175 / 184
第六章 ゆるり旅
第171話 王家主催
しおりを挟む「王家主催ってまぁまぁ狂ってるよな」
「普通のオークションならまだしも裏オークションですからね」
情報収集をし始めてから三日。
ようやくオークションの全貌が分かった。
一日目二日目は空振りで貴族が噛んでないのではと思ったけど、それよりも上が絡んでたとは。
「保管場所も王城なんだよなぁ」
「ある意味一番安全ではあります」
そのオークションに手を出すって事は、王家に喧嘩を売るって事だもんな。
そりゃ、出品者も安心して品を預けれる訳だ。
「まぁ、俺には関係ないが」
「決行予定日はオークションの前日でよろしいですか?」
「よろしいです」
そこに面白そうな物があるのならば。
レト君が行かない訳がない。もしかしたら王族の方々が亡くなってしまうかもしれないけど、それはご愛嬌。アコギな商売をしようとした代償として受け入れてくれたまえ。
勇者レト・ノックスは悪行を見逃しません。
「ついでに王城にあるだろう、宝物庫も襲撃しちゃおうかな。楽しみになってきた」
「それなりに大きな国です。しっかりと溜め込んでる事でしょう」
この盗みが原因で国が割れたりしないかな? そして内乱が起こったり…。他国にチャンスとばかりに戦争ふっかけられたり…。
「ふむぅ。これは竜王に怒られるか? いやいや、原因を作ったのは俺かもしれないけど、最終的に行動を起こすのは人間だし? 俺は悪くないよね。まだ仮定の話だし」
「国が無くなる程の騒ぎにはならないので大丈夫でしょう」
うんうん。大丈夫。俺は悪くない。
まともな国家運営をしてたら、内乱なんて起こらないさ。
オークション前日まで暇だなぁと考えながら、影の中を見渡す。
各眷属は好きな事をしていて、ぼーっと見てるだけでも面白い。
俺は煙草をぷかぷかさせながら、グレースに膝枕してもらいつつ、各眷属の様子を眺める。
「この術式は初めて見るんだぞー」
「フム。ココハ 火属性ト 同ジ デハ?」
「ここが違うんだぞ」
「ムッ。確カニ」
ウェインは昨日買い物でいっぱい買った魔道具を早速バラしている。
アギャインはそれを面白そうに手伝う。魔道具作りに興味があるのかな。リッチが研究者ってのは、中々それっぽいけど。
「これは食べれるの?」
「………(コクコク)」
「あんまり意味があるとは思えないの」
「………(ワタワタ)」
「はぁ。分かったの」
「………(ぱぁぁあ)」
テレサとヴェガは何やら新しい事に挑戦するらしい。【捕食】で魔法を食べて覚えれるかの実験だ。
どうやらヴェガは魔法が使いたいらしい。でも人間から捕食しても能力をラーニングするのは低確率だし、魔法を覚えるかはランダムだ。
それなら手っ取り早く魔法を食べて習得出来るか試してみようと思ったんだろう。
早速【火炎魔法】を食べようとして火傷してるみたいだけど。無理なんじゃないかなぁ。
「ゴギャッシュ!」
「キュキュキュ」
妲己とアシュラはなんていうか、いつも通り。
妲己のもふもふに埋もれて昼寝をしているアシュラに尻尾でちょっかいをかけてくしゃみを誘発。
それを見て楽しそうに笑っている。普段は聖母だけど、妲己は悪戯も好きだからなぁ。
子供組とかヴェガには優しく接するけど、アシュラとか俺には茶目っ気が多い。
「うむうむ。うちの眷属は今日も平和ですな」
「ここ最近、戦い続きでしたからね。リフレッシュ期間ですよ」
そうね。迷宮攻略から超越者と戦って、そのまま魔王とその下僕達との激闘だ。
たまにはゆっくりする時間があっても良いだろう。いつもお疲れ様です。
☆★☆★☆★
「陛下。こちらが例の催しの概要になります」
「うむ」
王城の執務室。
いつもの様に書類処理をしていると、宰相が入室して、一枚の紙を渡す。
王はそれをしっかりと読んでからサインする。
「警備体制に問題はないか?」
「はっ。万事問題ありませぬ」
「であるか」
例の催し。裏オークションはこの国では毎年王家主催で行われる、知る人ぞ知る一大イベントだ。
合法非合法問わずの品が各国から流れてきて、王家の貴重な財源になっている。
「今年も品が多いな。我が国からするとありがたい限りだが、良くもまぁこんなに毎年集まるものだ」
出品リストを見ながら王は呟く。
芸術品や魔道具、珍しい宝石や骨董品。
そして人。
「ん? エルフだと?」
「はい。どうやら今年の人部門は盛り上がりそうです」
エルフの出品を見て王は驚く。
エルフは引きこもり種族で滅多に森から出てこない。森の御神木とやらを崇めて質素に暮らしているらしい。
「よく捕まえれたな」
「古代の魔道具を使ったみたいです。なんでも一定量の魔力なら封じられるとか」
エルフの戦闘力は非常に高い。
接近戦はそうでもないが、遠距離からの魔法力は人間より遥かに上だ。
なんでも、魔法書が無くても魔法を使える術があるらしく、エルフと戦うには大国ぐらいの戦闘力が必要になるとか。
「なら良い。売るまでは大人しくしてもらわんとな。しっかり警備するように伝えておけ」
「御意」
その後、オークションに関係ない話を10分程してから宰相は退室した。
(エルフか。オークションに出さず、我が国の兵として雇用出来ぬものか。いや、欲しければ落札するしかないのかの)
18
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる