俗物夫婦回帰転生

Jaja

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第二章 高校受験

第8話 投資

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 「お釣りはいいです」

 タクシーの運転手に諭吉二名を渡してかっこつける。一回やってみたかったんだこれ。
 運転手の人が笑顔でぺこぺことお礼してくるのを見送り良い気持ちになる。

 「さてさて梓は?」

 周りをキョロキョロ見回してみるけど、梓の姿が見えない。
 すぐに行くって言ってたし、多分梓の方が到着は早いと思ったんだけど…。

 およ? メールが来てたや。
 ふむふむ? 高校の時によく行っていた今にも潰れそうなカラオケにいるとな?

 「あそこか」

 機器とかは最新の物を取り揃えてるのに外観がボロくて客入りが悪いカラオケ店。
 俺と梓は穴場とばかりに高校の頃はよく通っていた。多分監視カメラとかも置いてないし、個室でお金を広げてゆっくり話せるだろう。

 因みに俺達が住んでるのはほぼ東京と言ってもいい千葉県だ。
 ここらへんに住んでる人間は自分の事を都会民と言い張る。千葉も悪い所じゃないのにね。
 あ、俺も都会民って言い張ってます。

 3kg以上もある鞄を持ってカラオケ店に急ぐ。
 運動能力が40もあるお陰か、それほど苦に感じない。これ100になったらオリンピック選手とかにも余裕でなれそう。

 「すみません。連れが先に来てると思うんですが…」

 「十二号室だよ」

 カラオケ店に入り、受け付けで新聞を読んでたおっちゃんに連れが先に入ってる事を伝えると、すぐに部屋番を教えてくれた。

 「お待たせ」

 「儲けたみたいね?」

 「それはもう」

 部屋に設置されている机の上にドンと鞄を置く。
 そしてチャックを開けるとそこには雑に詰め込まれたお札。

 「どうよ」

 「まぁ! まぁまぁ!」

 瞬時に目が$マークになる梓。
 分かるぞその気持ち。俺もぐへぐへ言ってたしな。

 「大体3600万だな。二人で分けても1800万だ」

 「きゃー! 素敵!」

 せやろせやろ。わて、頑張りましてん。
 バレるかヒヤヒヤしながらも頑張りましてん。
 褒めてくれてもええんやで?

 ドヤ顔をしてふんぞり返っていたら、梓が頬にキスをしてくれた。
 おお。なんか新鮮。若い体だからか? 死ぬ前も普通にやってた事なのに。嬉しいです。

 「とりあえずさっさとステータスボードに突っ込もうぜ。こんな大金持ってるのはマジで怖いんだ」

 「そうね。時間はかかるけど分けましょうか」

 それから30分程かけてお金を均等に分ける。
 分けた結果、1800万とお互いに端数で10万ずつぐらいになった。
 俺はこの端数は来週の軍資金にする予定だ。

 「私も、とりあえず2万円くらいあれば充分だわ。中学生なんてそんなにお金使わないし。だから残りは圭太に渡しておくわね」

 って事で来週は軍資金が18万円ぐらいでスタートだ。来週はオークスだっけ? 帰ったら早速勉強しないと。

 「で、何に投資する?」

 「何言ってるの。とりあえず学力一択でしょうが」

 「あ、そうなの?」

 「学力がどれだけ力を発揮してくれるのかは分からないけど、絶対学力よ。先にこれに投資しておけば授業を聞いてるだけで他に勉強しなくて良くなるかもしれないのよ? 放課後は他の事に時間を使えるし、高校受験もあるんだから。学力に投資で間違いないのよ」

 な、なるほど。言われてみれば確かにって思っちゃうな。
 俺は競馬辺りに投資して毎回三連単を当ててウハウハフィーバーにしようかと思ってたけど。
 だっていっぱいお金を稼げる方が良いじゃん?

 「って思ってたんだけど?」

 「今日ぐらいの稼ぎで充分よ。稼ぎすぎると職員に目を付けられるかもしれないでしょ? 八百長を疑われたりするかもしれないじゃない」

 「ふむぅ」

 今日の450枚換金もやり過ぎたもんなぁ。
 確かに程々に抑えておくべきか。

 「じゃあ学力に投資するか」

 ステータスボードに…おお! ヌルッとお金が入っていったぞ!!
 俺と梓はステータスボードにどんどんとお金を突っ込んで行く。

 「あ、残金表示されるんだ。これ、分ける前に気付けてたら楽出来てたのに」

 「ほんとね」

 ステータスボードの一番下に残金が表示されている。しっかり1800万ある事を確認して、学力をぽちぽちと増やしていく。

 「とりあえず50まで上げてみた」

 「一気に700万円無くなったわ…」

 トレーダーしてた頃もこれぐらいのお金は動かしてたけども…。
 なんか心にクるものがあるな。

 「残り1100万か。どうする? このまま学力ぶっぱか?」

 「いえ。本当に効果があるか確かめるわよ。中一と中二の数学の教科書を持ってきたの」

 準備万端。出来る女。最高だぜぃ。
 って事で早速読んでいく。
 これまでも放課後に勉強して、なんとか頑張ってたけどこれは…。

 「段違いすぎる」

 「ここまでとはね。私も予想外だったわ」

 スルスルと頭の中に入って行く。
 なんで今までこんな事も分からなかったんだってぐらい簡単に分かってしまう。
 これは流石にヤバすぎる。まだ50だぞ? 100になったら解けない問題なんて無くなるんじゃないの?

 「ここまで来ると流石に怖くなってきたな」

 「そう? 使える物はなんでも使わなきゃ損よ。こんな不可思議な現象自体がおかしいんだし、私達は楽しませてもらいましょう?」

 逞しい。俺が考え過ぎなだけか?
 確かに既に恩恵に預かってるのにグチグチ考えるのは今更か。
 うんうん。俺は誰か知らないけど感謝しながらやりたい放題やればいいんだ。
 
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