異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート

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第6章 王都への帰還の前に

第六十二話 《a-e'v》の干渉

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 騎士団に戻った後、結菜達は騎士団の近くにある宿屋で客室を借りた。今夜一晩はそこで泊まる。そして明日の早朝に町を出ることとなっていた。
 祝勝会の時間はあっという間に過ぎていってしまった。楽しい時間ほどすぐに終わってしまうものなのである。
 結菜は勇者と賢者に扉の前で「おやすみなさい」と言うと、部屋に入った。
 未だに頭の上に鎮座しているミニマムモフモフをそっと部屋のベットの上に置いた。
 寝ている。そんなロンを見て、結菜は和みながら自分もベットにころんと横たわった。
「今日は色々あったな~」
 いきなりの魔物発生に魔物の進化。団長さんとは色々あったけれど、騎士団メンバーの熱い絆も町の活気も垣間見れた。流石異世界である。中世ヨーロッパ的な雰囲気がいい感じであった。リアルRPG仕様である。
 うんうん、あれは良かった。特に副団長と騎士さん達の絆‼少年漫画見てる気分だった。リアルでもあるんだ、ああいうの。この世界は全体的に見ても素晴らしすぎるのではなかろうか。
 結菜の満足感ゲージは満たされていた。本当に何よりである。
 む~んと唸りながら結菜はころころとベットを転がる。もちろんロンは潰さないようには気をつけている。
 ころころ、ころころころころ。あまりにもころころするものだからシーツにシワが………。
 そこはあまり気にせず仰向けになり、灯りの方に掌を向け、結菜は掌越しに灯りを真っ直ぐ見つめた。
「そういえば私団長にビンタした時また何か出してたっけ……………」
 自分は結構気合で魔法を出してしまうことが度々ある。意図的であろうとなかろうと。
 あの時は電気が走ったような光が自分の手から出ていた。
「もしかしてだけど光魔法?いや、でも光魔法って電撃出てたかな?」
 ゲームでは電気系は雷属性とかの領分だった気がする。この世界にはそもそも雷属性がないからてっきりないとばかり思っていた。
 しかし、もし出せるとすれば…………。
「ねぇ鑑定さん。あれって光属性?」
 こんな時こその鑑定さんである。お悩み·問題·その他諸々、何でも解決してしまうのだ。
 しかし、いくら待っても返事が来ない。
「あれ?鑑定さん?お~い、鑑定さ~ん」
 来ない。返事が。いつもならすぐに返ってくるのだが……。
 結菜は目を閉じて集中した。意識を深い所に落とし込む。すると、ザザッ……ザザッ……というノイズが微かに聞こえてきた。
 本当に深い深い所。結菜はまるで夢に落ちたような気分になった。
 ようやく鑑定さんの気配を感じる。
(鑑定さん、どうかしたの?大丈夫?)
 今日はいつも以上に鑑定さんを頼りきりであった。ヒールの件もそうだし、魔力の制御や聖魔法の微調整なども色々頼んでしまったのだ。
 鑑定さんが疲れていないか心配になる結菜。しばらく様子を伺うように何度か呼びかける。

《ザザッ………ザザッ……。心配には及び…ません。上位個体か…らの干渉を妨害していました》

 上位個体?はてと首を傾げる。それにしても干渉とか妨害とか、本当に大丈夫なのだろうか。
 しかし、疲れているとかではないようである。結菜はほっとした。
 そもそも前提として鑑定はスキルなのだから疲れというもの自体がないのだが……。いつも鑑定とは人と同じように接しているので、結菜はそこに気づかないのであった。
(じゃあ疲れているわけじゃないんだ。良かった~)

《スキルは疲れません。それよ…りもどうかしたんですか》

(ん?いや、今日の昼に私団長さんをビンタしたでしょ。その時に電気っぽいのが出てたんだけど、あれって何かなって)

《雷撃は光属性からの派生魔法です。あの時は気合とやらで…発生した模様です。雷撃は光魔法を極め、発動の効率化…と発動展開速度が速くなければ使用…できません。管理者の場合は韻律そのものに演算処理を…すでに組み込んでいるので効率化·最適化は完了しています。よってこれ…からは任意で発動可能です》
 
 ふむふむ。つまり本当なら雷撃を出すには修行とかが必要だが、それを自分はすっ飛ばしてしまったというわけである。
 気合で出せる程度のものが任意で発動できるようになったのはウェルカムだ。
 加減ができるかはわからないけど。というか魔力の微調整は未だに難しいのだけど……。うん、まぁよしとしよう。これから練習を重ねれば大丈夫なはず‼
 うんうんと頷く結菜。
(それにしても、雷属性がなくて電撃は光属性か~。しかも光属性の中でもランクは上みたいだね。それなら氷属性は水の上のランクで、爆炎とか爆破系は火の上のランクって感じかな~。うん、何か燃えるね。努力すればたくさん魔法が使えるんだし)

《そ…の調子です。それと報告があり……ます》

(?何?)

《魔物の…討伐及び経験値の上昇によりレベ…ザザッ……ップしま…た。現在のレ…ル50。よって一定の条件を満た……ため、能力の開放を行……とができます。開放し…ザザッ……すか?ー Yes · No》

 ノイズが酷くて聞き取りづらい。まぁ意味はわかるが。
 しかし、能力の開放か。それってスキルとかが増えるということだろうか。ということは自分好みの魔法とかなどが色々使えるようになるということで……。
 うん。もちろんYesだ。
 使えるものはたくさんあっても損にはならない。

《了……ザザッ》

 相変わらずノイズが酷い。本当に大丈夫なのだろうか……。少し、というかかなり心配である。今までこんなことはなかった。
 それにこのノイズ音。先ほど鑑定さんが少し言っていたのだが、何かからの干渉から自分を守ってくれているようなのだ。
 それに上位個体って……。
(鑑定さん。本当に大丈夫?ノイズ音なってるし……)
 そう結菜が鑑定さんに声をかけたその瞬間。バチッと目の前で火花が弾けたような感じがした。
 何かヤバイ気がする。結菜は直感的にそう感じた。
(何これ?えっ、本当に大丈夫なの⁉)

《警……ザザッ…。上位……の干渉率82%。個体名《a-e'v》。干渉妨…から管理者の韻律と精神固定に移…ザザッ…ます。……47%……79%……成功しました。もう一度警告し……。上位個体からの干渉率が一定を超…ザザッ……した。安全のために強制スリープモードに移行し…す》
 
 警告の後、すぐに急な眠気に襲われる。意識がもっと深い所へと落ちていく。水の中をどんどん深い所へと沈んでいくみたいに。
 結菜は不自然なほどの眠気に抗うこともできずにスッと眠りについた。
 意識がブツリと途切れる。
 手がパタリとベットの上に落ちる。
 ベットの横の灯りが結菜の顔をゆらゆらと照らした。

《スリープモードに成功しま……た。管……の指示により、能力……開放を並行し……います》

 誰も聞いていない室内の中で、鑑定の声が結菜へと語りかける。
 独りでにステータス画面が開いた。コンピュータプログラムが構築されていくように次々とステータスのデータが書き加えられていく。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

称号: ……霊の………子
  ※派生→………視…
     
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 夜の闇が窓の外から伺えるその部屋には、眠ってしまった結菜とただ普通に寝ているロンの姿だけがあった。
 

    
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