162 / 184
第五章 魔王討伐
第158話 うぇーい
しおりを挟む竜王が未だにダンマリなので、その後もアギャインとお話を続けていた。
一応攻撃してきた時の為に、初撃は躱せるように警戒はしている。本当に躱せるかは謎だけど。
眷属達も影の中に放り込んでいる。とてもじゃないけど対抗出来るとは思わないしね。
「ねぇ。なんであれは黙ってるの?」
「知ラヌ。マァ 大方ノ 予想ハ ツクガ」
アギャインは全然警戒してないっぽいんだよね。
嫌いなのは相変わらずなようで、かなり睨んでいるけど。これは竜王の性格とかを知ってるが故にかな?
「なに? これ、俺もう帰っていいかな? なんか魔王討伐の気も削がれちゃったし」
「ナンジャ。 我ニ 勝ッタノニ 殺サヌノカ。オ主ガ 言ウ 経験値トヤラハ ガッポリ ジャゾ?」
骨を震わせて楽しそうに笑ってるけど。なんかそんな気分じゃなくなっちゃったもんで。
なんなら眷属にしたいぐらいだ。喋ったら面白いお爺ちゃんって感じだし。
骨にどうやって血を飲ませるのか分からないけど。
「結局少年○ャンプみたいな事になってるな。かつての敵が味方へ。王道的展開だぜ」
でも、それは明日にしたい。
今日はとりあえず疲れたんだよね。魔物になってから寝なくても大丈夫になったけど、今日は流石に寝たい。
「とりあえず今日は休もうかな。明日またお話しようよ」
「クカカカカ!」
え? 今の言葉にどこか面白い事ありました?
なんか腹抱えて笑ってるんだけど。
「クカカカカ! オイ。良イ加減ニ セヌカ。此奴 本当ニ 帰リヨルゾ」
アギャインが笑いながら竜王に話しかける。
えーっと? ちょっとレト君良く分からないんだが? 帰ったらダメだったの?
『うぇいうぇいうぇーい! わざわざ俺ちゃんがカッコ良く登場したってのに無視はないでしょーよ! アギャちゃんが、いつ俺ちゃんの事を紹介してくれるのかワクワクしてたのに、なんのアクションも無く無視って! 竜王ぞ? 我、竜王ぞ? もっと興味を持つべきでしょーが!』
うるさっ! なに? なんか頭の中に直接言葉を叩き込まれた。念話的な?
アギャインも顔を顰めてるし、そっちにも言葉が届いてるっぽい。ほえー。これが念話か。
「相変ワラズ 五月蝿イ 奴ダ。忌々シイ。何故 我ハ コンナ奴ニ 負ケタノダ」
『俺ちゃんが強いからでしょーが! ほら! 早く紹介して! わざわざ縄張りから出て来たんだから!』
「出テ来イ等 頼ンデ オラヌ。ムシロ 邪魔ダ。今スグ 帰レ」
『出て来ないとやばかったんだつーの! 全く! 人間の領域を滅茶苦茶にしてくれちゃって! そういうのは控えてねってお願いしたでしょ? お爺ちゃん、耄碌しちゃったのかな?』
「オ主ガ 来タノハ 戦イガ 終ワッテ カラジャ。今更 来タ所デ ドウニモ ナランジャロウガ。ソレニ 人間ノ 領域ニハ 手ヲ 出シテオラヌ。被害ハ 我ノ 縄張リダケ ジャロウ。最後ニ。我ヨリ オ主ノ 方ガ 歳ヲ 食ッテル ジャロウ。オ主ヨリ 遥カニ 若イワ」
「え? もう終わったの? アギャちゃん負けちゃった感じ? ぷふー! アギャちゃんまた負けちゃったんだー! 残念だったねー!」
「オ主ガ! 動クナト 言ッタ カラジャ!! 我ガ モット 早イ 段階デ 動ケテイタラ 此奴ガ 成長スル 前ニ 叩ケテ オッタノジャ!」
「えぇー? 負け惜しみー? アギャちゃん見苦しいよー? 長年魔王に君臨する者として恥ずかしくないのかなー? ぷふー!」
レト君置いてけぼりなんだけど。
分かったのは竜王がうざいキャラだって事だよね。とてつもなく。俺は関わりたくないなぁ。
いつか見てみたいとは思ってたけど、もう満足です。向こう1000年くらいは会わなくても大丈夫かな。どうせ当分勝てそうにないし。
はぁ。竜王ってもっと威厳がある感じだと思ってたんだけどなぁ。なんか期待を裏切られた気分。
チャラい煽りキャラって、物語序盤のやられキャラだと思うんだけど。
なんでこんな奴が世界最強やってんですかねぇ。
アギャインの方が、よっぽど威厳があるよ。
言い合いしてる今はそうと思えないけど。
「可哀想なアギャイン。君の犠牲は忘れないよ」
俺は未だに子供の様にギャーギャーも言い合いをしている二人の魔王を横目に、ひっそりと影の中へ帰還した。
当分終わりそうにないし。なんか人間の領域への被害もアギャインが勝手に罪を被ってるし。
あれはテレサが適当に魔法を飛ばしたせいなんだけど。まぁ、バレなきゃいいよね。
「お帰りなさいませ」
グレースを筆頭に眷属一同がお出迎えしてくれた。竜王が出て来た瞬間に影の中に放り込んだからね。心配しててくれたんだろう。
「うん。避難してきました」
「? 何かあったのですか? 【シックスセンス】でも特に反応は無かったので、安心していたんですが」
竜王の念話的なサムシングは眷属達には聞こえてなかったらしい。あ、後ユニークスキルでも竜王はあてにならないかもしれないぞ。俺の【魔眼】も弾かれたし。
って事で軽く説明。
「竜王とはそういう方なんですね。なんだか、拍子抜けです」
「それな。戦ったら負けは間違いないけど」
「あの圧力は凄まじかったですからね。見ただけで膝をつきたくなりました」
いつか俺もあんな感じになれるんだろうか。吸血鬼の王ぐらいにならないと無理か?
まだ侯爵だもんなぁ。
そんな事を思いながら就寝。今日はみんな疲れてたのでお遊びもおせっせも無しだ。
近くに竜王やアギャインが居るのに寝るのは中々無防備だが、あいつらは手を出して来ないだろう。
多分。そんな気がするってだけなんだけど。
『うぇーい! レトくーん! 俺ちゃん達を無視するとは良い度胸じゃーん!』
翌朝。影の中で寝ていると竜王に起こされた。
なんで俺の名前知ってんだよ。異能か?
なんか天井から頭をニュっと出してこっちをガン見している。
影の中ってのは、入る時は影の中に潜る感じで、出る時は意思を持って軽くジャンプしたら出られるんだけど。
竜王は無理矢理こじ開けて顔を覗かせてる感じ。
初めて影に干渉されたな。どうやってんだろ。
とりあえずなんか怒ってるみたいだし、影から出るかな。疲れも取れたし。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる