47 / 184
第三章 人間の街
第44話 スタンピード④
しおりを挟む☆★☆★☆★
「魔物の群れを目視で確認!」
神聖騎士団と冒険者は、眼前に迫り来る魔物の群れに戦慄していた。
あらかじめ、かなりの魔物が向かって来ていると分かってはいたが、いざ見てみるとその数に圧倒される。
「いい? 初動は、とにかく数を減らしなさい! 統率個体を倒して解決する策もあるけど、魔物寄せの香水で狂ってる可能性があるわ! 安易に統率個体を倒したからといって、このスタンピードが終わるとは思わないで!」
ミュラーが魔物が接敵するまでの間に、騎士と冒険者に最終確認をしている時だった。
「な、なんだ、これは!?」
「し、死体?」
「ひっ!」
陣形を組んでいた人達の間に、どこからともなく急に死体が現れたのだ。
「落ち着いて! なんで出て来たかは、後で考えるわよ! とりあえず今は速やかに排除して!」
慌てる騎士と冒険者を宥めて、死体を取り除こうとした時、前触れもなく死体が爆発した。
「ぎゃ!」
「んぶっ!」
死体を抱えてた人間は反動で吹き飛んだりしたが大きな怪我は無く、何があったのかと状況を確認しようとしていた。
「こ、これは…」
「この匂い…魔物寄せの香水です!」
「な、なんだって!?」
(なんてことを…。これを仕組んだ犯人は相当性格が悪いわ。これでは最悪逃げても魔物が追ってくるじゃない)
ミュラーは、あまりの悪辣さに眉を顰める。
迎撃しきれない時は街での籠城戦も考えていたのだ。
しかし、ここまで匂い付けをされてしまうと街に入っても魔物は無理矢理門をこじ開けようとしてくるだろう。
(アントがいるのが厄介ね。門を壊されなくても、穴を掘って地下から侵入されるかもしれないわ)
ミュラーは籠城戦を半ば諦め、かなりきつい戦いになるだろうがここで全てを仕留める事を選択した。
レトはただの嫌がらせとしか考えてなかったが、思わぬファインプレーである。
「みんな気合いを入れなさい! かなり長い戦いになるわよ!」
「はっ!」
「これを仕掛けた奴はかなり狡猾で知恵が回るわよ! 他にも何か仕掛けがあるかもしれないと想定して立ち回りなさい!」
(やっぱり魔王じゃなくて、人間の仕業が濃厚かしらね。魔物寄せの香水を魔物が手に入れられるとは思わないし。そうなると、誰がこの絵図を描いたのかしら? この街は、商人同士の争いはあっても権力争いとは無縁と聞いていたのだけど)
ミュラーは戦いながら犯人を特定しようとするが、この街の人間ではない為詳しい情報が無く。
暫定的に、魔王の可能性を消して人間側の犯行だと考えた。
長い歴史の中で人型の魔物は居ても、完全に人に見える魔物は居なかったのだ。
もし、簡単に人間の街に入れる魔物が居る事を知っていたら、何か変わったかもしれない。
この戦いを見ている魔王がそれを許すとは思えないが。
「くそっ! いったいどれだけの数がいるんだ! ふざけるな!」
「口を動かす暇があるならとにかく斬れ! 少しでも数を減らすんだ!」
「ああ! ああ! 分かっているさ!」
戦いが始まって、2時間が経過していた。
既に犠牲者が出始め、相応に数は減らしているものの、段々と戦況は押され気味になってきていた。
「くっ! ファイヤーボール!」
ミュラーは、剣で戦いながら合間に魔法を使う。
かなり長丁場になる事を見越して、魔力を温存しているのだが、そうは言っていられない状況になってきた。
「怪我した者は一旦下がれ! 私の部下の回復魔法を受けろ!」
魔法の【回復魔法】はかなり希少である。
それでも、シュルペニア神聖王国は古くからある大国なだけあって、騎士団に何人かは配属されている。
レトは、妖狐が早い段階で習得したので珍しくないと思っているが、実際は街に3人居たらいいレベルである。
(なんとかこの状況を打開したいが…。流石に勝負を仕掛けるにはまだ数が多過ぎる)
オークとオーガは、最前線でその巨体をもって暴れ回り、アント達はクイーンに統率され連携して襲い掛かってくる。
オーガが腕を振り回す度に人が吹き飛び、そこに蟻が群がる。
オーガも最初は獲物を取られた腹いせに、アントを潰していたが、キリがないと思ったのか今は無視している。
(オーガを抑えに行きたいが、それをすると魔物の殲滅力が落ちる。一体どうすべきなんだ)
終わりの見えない戦いはモチベーションの低下を招く。
騎士団は、常日頃から鍛えられているからなんとか耐えられているが、冒険者達はそろそろ限界だった。
「くそっ! こいつはもうダメだ! 後ろに下げろ!」
「そんな暇はねぇんだよ!」
多大な犠牲を覚悟しなければならない。
ミュラーは非情な決断を下そうとしていた。
2
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました
たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。
「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」
どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる