サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

第三章 人間の街

第43話 スタンピード③

　「完璧な流れじゃん。後は仕上げだな」

　俺の必死な調整の甲斐あり、アントとオーク達を街道に誘導し、リブラの街に向かわせる事に成功した。
　後2時間もしないうちに、リブラに到着して戦闘が始まるだろう。
　【魔眼】で確認した感じ、リブラも既に魔物が向かってる事に気付いているのか、慌ただしく準備している。
　まあ、偵察っぽいのも来てたしな。
　どんな対応するのか見たくて見逃したけど、思った以上に行動が早い。
　功名心に駆られた無能とかいないのかね。
　そういう奴に邪魔されるのがお約束だと思ってたんだけど、女騎士か領主が優秀なのかな。

　「キュンキュン！」

　「おっ、復活したか。今度、魔物寄せの香水の対策を考えとかないとな」

　またやるかはわからんけど、毎回香水に惑わされてたらめんどくさい。
　多分知能も関係してると思うんだよね。
　オーガなんて、妖狐より現時点で強さは上だろうに、未だに狂ってるし。
　脳筋っぽいもんね。

　クイーンは虫だし。
　虫に考える脳があるのか不明。
　本能で動いてそう。

　「ここから、ちょっと難易度が高い事するからな。周り見張って、俺に誰も近付かせないでくれ」

　「キュン！」

　あー、マルチタスク的な能力が欲しい。
　慣れてきたとはいえ、脳が疲れる。

　俺は遠見の【魔眼】で、門の前に集まってる騎士や冒険者を確認する。
　そして、適当に出来てる人影を複数タグ付けし、取っておきを送り込む。
　
　「さあ、早く到着してくれ。この状態を維持するのはかなり神経を使うんだ」

　ああ。頭が痛い。
　これ、直前で手に入れた魔道具がなかったら、更にしんどかったんだろうな。
　特に、操作補助の効果が大きい。
　でも、なんか成長してる気がするんだよね。
　脳細胞が潰れては再生して活性化してる感じ。
　超再生か？　とか馬鹿な事を考えてるけど、これ寿命削ったりしてないよね？
　筋肉じゃなくて細胞だし。
　魔物の成り立ちがどうなってるのか分かんないし。
　いつか実験したいよね。

　「そろそろ、目視出来る距離に魔物達が到達しそうだな。じゃ、ショータイムの始まりだ！」

　俺はタグ付けしていた影から、俺にちょっかいをかけてきた商会の人間の死体を出す。
　うむうむ。
　急に出て来た死体に、騎士や冒険者はかなり驚いてる様子。
　でも、これだけじゃないんだな。

　「さあ！　更に狂え！　魔物共！　サウンドボム！！」

　俺は遠見の【魔眼】を使って、遠距離から魔法を発動する。
　影から出した死体は、肉片になって散らばった。
　死体に仕込んでいた物と共に。

　「くはっ！　くはははは！」

　死体に仕込んでいたのは、余った魔物寄せの香水だ。
　どうせなら有効活用しようと殺した後に腹を掻っ捌いて、香水をぶち込んでおいた。
　ただでさえ狂ってた魔物の群れがら速度を上げて、人間に襲いかかる。
　死体が急に爆発したのに動揺したのか、人間達の初動が遅れる。
　
　「くくくっ。良い。良いぞ！　人間共の悲鳴がここまで聞こえてくる！」

　ここまで準備した甲斐があったというものよ。
　もう少し近付いて見たいけど我慢かな。
　女騎士のシックスセンスが侮れん。

　「さーて、ここからは暫く観戦だな。人間様の底力というものを見せてもらおう」

　俺はタバコを咥えて、街道から少し離れた森の木の上に座り、人間対魔物の戦いを見守る。
　なんか、今の俺って影の支配者ムーブ出来てない？
　いいね。厨二心をくすぐる展開だ。

　
　まだ始まったばっかりでなんとも言えないけど、意外と拮抗してる。
　うーん。街が潰れる程ではなさそうだな。
　理想は女騎士は瀕死で、他の奴らは全滅。
　そうなってくれると、楽に眷属化の実験が出来る。
　楽するに越した事はないからね。
　女騎士と戦って現時点の俺の実力も知りたい所だけど、それは眷属にしてからも出来るし。
　卑怯かも知れないけど勝てば官軍なのだ。