少年は雨を連れてくる

序章

始まり

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　滔々とうとうと響く、低く長い調べが山中にこだまする。
　
　開けよ開け、霧よ開け。
　また閉ざされるその日まで。

　歌に合わせて、装飾剣を握った男が、足を踏み出し、引き、そして体重などないかのように、舞を舞う。何十年も前から、春終わりのこの時期には『霧開きの儀式』と称される儀式があった。
　霧深い山に隠れるように存在する里、霧は人の侵攻を阻む障壁でもあり、土地に力を持たせないための封じでもある。

　開けよ開け、霧よ開け。

　縦笛の長い音と、剣の飾りがリンとなる。霧を払う、兆しの音。
　深い木々の間に、下草の巨木の根より深くに、音は沈んで行き渡る。

　また閉ざされるその日まで。


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　そして土地の、低く深いところで、何かが目覚める気配がした。僅かにある繋がりを辿たどって。