君だけの理解者になりたい

ラリックマ

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彼と彼女の過去……

第44話夏休みの宿題……

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 楽しい時間というものはすぐ過ぎ去っていくものだ……。
 時間軸的には経っている時間というものは全く一緒のはずなのに、感覚的には全く違う……。
 時間を意識したときや、新しいことや新鮮なことをした時は時間というのは遅く過ぎていってしまう……。
 すべての物事が楽しければ、体感的に人生が十年ぐらいで終わる気がする……。
 そんなどうでもいいことを考えてしまうのは、今目の前にある夏休みの宿題とかいう俺の夏休みに侵入してくる異物いぶつのせいだ。
 夏休みが終わるまであと一日しかないのに、どうして今までやってこなかったんだろう……。
 そんなことを毎年思っているが、結局最後になるまで毎年やらない……。
 
「はぁ……」

 かれこれニ十分近く問題とにらめっこしている。
 これほど無駄な時間があるだろうか?
 よし! 
 俺は覚悟を決めてある人にメールする。
 まあ俺がメールする相手なんて一人だけなんですけどね……。
 携帯を取り出し、矢木澤花と書かれた宛先にメールを送る。

『夏休みの宿題手伝ってくれ』

 そう送ると、花からの返信が来るまで床に横になる。
 それから十分後ぐらいに返信が来た。

『手伝ってほしかったらもう少し言い方があるでしょ?』
 
 花からの返信が来た。
 敬語でも使えばいいのか?

「花様手伝ってくださいませ』
 
 これ敬語か?
 日本語って難しい。
 それからすぐに花からメールが来る。

『国語を勉強してきてから出直して』

 うーん。
 そんな時間はないんだけど……。
 俺は立ち上がり着替えを済ませて、花の家に行く準備をする。
 最初っからこうしておけばよかったんだんだよ。
 慣れないメールなんてするからこうなるんだよな。
 俺は準備を済ませて花の家に向かう。
 インターホンを押そうとするが、少し緊張してきた。
 この夏休み中は花とは一回もあっておらず、会うのは久しぶりだ。
 俺は意を決してインターホンを押す。

『はい』
 
 女の人の声がした。
 多分花だろう。

「花か? 夏休みの宿題手伝ってくれ」

 家まで来てこんなお願いするのは失礼な気がしなくもないが、まあ花だしいいだろ。

『私教えるなんて一言も言ってないのだけれど……。まあいいわ、とりあえず優太の家に行くから待ってて』
 
 俺に家で待っててくれと促した花は、インターホンを切ってしまった。
 家まで来てくれるということは、多分手伝ってくれるということだろう。
 なんだかんだで毎年俺の宿題を手伝ってくれてる花は、いい奴だよな……。
 素直にそう思う。
 女子などが男子に向けて言う『いいひと』というのは、どうでも”いいひと”や、都合の”いいひと”などの意味合いが多いいが、男子の『いいやつ』というのはそのままの意味合いが多いいと思う。
 まあこれ俺の主観でしかないけど……。
 それから五分ほどして花がうちへやってきた。
  
「よう花、さっそくなんだけど数学から教えてくれ」

 家に上がってきた花を、俺は床にすわらせ宿題を手伝うようにうながす。
 花は俺の真っ白な宿題を見るや、ため息を吐いて呆れていた……。

「これ明日までに終わると思っているの? 諦めなさい」

 いきなり諦めるように言ってくる花だが、それは出来ない。
 このままだと俺の成績表から3がなくなる。
 4とか5とかはもう取る気がないが、せめて2は取りたい……。
 前に数学の教師から『このままじゃ留年するぞ』と脅《おど》されて、『中学は義務教育なんで留年しませんよ』といってからひどく嫌われている。
 この夏休みの宿題までも出さなかったら確実に1をつけられる。
 俺はもともとたいしてない羞恥心しゅうちしんを捨てて、地面に頭をつける。

「ちょっと……急にどうしたのよ」

 困惑している花に説明する。

「土下座だ!」
 
「そんな自信満々に言われても困るのだけれど……。分かったわ、教えてあげるから頭を上げてちょうだい」

 さすが伝家の宝刀土下座だ。
 てか俺の安い土下座で教えてくれるなんて、やっぱこいつはいい奴だな。
 花は俺の横に座り、教える態勢になる。

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