サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第三章 人間の街

第44話 スタンピード④

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 ☆★☆★☆★

 「魔物の群れを目視で確認!」

 神聖騎士団と冒険者は、眼前に迫り来る魔物の群れに戦慄していた。
 あらかじめ、かなりの魔物が向かって来ていると分かってはいたが、いざ見てみるとその数に圧倒される。

 「いい? 初動は、とにかく数を減らしなさい! 統率個体を倒して解決する策もあるけど、魔物寄せの香水で狂ってる可能性があるわ! 安易に統率個体を倒したからといって、このスタンピードが終わるとは思わないで!」

 ミュラーが魔物が接敵するまでの間に、騎士と冒険者に最終確認をしている時だった。

 「な、なんだ、これは!?」

 「し、死体?」

 「ひっ!」

 陣形を組んでいた人達の間に、どこからともなく急に死体が現れたのだ。

 「落ち着いて! なんで出て来たかは、後で考えるわよ! とりあえず今は速やかに排除して!」

 慌てる騎士と冒険者を宥めて、死体を取り除こうとした時、前触れもなく死体が爆発した。

 「ぎゃ!」

 「んぶっ!」

 死体を抱えてた人間は反動で吹き飛んだりしたが大きな怪我は無く、何があったのかと状況を確認しようとしていた。

 「こ、これは…」

 「この匂い…魔物寄せの香水です!」

 「な、なんだって!?」

 (なんてことを…。これを仕組んだ犯人は相当性格が悪いわ。これでは最悪逃げても魔物が追ってくるじゃない)

 ミュラーは、あまりの悪辣さに眉を顰める。
 迎撃しきれない時は街での籠城戦も考えていたのだ。
 しかし、ここまで匂い付けをされてしまうと街に入っても魔物は無理矢理門をこじ開けようとしてくるだろう。

 (アントがいるのが厄介ね。門を壊されなくても、穴を掘って地下から侵入されるかもしれないわ)

 ミュラーは籠城戦を半ば諦め、かなりきつい戦いになるだろうがここで全てを仕留める事を選択した。
 レトはただの嫌がらせとしか考えてなかったが、思わぬファインプレーである。

 「みんな気合いを入れなさい! かなり長い戦いになるわよ!」

 「はっ!」

 「これを仕掛けた奴はかなり狡猾で知恵が回るわよ! 他にも何か仕掛けがあるかもしれないと想定して立ち回りなさい!」

 (やっぱり魔王じゃなくて、人間の仕業が濃厚かしらね。魔物寄せの香水を魔物が手に入れられるとは思わないし。そうなると、誰がこの絵図を描いたのかしら? この街は、商人同士の争いはあっても権力争いとは無縁と聞いていたのだけど)

 ミュラーは戦いながら犯人を特定しようとするが、この街の人間ではない為詳しい情報が無く。
 暫定的に、魔王の可能性を消して人間側の犯行だと考えた。
 長い歴史の中で人型の魔物は居ても、完全に人に見える魔物は居なかったのだ。
 もし、簡単に人間の街に入れる魔物が居る事を知っていたら、何か変わったかもしれない。
 この戦いを見ている魔王がそれを許すとは思えないが。





 「くそっ! いったいどれだけの数がいるんだ! ふざけるな!」

 「口を動かす暇があるならとにかく斬れ! 少しでも数を減らすんだ!」

 「ああ! ああ! 分かっているさ!」

 戦いが始まって、2時間が経過していた。
 既に犠牲者が出始め、相応に数は減らしているものの、段々と戦況は押され気味になってきていた。

 「くっ! ファイヤーボール!」

 ミュラーは、剣で戦いながら合間に魔法を使う。
 かなり長丁場になる事を見越して、魔力を温存しているのだが、そうは言っていられない状況になってきた。

 「怪我した者は一旦下がれ! 私の部下の回復魔法を受けろ!」

 魔法の【回復魔法】はかなり希少である。
 それでも、シュルペニア神聖王国は古くからある大国なだけあって、騎士団に何人かは配属されている。
 レトは、妖狐が早い段階で習得したので珍しくないと思っているが、実際は街に3人居たらいいレベルである。

 (なんとかこの状況を打開したいが…。流石に勝負を仕掛けるにはまだ数が多過ぎる)

 オークとオーガは、最前線でその巨体をもって暴れ回り、アント達はクイーンに統率され連携して襲い掛かってくる。
 オーガが腕を振り回す度に人が吹き飛び、そこに蟻が群がる。
 オーガも最初は獲物を取られた腹いせに、アントを潰していたが、キリがないと思ったのか今は無視している。

 (オーガを抑えに行きたいが、それをすると魔物の殲滅力が落ちる。一体どうすべきなんだ)

 終わりの見えない戦いはモチベーションの低下を招く。
 騎士団は、常日頃から鍛えられているからなんとか耐えられているが、冒険者達はそろそろ限界だった。

 「くそっ! こいつはもうダメだ! 後ろに下げろ!」

 「そんな暇はねぇんだよ!」

 多大な犠牲を覚悟しなければならない。
 ミュラーは非情な決断を下そうとしていた。
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