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第6章 王都への帰還の前に
第六十話 大商人ゴルド
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「その料理の残りを分けてくれ‼」
「えっ?お断りなんだけど」
いきなり調理場に入って来てガシッと手を握ってきた男に、女性陣はきっぱり断りをいれた。
それを聞いた瞬間、男の顔から表情が消えた。
ガックリと肩を落として目から光がなくなった男は、ふらりとよろめいて後ろの台に手をつく。
心なしか青ざめているその様子は明らかに絶望の色を奏でていた。「この世の終わりだ」とぶつぶつ呟く男。
その表情を見ても女性陣は断固として、うんと頷かなかった。
女性陣が壁となって隠しているその品。そう。あの結菜考案レシピの料理の余りである。
祝勝会も終わり、少しだけ残ったのだ。いや、残ったというよりも女性達が意図的に残しておいたのだ。
どうしても食べたい気持ちが勝ったのである。
彼女達の予想通りに料理は瞬く間になくなっていった。圧倒的人気である。
いつもは全くメインどころか脇役中の脇役である料理が祝勝会において初めてメインをはる代物となったのだ。
しかし、予め試食していた女性達はそれをとうに予測していた。なのでせめて結菜自身が作った物だけでも分けて残しておいたのである。
飛ぶように消費されていた料理分、空いた皿の空間を埋めるために、彼女達が必死になってクッキングし続けたのは言うまでもない。
そんな努力をして勝ち取った戦利品(結菜の料理)をみすみす取られるわけにはいかなかった。
余りといっても全く余ってない。これが現状であった。
現実を突きつけられてさらに真っ青になる男。
さて実はこの男、知る人ぞ知る大商人である。
いや、実際は店の名前を出せば必ず知らない者はいないとも言えよう。
彼は王族や貴族、一般庶民など幅広く商売をしており、何より信頼が厚い大商人である。それぞれのニーズやウォンツに合わせて数々の品を手がけているのだ。
彼の名前はゴルド。
この町にたまたまやってきたゴルドは、運悪く魔物の襲撃により今日王都に帰る予定を明日に変えなければならなくなったのだ。
えっ?何でそんな人がこんな辺境の町にわざわざ来ているのかって?
実はこのゴルド。生粋の商売人であった。あまりにも生粋すぎて仕入れにロマンを感じてしまい、店に留まることができなくなってしまった変人である。
しかし、彼も王都に店を持つ大商人である。
店に立つことはできずとも、販路の拡大や新たな活気的な商品の確保をすることだけは超一流であった。
ちなみに店は優秀な店員達とできる妻に任せているので安心だ。ちゃんと役割分担はできている。
今回はこの辺境の町に冒険者向けのいい武器を仕入れに来たのだ。魔物がよく発生するからかここは武器類のレベルが凄く高い。
ゴルドは以前大枚を叩いて買った魔法リュックの中に購入した剣百本を持って店に帰ろうとしたのだが、運が悪かったと言えるだろう。
しかし、この際せっかくだからと思って参加した祝勝会にて、見たこともない美味な料理が出されたのである。
それは各地を見て回ったゴルドさえ見たことのないアイデア溢れる芸術作品(※料理です)であった。
この料理を作った人にぜひとも会いたい。というかこの料理を食べたい。
そう思ったゴルドは町の人から聞き出して料理をした所、つまり調理場に足を運んだのだ。
「これ程素晴らしいアイデアの塊の芸術作品(※料理)が手に入らないなんて……………」
魂が抜けたような声でボソボソとゴルドは呟いた。
「あのさぁ。何でそんなに欲しがんのよ」
「当たり前だろう⁉この芸術作品(※料理)はぜひとも我が商店で扱いたいほどだ。何しろ我が商店では料理店も手がけているからな‼」
「へぇ~。あんた商人だったの。でも、商店で料理店も手がけるって何か変じゃない?」
「どこが変なものか‼お客様のニーズだけでなく、ウォンツにも答える。これが私の商会の流儀なのだからな‼」
「「「「「………………………………」」」」」
ガッと拳を握りしめるゴルド。暑苦しい。暑苦しいことこの上ない。
しら~となる空気の中、ニーナがゴルドにちょっと尋ねた。
「あの、あなたに料理を少しだけ分けるとすれば、」
「えっ⁉くださるのか‼」
「いえ、例えです」
スパンッと切り捨てる。ふよよよ、と泣きそうな顔になるゴルド。
こほんと取り直して、ニーナは続けた。
「で、もし、この料理を少しだけあなたにあげたとしましょう。どうするんですか?すぐに食べるの?」
「何を言う‼すぐに食べるなどもったいないではないですか‼」
「あら、あなたよくわかってるじゃないの」
「そうよね。この料理はできるだけ日持ちさせて毎日少しずつ食べるべきだよね」
女性陣の男に対する好感度が少しだけ上昇した。わいわいと話が盛り上がる。意見の一致が勝負の鍵を握っているようだ。
このままなら少し分けてくれるかもしれない。
だがしかし、ゴルドはさらに斜め上を行っていた。
鼻息荒くまくしたてる。
「いや違う。それではこの芸術作品に対してまだ敬意が足りん!芸術作品が朽ち果てて砂になるまで展示するんだ‼」
「なんですって⁉それこそ冒涜よ‼この芸術作品は食べてこそ価値があるの!毎日ちびりちびり食べるのよ‼一ヶ月かけてね‼」
「「「「そうだそうだ‼」」」」
………皆揃って斜め上を突き進んでました。はい。
朽ち果てるまでってその前に腐ってるのではなかろうか。ゴルドよ。
いくら保冷庫があっても、保存料の一切入ってない食品を一ヶ月かけて食べようとするなよ。女性陣。保存料なかったらせめて一週間以内で食べきるのが常識なのではなかろうか。
もし当の結菜がこれを聞いていたらそう言ったに違いない。しかし彼女は今いない。
論点をすでに間違っているこの論争を止める者はこの場に誰もいなかった。
「あなたにこの料理は渡せません!」
「「「「そうだそうだ‼」」」」
「な、何で…………。せめて、せめてレシピだけでも売ってくれ‼」
なおもすがりつくゴルド。
女性陣はこの男の熱意に根負けした。むしろ面倒くさく思ったのが本心であろう。
「いいわよ、レシピなら。あの女の子が手書きでわかりやすく図で描いてくれたから。はい、これ」
ぱらっと何枚か簡単な作り方とポイントが描かれたレシピを男に渡す。
男は「おぉぉぉ……」と感動に打ち震えた。
「でも、この料理だけは無理‼やっぱり私達はこれがどうしても毎日食べたいの。そのレシピで我慢して」
「わかった!本当にありがとう‼して、このレシピの考案者はどこに?この芸術作品はぜひとも世に出さなくては‼考案者に生産ギルドで特許登録してもらいたいな。あっ、できれば知り合いになってアイデアをどんどんうちの商会を通して世に広めたい。うん、そうだ。なぁ、君達!考案者はどこにいるんだ⁉教えてくれ‼」
「わかんない」
「…………へ?」
「用事を思い出したのでって帰っちゃったもの」
「………………………へ?」
「でもあの子ってこの町の子じゃないよね?見たことないし」
「そうだねぇ。あんなに目立つ容姿の女の子なんていたら普通忘れないよ」
愕然としていたゴルドは何とか立ち直り、彼女達に問い詰めた。
「そ、その少女は誰なんだ‼教えてくれ!その少女はどんな容姿なんだ?特徴は?」
せっかく見つけた金の卵をみすみす逃したくないゴルド。レシピを見てからさらに考案者に会ってみたくなった。
アイデアの塊が歩いているようなものである。レシピには数々の工夫が凝らされていたのだ。
レシピからそれが伺えたゴルドは、何とかならないかと必死になった。
「んっとね。黒いつやつやの長い髪で、異国情緒溢れる不思議な顔立ちだったかなぁ。それで中性的でかわいい綺麗な感じ。育ちは良さそうだったね。なんか貴族のお嬢様って言われても信じられそうな女の子だったよ」
「そうか、ありがとう‼」
レシピを大切そうに魔法リュックのポケットに入れると、ゴルドは調理場を飛び出した。
キョロキョロと広場を見渡すが、それっぽい少女はいない。
(……それは、そうか)
肩を落とすが、ゴルドは諦めてなどいなかった。何としてでも探す。んで、新たないい仕入先を手に入れる。
「絶対に諦めないぞ‼金の卵よ‼ふはははは…………‼」
横を通り過ぎる人達がビクッとなるが、全く気にしないゴルド。
急に笑いだしたゴルドは周りからはさぞかし変人に見えただろう。
しかし、気にしてはいけない。
なぜなら彼は商売に関係することに熱中すると、いつでもどこでも変人になれるレア&コアな人間なのだから。
ゴルドはスキップしながら、宿へと帰っていった。
ちなみにこの町は後に、観光地として有名なスポットとなった。
祝勝会で料理担当した何人かの女性達が立ち上げた飲食店で祝勝会のレシピの料理を作ったのを皮切りに、ハンバーグと唐揚げはこの町の名物料理となったのだ。
いわば料理目当てである。幸いこの辺境は魔物が多く発生しやすい所とはいえ、魔物対策はしっかりされていたため人が集まらないことはなかった。
美味しい料理に美しい草原。上質な武器や防具。
ここは特に冒険者などが愛用するスポットとなっていった。
その後、その名物料理を求めて多くの観光客がやってくるようになり、町は今以上に栄えることとなったのである。
しかし、ハンバーグや唐揚げ、ローストビーフなどは女性達が作り方を覚えていたからか名物となったが、あの結菜自身が作ったスープだけは再現できなかった。
レシピもないし結菜自身で作り上げたため、作り方の詳細がわからなかったのである。
だが、あの味については町のあらゆる飲食店にて詳しく残されている。
ゆえに「幻のスープ」と呼ばれて、今もなお町中の人が生きている間にもう一度食べたい食べ物ランキングナンバーワンに君臨していた。
まぁ、王城では結菜がのほほんとたま~に勇者と賢者にそのスープを作って、二人がほっこりしているのだが…………。ロンももちろんそれに参加している。
まぁ、それはまた別のお話。
「えっ?お断りなんだけど」
いきなり調理場に入って来てガシッと手を握ってきた男に、女性陣はきっぱり断りをいれた。
それを聞いた瞬間、男の顔から表情が消えた。
ガックリと肩を落として目から光がなくなった男は、ふらりとよろめいて後ろの台に手をつく。
心なしか青ざめているその様子は明らかに絶望の色を奏でていた。「この世の終わりだ」とぶつぶつ呟く男。
その表情を見ても女性陣は断固として、うんと頷かなかった。
女性陣が壁となって隠しているその品。そう。あの結菜考案レシピの料理の余りである。
祝勝会も終わり、少しだけ残ったのだ。いや、残ったというよりも女性達が意図的に残しておいたのだ。
どうしても食べたい気持ちが勝ったのである。
彼女達の予想通りに料理は瞬く間になくなっていった。圧倒的人気である。
いつもは全くメインどころか脇役中の脇役である料理が祝勝会において初めてメインをはる代物となったのだ。
しかし、予め試食していた女性達はそれをとうに予測していた。なのでせめて結菜自身が作った物だけでも分けて残しておいたのである。
飛ぶように消費されていた料理分、空いた皿の空間を埋めるために、彼女達が必死になってクッキングし続けたのは言うまでもない。
そんな努力をして勝ち取った戦利品(結菜の料理)をみすみす取られるわけにはいかなかった。
余りといっても全く余ってない。これが現状であった。
現実を突きつけられてさらに真っ青になる男。
さて実はこの男、知る人ぞ知る大商人である。
いや、実際は店の名前を出せば必ず知らない者はいないとも言えよう。
彼は王族や貴族、一般庶民など幅広く商売をしており、何より信頼が厚い大商人である。それぞれのニーズやウォンツに合わせて数々の品を手がけているのだ。
彼の名前はゴルド。
この町にたまたまやってきたゴルドは、運悪く魔物の襲撃により今日王都に帰る予定を明日に変えなければならなくなったのだ。
えっ?何でそんな人がこんな辺境の町にわざわざ来ているのかって?
実はこのゴルド。生粋の商売人であった。あまりにも生粋すぎて仕入れにロマンを感じてしまい、店に留まることができなくなってしまった変人である。
しかし、彼も王都に店を持つ大商人である。
店に立つことはできずとも、販路の拡大や新たな活気的な商品の確保をすることだけは超一流であった。
ちなみに店は優秀な店員達とできる妻に任せているので安心だ。ちゃんと役割分担はできている。
今回はこの辺境の町に冒険者向けのいい武器を仕入れに来たのだ。魔物がよく発生するからかここは武器類のレベルが凄く高い。
ゴルドは以前大枚を叩いて買った魔法リュックの中に購入した剣百本を持って店に帰ろうとしたのだが、運が悪かったと言えるだろう。
しかし、この際せっかくだからと思って参加した祝勝会にて、見たこともない美味な料理が出されたのである。
それは各地を見て回ったゴルドさえ見たことのないアイデア溢れる芸術作品(※料理です)であった。
この料理を作った人にぜひとも会いたい。というかこの料理を食べたい。
そう思ったゴルドは町の人から聞き出して料理をした所、つまり調理場に足を運んだのだ。
「これ程素晴らしいアイデアの塊の芸術作品(※料理)が手に入らないなんて……………」
魂が抜けたような声でボソボソとゴルドは呟いた。
「あのさぁ。何でそんなに欲しがんのよ」
「当たり前だろう⁉この芸術作品(※料理)はぜひとも我が商店で扱いたいほどだ。何しろ我が商店では料理店も手がけているからな‼」
「へぇ~。あんた商人だったの。でも、商店で料理店も手がけるって何か変じゃない?」
「どこが変なものか‼お客様のニーズだけでなく、ウォンツにも答える。これが私の商会の流儀なのだからな‼」
「「「「「………………………………」」」」」
ガッと拳を握りしめるゴルド。暑苦しい。暑苦しいことこの上ない。
しら~となる空気の中、ニーナがゴルドにちょっと尋ねた。
「あの、あなたに料理を少しだけ分けるとすれば、」
「えっ⁉くださるのか‼」
「いえ、例えです」
スパンッと切り捨てる。ふよよよ、と泣きそうな顔になるゴルド。
こほんと取り直して、ニーナは続けた。
「で、もし、この料理を少しだけあなたにあげたとしましょう。どうするんですか?すぐに食べるの?」
「何を言う‼すぐに食べるなどもったいないではないですか‼」
「あら、あなたよくわかってるじゃないの」
「そうよね。この料理はできるだけ日持ちさせて毎日少しずつ食べるべきだよね」
女性陣の男に対する好感度が少しだけ上昇した。わいわいと話が盛り上がる。意見の一致が勝負の鍵を握っているようだ。
このままなら少し分けてくれるかもしれない。
だがしかし、ゴルドはさらに斜め上を行っていた。
鼻息荒くまくしたてる。
「いや違う。それではこの芸術作品に対してまだ敬意が足りん!芸術作品が朽ち果てて砂になるまで展示するんだ‼」
「なんですって⁉それこそ冒涜よ‼この芸術作品は食べてこそ価値があるの!毎日ちびりちびり食べるのよ‼一ヶ月かけてね‼」
「「「「そうだそうだ‼」」」」
………皆揃って斜め上を突き進んでました。はい。
朽ち果てるまでってその前に腐ってるのではなかろうか。ゴルドよ。
いくら保冷庫があっても、保存料の一切入ってない食品を一ヶ月かけて食べようとするなよ。女性陣。保存料なかったらせめて一週間以内で食べきるのが常識なのではなかろうか。
もし当の結菜がこれを聞いていたらそう言ったに違いない。しかし彼女は今いない。
論点をすでに間違っているこの論争を止める者はこの場に誰もいなかった。
「あなたにこの料理は渡せません!」
「「「「そうだそうだ‼」」」」
「な、何で…………。せめて、せめてレシピだけでも売ってくれ‼」
なおもすがりつくゴルド。
女性陣はこの男の熱意に根負けした。むしろ面倒くさく思ったのが本心であろう。
「いいわよ、レシピなら。あの女の子が手書きでわかりやすく図で描いてくれたから。はい、これ」
ぱらっと何枚か簡単な作り方とポイントが描かれたレシピを男に渡す。
男は「おぉぉぉ……」と感動に打ち震えた。
「でも、この料理だけは無理‼やっぱり私達はこれがどうしても毎日食べたいの。そのレシピで我慢して」
「わかった!本当にありがとう‼して、このレシピの考案者はどこに?この芸術作品はぜひとも世に出さなくては‼考案者に生産ギルドで特許登録してもらいたいな。あっ、できれば知り合いになってアイデアをどんどんうちの商会を通して世に広めたい。うん、そうだ。なぁ、君達!考案者はどこにいるんだ⁉教えてくれ‼」
「わかんない」
「…………へ?」
「用事を思い出したのでって帰っちゃったもの」
「………………………へ?」
「でもあの子ってこの町の子じゃないよね?見たことないし」
「そうだねぇ。あんなに目立つ容姿の女の子なんていたら普通忘れないよ」
愕然としていたゴルドは何とか立ち直り、彼女達に問い詰めた。
「そ、その少女は誰なんだ‼教えてくれ!その少女はどんな容姿なんだ?特徴は?」
せっかく見つけた金の卵をみすみす逃したくないゴルド。レシピを見てからさらに考案者に会ってみたくなった。
アイデアの塊が歩いているようなものである。レシピには数々の工夫が凝らされていたのだ。
レシピからそれが伺えたゴルドは、何とかならないかと必死になった。
「んっとね。黒いつやつやの長い髪で、異国情緒溢れる不思議な顔立ちだったかなぁ。それで中性的でかわいい綺麗な感じ。育ちは良さそうだったね。なんか貴族のお嬢様って言われても信じられそうな女の子だったよ」
「そうか、ありがとう‼」
レシピを大切そうに魔法リュックのポケットに入れると、ゴルドは調理場を飛び出した。
キョロキョロと広場を見渡すが、それっぽい少女はいない。
(……それは、そうか)
肩を落とすが、ゴルドは諦めてなどいなかった。何としてでも探す。んで、新たないい仕入先を手に入れる。
「絶対に諦めないぞ‼金の卵よ‼ふはははは…………‼」
横を通り過ぎる人達がビクッとなるが、全く気にしないゴルド。
急に笑いだしたゴルドは周りからはさぞかし変人に見えただろう。
しかし、気にしてはいけない。
なぜなら彼は商売に関係することに熱中すると、いつでもどこでも変人になれるレア&コアな人間なのだから。
ゴルドはスキップしながら、宿へと帰っていった。
ちなみにこの町は後に、観光地として有名なスポットとなった。
祝勝会で料理担当した何人かの女性達が立ち上げた飲食店で祝勝会のレシピの料理を作ったのを皮切りに、ハンバーグと唐揚げはこの町の名物料理となったのだ。
いわば料理目当てである。幸いこの辺境は魔物が多く発生しやすい所とはいえ、魔物対策はしっかりされていたため人が集まらないことはなかった。
美味しい料理に美しい草原。上質な武器や防具。
ここは特に冒険者などが愛用するスポットとなっていった。
その後、その名物料理を求めて多くの観光客がやってくるようになり、町は今以上に栄えることとなったのである。
しかし、ハンバーグや唐揚げ、ローストビーフなどは女性達が作り方を覚えていたからか名物となったが、あの結菜自身が作ったスープだけは再現できなかった。
レシピもないし結菜自身で作り上げたため、作り方の詳細がわからなかったのである。
だが、あの味については町のあらゆる飲食店にて詳しく残されている。
ゆえに「幻のスープ」と呼ばれて、今もなお町中の人が生きている間にもう一度食べたい食べ物ランキングナンバーワンに君臨していた。
まぁ、王城では結菜がのほほんとたま~に勇者と賢者にそのスープを作って、二人がほっこりしているのだが…………。ロンももちろんそれに参加している。
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