いつか、手を繋げたら。

水鳥ざくろ

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プロローグ

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 朝から、雨が降っていた。
 鈴木葵は、静かに篠原涼介の言葉に耳を傾ける。
 平静を、装って。
 篠原の声は、低くてとても心地良い。
 ずっと、聞いていたくなる。
 けれど……。
「それで、指輪のデザインを……」
 指輪。
 ああ、そんな話は聞きたくない。
 耳を塞いでしまいたい。
 葵は、ふう、と息を吐いた。そして、笑顔を作って篠原に言う。
「社長、会社で惚気すぎですよ?」
 葵の言葉に、篠原は「ああ」と微笑んだ。
「どうも、鈴木は話しやすいから、いろいろ喋ってしまうよ」
「あはは……」
 いつまで、作り笑顔でやり過ごせるだろうか。
 葵は、ちらりと窓の外を見る。
 ざぁ、ざぁ、ざぁ。
 雨が、降っている。
 いっそ、このまま雨音で惚気話なんて聞こえなくなってしまえば良い。そう思った。
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