伯爵令嬢は狙われている

屋月 トム伽

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面倒臭い頼み

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クライスは、リヒトからの書類にサインをし、仕事を片付けていた。

(書類整理は丁寧出し、部屋の片付けが上手いな。ヒューゴの報告書通りグレンは優秀だな。)

クライスはてきぱきと動くグレンに好感を持っていた。

「グレン、仕事はどうだ?」
「楽しいですね。お給料が上がりましたので、このまま貯金すれば弟を学校にいかせられます。」

グレンは弟の為に必死で働いていた。

「リアとの結婚が終われば、フィナール邸に移るんだが、もし良ければ、グレンも一緒に来ないか?勿論弟も一緒だ。どうだ?」
「城には住まないのですか?」
「フィナール邸の方がリアとゆっくりできるからな。元々リアの生家だし。」

(この人一日中リアの事考えているな。その上仕事は出来るし。不思議な人だ。)

グレンは呆れているのか尊敬しているのかわからない気持ちになった。

「弟も一緒でいいのですか?」
「勿論構わない。フィナール領にも学校はあるし、セントラルの学校がいいならそちらに行けばいい。どこに行くにしても推薦状は書いてやるぞ。」
「こんなに良くして下さるなんて、いいのでしょうか?」
「なんだ?俺が雇っているのだから、出来る事はするぞ。」

(これで弟の将来は明るいものになる筈だ。) 

グレンは一生に一度のチャンスかもと思い、クライスの話を受け入れた。

その時、ドアのノックの音がし、リアが入ってきた。

「クライス、お邪魔していいですか?」

クライスは書類を放置し、すぐにリアに駆け寄った。

「どうした?困り事か?」
「お茶の差し入れにきました。リリー達とマドレーヌを焼いたんです。」

リアはバスケットをだし、後ろのリリーはお茶を持って部屋に入った。

「グレンも沢山食べてくださいね。こちらの袋には弟さんにどうぞ。」

グレンが持って帰れるように、キレイにラッピングした袋を渡した。

「リア、リリー、グレンも弟と一緒にフィナール邸に連れて行く。よろしく頼むな。」
「グレンも来られるんですか?嬉しいです。」
「リア様良かったですね!」

リアとリリーがキャアと喜んでいるとクライスが急に、明日フィナール邸を見に行こう、と言い出した。

「リリー、明日行くからケインに伝えてくれ。それと、マティスもすぐに呼んでくれ。」
「クライス、明日すぐは皆困りますよ。」
「二人で行くから困らない。」
「…二人だけですか?」
「嫌か?」
「急にどうしたのですか?」
「急にじゃない。前から行こうと思っていた。グレンが優秀だし留守しても大丈夫だ。」

グレンは苦笑いになっていた。

「ではリア様、すぐに支度に参りましょう!」
「えっ、もう戻るの?せっかく来たんですけど。」
「リア、今日は早く帰るからな。」

クライスとリリーの勢いに押され、足早に部屋に帰った。

夕食前にはクライスも早く帰って来て、マティスさんの持ってきた服を一緒に選んだ。

クライスは明日からの服をプレゼントしたかったらしい。

クライスはマティスに、内緒話をしていた。

「もうやだわー!クライス様ったら!」

マティスはクライスの胸をドンと叩き、赤くなっていた。

「大丈夫ですか?マティスさん!」
「大丈夫ですわ!しっかり準備させて頂きますわ!」
「準備?何の準備ですか?」

(クライスは何を言ったのかしら?)

「頼むぞ。」
「今晩には、ケインさんに箱でお渡ししますわ。」

マティスさんは照れながらもニコニコで帰った。

夕食は急遽、陛下に誘われクライスとドレスアップして行くと、他に招待客がいた。
どこかで見た顔だなと思ったら、グリアム伯爵とその息子パトリックだった。

どうやら、クライスがマルクの代わりを探しているのを、陛下から聞いて、パトリックを薦めたかったらしい。
代わりといってもマルクは辞めないが、グレンを雇ったのはまだ陛下も知らなかったようで、食事に誘ってくれたのだ。

「実はもう書類整理に人を雇ってしまったんです。」

クライスが言うと、グリアム伯爵は残念そうだが、息子も追加で勤められないか聞いてきた。

「俺のところはもう充分ですね。マルクも卒業したら、ずっといますし。他を当たられては?」

クライスは、うーん、といいながらも雇う気は全くなかった。

「息子可愛いさに少し甘やかしてしまったようでクライス様のところで勉強させたかったのですが。短期間でも無理でしょうか?」

お願いするグリアム伯爵に、クライスは、リヒトを見た。

(リヒトが雇えばいいのに、面倒臭くて断ったな。)

クライスはリヒトの笑顔を見て察した。

「クライス、グリアム伯爵はお困りじゃ、結婚までの短期間でも雇ってやれんか?」

陛下がグリアム伯爵に助け舟を出したが、クライスは、笑顔ながらムッとしたのがわかった。

「明日はリアと二人でフィナールに行きますから、お役にはたてないかと。」
「なら、帰ってから勤めたらよいの。」

クライスは陛下に余計なことを言うな、という雰囲気を出したが、陛下は気にしなかった。

「クライス様、帰ってからぜひお願いします。」

リアはグリアム伯爵は頑張るわね、と見ていた。
当のパトリックは、当たり前のように食事をしていた。

「わかりました。でも短期間ですよ。仕事は、今雇っているグレンと同じ事をしてもらいます。地味な仕事ですがいいですか?」

クライスはため息をつくように言った。
パトリックは、雇っているのはグレンと聞いて驚いていた。

「グレンて、まさかあのグレンですか?」
「パトリック、知っているのか?」

グリアム伯爵が、聞いてきたので演習で一緒だった事を話した。
知っている者がいるなら安心だ。とグリアム伯爵をほっとしたようだが、そんな雰囲気には見られなかった。

部屋に帰ると、クライスはため息をついていた。

「グリアム伯爵は人が良すぎるのと息子を甘やかしているので有名なんだ。伯爵はいい人なんだかな。」
「そうですね、パトリックは高慢な感じでした。」
「まあいい、明日はフィナールだ。二人でゆっくりしよう。」
「二人だけの旅ですね、楽しみです。」

パトリックのことはとりあえず置いて、二人は明日を楽しみに眠りについた。

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