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第五章 魔王討伐
第157話 アギャインとお話
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魔王同士がぶつかった気配を感じて目が覚める。
しかし、目は瞑ったまま。
それから約5分。エンペラー・リッチの縄張り付近の人間の領域が無差別に破壊され始めた。
それを感知して、思わず顔を顰める。
一応、動くなとお願いしておいたのだが。もう一人の魔王とは繋がりが希薄なせいで、こちらから声を掛けられず、結局衝突してしまった。
何かの間違いで衝突する前に死んでくれたら楽で良かったのだが。
別に人間の街や国がどうなろうと少しぐらいなら構わない。
寝てる間に勝手にまた増えてるからだ。
しかし今回の魔王同士の衝突。
これは放っておくと、下手したら壊滅的な被害になりかねない。
遥か昔の魔王同士の戦いのせいで、一時期人間は絶滅寸前まで追い込まれた事もあるのだ。
それ以来、魔王はなるべく縄張りから動かないように協定を結び、今の世界がある。
勿論、ちょっかいをかけられたのであれば反撃はしても良い。なるべく人間の数は残しましょうねと竜王自ら全ての魔王を仲裁して決めた協定なのだ。
それが竜王の仕事なのだから。
しかし今回の新しき魔王。
生まれて間もないのに、かなり活発に動いている。見た目を活かして人間の世界に紛れ込み迷宮を攻略するなど前代未聞。
驚くべきスピードで進化を繰り返し、一気に強者へと成り上がっている。
極め付けは※※※※様に目をかけられている。
名付け元を見て驚いた。三柱の神の中でも、異端で面白い事にしか興味がない。快楽主義な所があり、竜王は何度か尻拭いをした事がある程だ。
そうなってくると、自分が干渉しすぎるのも良くない。また、面倒事を押し付けられても嫌だし。
しかし、人間共が減っていくのは困る。
自分の仕事に差し障りが出てしまう。
それでも戦えばエンペラー・リッチは負けない。そう思っていたからこそ、ギリギリまで動かないようにお願いした。しかし、戦況はあまりよろしくないみたいだ。
かなり人間の領域に被害が出ている。エンペラー・リッチなら上手いことやってくれると思っていたのだが。
竜王はため息を一つ吐き、自分の目論見が甘かった事を知る。そしてこれ以上被害を出さない為に飛び立った。
☆★☆★☆★
俺とエンペラー・リッチの戦いで森がすっかり更地になっている。
そしてそこにゆっくりと降り立った竜王。
俺は早速とばかりに【魔眼】で解析しようとしたのだが。
「? 弾かれた? 初体験」
今までどんな相手でも見る事ができたのに。
それこそ、戦うまでは格上であったであろう、エンペラー・リッチにも通用した。
それなのに、名前すら見えない。
「なんだ。ただの化け物か」
ゆっくりしてると思うでしょ? これね、正直どうしようもない。
勝てる気が全くしないし、逃げれる気もしない。
それなら諦めて現実逃避するってもんよ。
「エンペラー・リッチさん…えーっと、アギャインって呼ぶね。竜王に会った事あるの?」
「クカカカカ。我ノ 生前ノ 名前ヲ 良ク 知ッテオルノ。ソレト 竜王ニハ 人間ダッタ頃ト 魔物ニ ナッテカラト 二度勝負ヲ挑ンデ 敗北シテオル」
竜王は降り立ってから一向に喋らないで、こちらを観察しているので、仕方なくアギャインに話しかける。
竜王が登場した時に何か知ってそうな雰囲気だったし、情報があったらと思って聞いてみたんだけど、思ったより因縁があるそうな。
「何? 生前? アギャインは元は人間だったの?」
「ウム。正確ニハ エルフジャガ」
エルフ!? ここに来て初登場!!
まさか生きてるエルフに会う前に、アンデッドのエルフと出会ってしまうとは!
ほえー。その割には耳が尖ったりしてないな?
「クカカカカ! 気付イタラ 無クナッテ オッタワ!」
軽っ。耳ってエルフからしたら重要なんじゃないの? まぁ、ラノベ知識なんだけど。
それからアギャインの話を聞いてると、生前に竜王を討伐する為の軍を各国が起こしたらしく、それに参加したらしい。
まぁ、あっさりと壊滅させられたらしいけど。
で、気付けばスケルトンになっていたと。そこから進化を繰り返して、いつの間にか異能も覚えてて。
「で、500万のアンデッドを率いて竜王に再戦を挑むも敗れたと」
「ウム。昔過ギテ イツノ 話カモ 忘レテ シマッタガ」
その後になんやかんやあって縄張りに引きこもるようになったらしい。
そのなんやかんやはぼかされたので言いたくない事なんだろう。
「良くあれに生前負けてもう一回挑もうと思ったな。今の俺ですら全く勝てる気しないぞ?」
「クカカカカ。我モ 若カッタ。忌々シイガ アヤツハ 別格ジャ」
アギャインにこれだけ言わせるって事は相当強いんだろうなぁ。異世界すげぇ。当分飽きないね、これは。
「他の魔王は? ってか、魔王ってどういう事か知ってる?」
俺は解析のお陰で知ってるんだけど。
他の魔王は知る術がないもんね。
「特別ナ 力ヲ 持ッタ 魔物ノ事 ジャロウ? アノデカブツニ 聞カサレタワ」
顎をしゃくって竜王に向ける。
滅茶苦茶嫌ってるじゃん。まぁ、一回殺されてるんだしその気持ちは分からんでもないけど。
「デ 他ノ魔王 ジャッタカ。我ハ 会ッタ事ハ ナイノォ。我ヨリモ 後ニ 生マレタ ラシイガ」
本当に嫌そうな感じで竜王を見るよね。顔は骨なのに表情が豊かと言いますか。
これも竜王から聞いたんだろうか。結構魔王同士で情報共有とかしてる感じなの?
俺、仲間外れなんだけど? ってか、もしかして俺が喧嘩を売ったのは不味い感じ?
上位存在! 助けてくれたまえ! 好きにして良いって言われたから好き放題やってるのに!
なんか竜王さんが出張ってきたじゃない!
未だに喋らないし、激おこぷんぷん丸なのかしらん?
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