地獄からの刺客『エンマダイオウ』

Jaja

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第1章 誕生

第10話 いよいよ新馬戦

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 栗東とやらに移動してちょっと経って。
 また移動である。
 しかし今回のエンマ君は怒らない。何故なら次はマジでレースらしいからだ。

 「プヒン。プヒン。プヒヒヒン」

 「エンマはご機嫌ね」

 馬運車の中で鼻歌を歌ってしまうくらいだ。ずっと待ち望んでたからね。
 俺は札束を咥えて実家に届けなきゃならんのです。あのちびっ子が少しでも裕福な暮らしが出来るようにしてやらんとな。
 待っとけよ、舞ちゃん。エンマ君が一等賞取ってくるからな。

 「プヒヒヒン?」 (忘れられてないよね?)

 まだ子供だし忘れっぽいけど。
 なんなら実家には俺は会った事ないけど、他にも馬が居る訳で。実家を留守にしてる俺より近くに居る馬に懐いてたりして。

 「プヒヒヒン!」 (ちょっと不安になってきた!)

 「わっ。急にどうしたの?」

 思わず足場をガシガシして牧瀬さんを心配させちゃったぜ。早く実家に帰りたくなって来た。競走馬って引退するまで帰れないのかな? それとも引退しても帰れない?
 それなら絶対脱走してみせるぞ。



 そんなこんなでレース当日。
 なにやら人間が柵の外側で見てる前でぐるぐると同じところを回ってる。
 テレビでもこんなシーンを見た事あるけど、これは一体何をしてるのかな?

 なんか写真を撮ってる人も居る。
 これはカッコよく撮ってもわらねばなるまいて。そう思って人間達の前を通る時は、ビシッビシッと歩く。それが何故か受けた。

 理由は不明。ドゥラなんたらがどうとか聞こえた様な気がしたけど、俺はそれどころじゃなかった。

 「エーン!!」

 「プヒヒヒン!!」 (舞やないか!)

 なんとあのちびっ子の舞が柵の外に居たのだ。最近までは忘れられてるのではと不安に思ってたけど、まさか俺の応援に来てくれたのでは? これは気合いを入れねばなるまいて。

 「ちょ、ちょっとエンマ!」

 ビシッと歩くのなんて今は気にしてられん。引っ張って俺の先導をしてた牧瀬さんを引き摺りちびっ子の元へ向かう。

 「頑張ってね!!」

 「プヒヒヒン!」 (任せろ!)

 残念ながら触れる距離までは近付かないけど、それでもしっかり顔を見れた。
 もう俺のやる気はグレンラガンである。

 その後もカメラの前ではビシビシッと歩きつつ、ぐるぐる回ってると止まれの声がして、建物から騎手の人がいっぱい出て来た。
 その中には勿論俺に乗る滝さんの姿も。

 「エンマ、調子はどうだ?」

 「プヒヒヒン」 (なんか緊張してきた)

 ちびっ子も来てるからやる気はあるんだけどね。周囲に威嚇もして盤外戦術もばっちりである。

 でもなんか今更になって緊張してきた。
 ちびっ子の前で負けたらどうしよう。

 「さっきまでは落ち着いてたんですけどね。馬主さんの娘さんを見てから、ちょっと力が入ってるみたいで」

 「あははは。仲良しだったみたいだからねぇ。エンマも覚えてたのか」

 「それはもう。凄い勢いで引っ張られましたよ。普段は聞き分けがいいのに」

 ごめんやで。まさか舞が観に来てくれてるとは思ってなくてテンションが上がってしまったんだ。次からはもっと優しく引っ張ります。

 「さ、行こうかエンマ。デビュー戦だ。お前の力を貸してくれ」

 「プヒヒヒン」 (頑張る)

 滝さんに力を貸してくれって言われちゃ頑張るしかありませんな。
 ヘマしないように気を付けます。


 あのぐるぐる回る場所はパドックって言うらしい。そういえば聞いた事あるかも。
 また移動してゲートの前でぐるぐる。

 どんだけぐるぐる回らせるんだよと思ってたら、他の馬が徐々にゲートに入れられていく。

 今回は9頭で走るらしく、俺のゼッケンは9番。これってどういう順番なんだろうね。
 人気順とか? それなら俺はドベなんだけど。抽選とかで決めてるのかな? そうであってほしい。

 だって周りを見ても俺が一番デカそうで強そうなんだぜ? 真っ黒な馬体は威圧感があって強そうなんだけど。競馬のプロ達はそんなので判断しないのかね? 

 知り合いはとりあえずロメールを買っておけば良いって言ってたんだけど、あれはどういう事だろう? 馬になって2年ぐらい経つけど、ロメールなんて用語は聞いた事がない。

 それはさておき俺が最後にゲートに入る。
 人気順がうんたらとか、ロメールとはなんぞやとか考えてたのがいけなかったのか。俺が入ってすぐにゲートが開いたんだけど。

 ゲートの練習では問題無かったのに、普通に他の馬より出遅れた。
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