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第3章 ダンジョン脱出から約二週間、早朝に誘拐されました‼

第十五話 朝です。今日もいい天気ですね‼

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 ぱちり。そんな音がしそうな勢いで結菜は目をこじ開けた。いつにも増してとてもいい目覚めだった。これなら今日こそは勝負に勝てるかもしれない‼そう思い、結菜は毛布を跳ね上げて、締め切ったカーテンを開け、窓を全開にした。
 ちょうど太陽が多くの建物の間から頭をだそうとしている。どうやらまだ日の出前らしい。

(よし勝った‼このクランに来てから初めて太陽に勝った‼)

 一人部屋の中でガッツポーズを決める結菜。朝早くからテンションが高い。相部屋とかじゃなくて本当によかった。もし相部屋なら相手がちょっとかわいそうだ…。
 自分だけが意識しているこの勝負にだんだん虚しくなってきて、結菜は身支度を整えて皆の朝食のパンを買いに行くことにした。
 階段を降りて、共用スペースである一階に降りる。
 まだ眠たい目を擦りながら、結菜はぐっと伸びをした。
 朝食の仕込みはすでに昨晩済ませてある。あとは毎朝焼かれる出来たてのふわふわパンを買いに行くだけであった。
 できれば毎朝出来たてのふわふわのパンを食べたい‼それが結菜の願望であるのだ。
 結菜はふと、ここ一週間のことを思い返した。
 何だかんだあったりしたが、濃い数日だったなと思う。

 あのダンジョンから脱出した後、結菜は冒険者育成クラン《炎樹の森》に従魔のロンと共に居候させてもらっていた。クランのメンバーは全員いい人達ばかりだった。
 この世界の常識をすっ飛ばしまくり、よくわからない凄い物(地球の知識を活かしまくった物)を作った上、クランのメンバー達にお礼だと言ってそれの配布をしていく結菜。クランのメンバー達にはそんな彼女を一端の常識人にすることが当分の目標となっていることを結菜は知らない。
 冒険者ではないのに冒険者育成のためのこのクランに来た結菜にも、アル達同様、他のメンバー達は快く歓迎してくれた。………まぁ、それは結菜の手料理にガッシリと胃袋を掴まれたことも理由の一つではあるのだが……。
 ダンジョン崩壊後、クランでは結菜を歓迎するための宴会が開かれた。その品々は、肉、肉、肉、何かの丸焼き、ドレッシングのかかっていないサラダ、肉、あとは冷えていない常温の水、肉、肉…………。……原始人か‼結菜はツッコミを入れた。まぁ、そのことはおくびにも出さなかったが……。
 数日はそういう料理に耐えてきた結菜。だがしかし‼何日も料理というより食材そのものを食べ続け、とうとう我慢の限界が訪れた。
 この世界のものは食材自体に旨味成分がたくさんあるからなのか、どうも料理という文化の発展が一切見られないのだ。
(美味しいのにどうして毎回お肉は丸焼きなの⁉それにサラダにドレッシングすらないなんて‼確かに食材自体が美味しいことは認めるよ‼……でも何か納得いかない‼こんなの食べ物の神様への冒涜だよ…………‼)
 結菜はこれ以上耐えられないと思い、勝手だとは承知していたが、自分でクランの料理に改革を起こそうと決意した。
 ある日の夜、その日の夕食の当番がクリードだとわかると結菜は計画を実行することにした。
 まだ誰もいない食堂にこっそり忍び込み、食材を確認する。水の精霊石を使いしっかり冷やされている保冷室に入ると大量の肉と野菜、少しだけ肉がついている骨などがあった。
 結菜はその中からいくつか食材を取り出してきて台の上に置き、調理を開始した。素早く、美味しく、丁寧に。出来上がった料理はごく普通の一般家庭料理ではあったが、クランのメンバー達に人気の品となっていた。
 それからというもの、料理は結菜の担当となったのであった。クランメンバー全員による全会一致の決定である。それがダンジョンから脱出した後のここ約二週間の主な出来事であった。
 まぁ、それはまた別のお話……。

 玄関口に行って、木製のドアの閂を外す。
「いつも思ってたけど、閂でドアに鍵するのって不安じゃないのかな?……まぁ、私が地球にいたからの認識かもだけど………………」
 ドアを開けると木の独特な軋む音がする。
 結菜はクランの門を開けると町の通りに出た。
 クランの建物から出るとちょうど太陽が顔を出していた。一緒についてきたロンが結菜の足元で走り回る。
 気持ちのいい朝日がさんさんと整備された石畳に降り注いでいるのを見て、結菜は眩しそうに手をかざした。今日も平穏だなぁと実感する。
「さてと、そろそろ行きますか‼」
 所々植えてある街路樹の葉についた朝露が小さな宝石のようにキラキラ光っていた。結菜はこの街の朝、特に早朝の時間帯がとても好きだった。何度見ても綺麗だなぁと思うのだ。その太陽の光の美しさも地球とは変わりはない。
 結菜は石畳の上で鼻歌を歌いながら、いつもクランが仕入れているパン屋さんに向かって行った。



 
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