異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート

文字の大きさ
5 / 75
第1章 ダンジョン内に放置されたようです……

第三話 まさかの初スキル獲得②⁉

しおりを挟む
 思いがけず夢みていた異世界転生や転移の定番、スキル獲得をして結菜は舞い上がっていた。
 きゃあきゃあと黄色い声を上げながらセーフティゾーンの中でジャンピングしている。
 結菜の軽い足音が石造りの部屋内に反響した。
 だんだん疲れてきて、結菜はふぅとため息をついた。冷静になっていく。
「せっかく自分のステータスが確認できるんだもん。見といて損はないよね‼」
 しばらく、というか五~六分くらいなのだが、結菜はやっと興奮が一段落ついたところでちゃんと自分のステータスを確認することにした。
 浮かび上がった画面を軽くタッチする。
 ダンジョンの中で自分のステータスを確認すること。これ必須条件だよね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前: 合田結菜
 レベル: 1→8
 体力: 39→72
 攻撃力: 23→32
 防御力: 13→45
 魔力: ∞
 魔法攻撃力: 1→2
 魔法防御力: ∞
 魔法: 風 聖
 敏捷性: 24
 能力: 家事 物作り 風の耳 a-の眼 鑑定+ 所有者 聖
     ※無→鑑定+ 所有者 聖 を獲得
 称号: 狭間の迷い人 鑑定士 所有者 a-e'vの分身
     
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(……これアウトなやつ………)
 ふっと目が遠くを見てしまった。
 ………それはあまりにもツッコみどころ満載のステータスだった。
 体力、防御力、攻撃力は比べる基準がわからないのでおいておくが、魔力と魔法防御力が∞。
 チートじゃん‼っと思いきや、魔法攻撃力がまさかの2。たった1しか上がってない。
 まさかの魔力の無駄な所持である。
 まぁ、つまるところ、魔法による攻撃は全然大丈夫だけど、物理攻撃はダメージくらうし魔法による攻撃はダメージあたえられるかさえわからないようなレベルの弱さだったのだ。
 物理攻撃したほうがまだマシである。
 どちらにしろ、攻撃力が一番低かった。いろんな意味でアウトなステータスだった。
 家事と物作りはもともと結構していたし、得意分野だったのでスキルがあるのもわかる。注釈から鑑定と所有者と聖を使えるようになったのもわかる。
 "無"から変わっているので、どうやら宝珠の実というあの三つの木の実を食べたのが原因らしい。
 でも残りの二つは全く思い当たることもないし、そもそもの意味がわからない。
(あっ、鑑定のスキルを獲得してたんだっけ?)
 とりあえず、鑑定のスキルを使ってわからない所を調べてみた。
 ―鑑定―と心の中で唱える。

《 所有者: あらゆるものを所有できる。宝珠の実との融合でしか得られないユニークスキル。異空間形成可能。生きもの収納対象外。それ以外可。》
 ふむ……。
《 風の耳: 風の力を使う風属性最高位魔法。宝珠の実との融合の影響によりランクアップした。遠くの音を風の力によりひろうことができる。また、自分の周辺のみ消音可能。魔力消費が極端に多いので注意。》
 ふむふむ…………。
《 a-の眼: 称号、a-e'vの分身からの派生スキル。俯瞰図を外部から視覚可能。存在値の消費が多いので注意。ただし、a-e'vが権限を所有しているためa-e'vからの継承の後使用可。》
 ふむふ、…………えっ、何?コレ?

 わからないスキルをいろいろ調べてみた。だがしかし‼一番意味のわからないスキルがさらにわからないようになって返ってきた。
 ……どういうことだろうか。というか、"a-"とか"a-e'v"って何⁉
 『a-の眼』というスキルはどうやら今は使えないことはなんとかわかったのだが……。
 仰々しい名前の実を食べたわりには少々気落ちしそうな鑑定結果だった。
 まぁ、他のスキルはいいやつが多かったので嬉しいことには変わりはない。気にしたほうが負けなのだ‼後で使えるようになるかもしれないし‼
「それに、『風の耳』はダンジョン脱出に役立ちそうだし‼ラッキーだよね~」
 結菜は思考をプラスに変換した。ポジティブになるとだんだん大丈夫な気もしてくる。
 モンスターとでくわしても『風の耳』を使えば戦わなくてもすむ。
 どこにモンスターがいるのかわかるし、周辺の消音ができるなら気づかれにくいだろうし。
 そ·れ·に、自分の魔力は∞‼よってためらうことなくこのスキルを使うことができる。
 これ、マジでいいかも……‼ダンジョン脱出も夢じゃないかも……‼他のスキルはどうかな?
 もう一度、調べたステータス画面をよく見てみる。
「所有者か。……異空間形成可能。……収納。…………もしかして、アイテムボックスみたいなの作れるんじゃ……」
 結菜はふっと息をはいた。
 ステータス画面を閉じ、頭の中で―所有者―と念じてみる。漫画では頭の中でスキルを使うと念じてみたらスキルが使えると書いてあったので試してみようと思ったのだ。

  ブォン

 ステータス画面とはまた違った画面が現れる。

《異空間形成を行いますか?―Yes · NO》

 もちろんYesだ‼すぐさま選択をする。こういう時に全く躊躇しないのが結菜であった。というかしたことがない。そのせいでたまに、後々後悔してしまうことも多々あるが……。

《承認を確認。異空間形成を開始します。………形成しました。収納が可能になりました。》

 ヒャッハーである。結菜はダンジョンの床をゴロゴロ高速回転して転げ回った。
 石でできた床に土埃がモワモワと舞う。…………煙たくないのだろうか?
 セーフティゾーンいっぱいいっぱいを使って転げ回る結菜。
 喜びの舞いである。結菜は人生初、自分がゲーマーであることに深く感謝したのであった。
 ようやくおさまったはずの笑いがまたこみ上げてくる。
 ダンジョンの中、一人で笑いながら床を転げ回る少女が一人。これまた異様な光景であった……。



しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...