笑みが零れた。
「俺に懐かないのも、ヤキモチのような気がするし……笑うなよ」
「ふふっ、少しすっきりしました。聖獣様は、私のかわりにやり返していたんですね」
「俺が、セリアではなくルチアに近付いたからか? だが、あれは事情があってだな……」
「はい。わかってます」
「本当に?」
「はい」
そう返事をすると、ヴォルフラム殿下が真剣な眼差しで私の頬に手を添えた。
どきりとする。艶めいた雰囲気に、視線が交わる。
「好きだよ。セリア。どうか、結婚して欲しい。ずっと、好きなんだ」
「……はい」
ヴォルフラム殿下の顔が近づいてくると、そっと唇が重ねられた。
聖獣様は、何もかも見通していたように静かに眠っていた。
大皿の上に何個か用意された骨付き肉やミルクを美味しそうに食べている。
「まだ子供なのに、よく食べますね」
何の警戒もなく、聖獣様が私の置いた大皿から骨付き肉を頬張っていた。
不思議と誰も近づけない聖獣様。あのヴォルフラム殿下でさえ、近づくと警戒して怒っていた。
……どうして私に懐いているのだろうかと、不思議だった。
ルチアに力を奪われていって、私は聖女じゃなくなっていった。
そして、出来損ないの聖女もどき。もしくは、欠陥品の聖女。不安定な力の私は、いつしかそう呼ばれていた。
思い出すと、胸に重いものが圧し掛かっていた。聖獣様が私の膝に乗り、骨付き肉を食べ始めているからかもしれない。
「くぅん」
あっという間にミルクも無くなっている。
「ヴォルフラム殿下は、まだ来ないですね……ミルクのおかわりを頂いてきましょうか……」
育ち盛りだから、よく食べるのだろう。
聖獣様を膝から降ろして立ち上がると、急に聖獣様が毛を逆なでだ。
「どうしましたか?」
「グゥ……」
すると、ノックの音がした。そっと扉を開けると、ヴォルフラム殿下が部屋に入ってきた。
「遅くなって悪かった……その……」
慣れない手つきで、ヴォルフラム殿下が私に両手いっぱいの青いバラを差し出してきた。
「アイスローズ……」
「セリアに贈りたい」
「これを私に……?」
アイスローズは城でしか作られてない。魔法で作られた、特別で貴重な青いバラだ。王族専用の庭園にしか、咲いてないのだ。だから、持ち出せるのも、王族だけで……。
「アイスローズの意味も知っているとは思うが……」
知っている。花言葉は『祝福』。王族は、好いた女性に求婚する時に贈るのだ。
「……ヴォルフラム殿下が、私が聖女のままでいられるように、かけあっていたと聞きました」
「聖女ではないと、セリアと結婚できないからな……聖女でなくても、結婚したいのは、セリアだけなんだ。だから、嫌われてでも、聖女を止めさせるわけにはいかなかった。すまない……俺が王太子候補をやめるべきだった」
「それはダメです。ヴォルフラム殿下は、王太子殿下に相応しい立派な方です」
ヴォルフラム殿下が、ずっと努力をしていたのを知っている。それを、なかったことにはできない。
ヴォルフラム殿下が、私を抱き寄せてそっと背後の扉を閉めた。
「聖女に戻したかったのも、ルチアに君の聖女の力を奪われたままにしたくなかった。俺の自分勝手だ」
「私がうかつだったのです。ブランディア伯爵邸の自分の部屋に魔法陣が展開されていることに気付かなくて……」
だから、妃教育だという名目で城の私の部屋に逃げていた。そのせいで、ブランディア伯爵邸に帰ってこない私にしびれを切らして、ルチアが聖女の力を完全に手に入れることができずに、バルコニーから突き落とした。
「そうだったのか……だが、もう大丈夫だ。ルチアは、閲覧禁止の区域への不法侵入と禁忌の書の無断使用、セリアを突き落とした罪も含めて、先ほど捕らえた。今頃ブレッドが牢屋へと送り込んでいる」
それで、私の部屋に来るのが遅くなったのだ。
「ルチアに突き落とされた時に、私を助けて下さったのは、聖獣様ではなくてヴォルフラム殿下だったのですね?」
「あの時は間に合わなかった。ルチアを張っていたのに、突然姿隠しの魔法で見失って……見つけた時には、セリアが突き落とされていた。手を伸ばしたのに届かなくて、俺も一緒に飛び降りたんだ。あのタイミングで獣化したのも予想外だった」
ヴォルフラム殿下の獣化が不安定だと言う。自分の意志で獣化するわけではないから、いつ大きな狼に変わるかも、そして、人間の姿に戻るかもわからないと言う。
「でも、誰が獣化の呪いを? ヴォルフラム殿下にかけることができるなんて、やり手ですね」
意外と隙のない殿下だった。魔法も使えるし、剣術の腕も一流だった。
「……そこにいる聖獣様だ」
「は?」
「だから、そこで寝ている聖獣様だ。ルチアと会い出してから、怒って俺に呪いをかけたんだ」
「聖獣様が!?」
「そうだ。セリアに懐いているのも、君だけが聖獣様の聖女だからだ、と思う。俺はそう確信している」
この聖獣様が?
そう思うと、驚いたと同時に、くすりと笑みが零れた。
「俺に懐かないのも、ヤキモチのような気がするし……笑うなよ」
「ふふっ、少しすっきりしました。聖獣様は、私のかわりにやり返していたんですね」
「俺が、セリアではなくルチアに近付いたからか? だが、あれは事情があってだな……」
「はい。わかってます」
「本当に?」
「はい」
そう返事をすると、ヴォルフラム殿下が真剣な眼差しで私の頬に手を添えた。
どきりとする。艶めいた雰囲気に、視線が交わる。
「好きだよ。セリア。どうか、結婚して欲しい。ずっと、好きなんだ」
「……はい」
ヴォルフラム殿下の顔が近づいてくると、そっと唇が重ねられた。
聖獣様は、何もかも見通していたように静かに眠っていた。
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∧,,∧
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∑ (╯•ω•╰)
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