未冠の大器のやり直し

Jaja

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第2章 夏の始まり

第42話 試合前

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 「豹馬ー! 待っとったでー!」

 神宮球場に着くと、満面の笑みで霊山が待っていた。

 「げっ! なんでここにいるんだよ…」

 「なんや嫌そうな顔して! 僕30分も前から待っとったんやで!」

 「知るかよ! 俺はお前に用は無いんだよ!」

 なんで、俺はこんなに執着されてるんだろうか。
 30分ってこいつチーム行動してないの?

 「お前だけ単独行動してるの? 普通は怒られない?」

 「ええねんええねん! 監督に情報貰ってきますって言ってきたから!」

 いや、あげないが?
 逆に貰えると思ったのか、建前なのか。
 こいつの考えてる事はわからぬ。

 「世代No.1投手を決める戦いやで!? 準備は万端やろな?」

 「え? お前投げんの?」

 「いや? ベンチやで?」

 お前が情報ポロリしてどうすんだ。
 霊山がベンチって事は、やっぱ菊池が投げるんかな。

 「じゃあ決めれないじゃん。まぁお前が投げようが投げまいが俺のNo.1は変わらんが」

 「なんやて!? それは聞き捨てならんで!」

 「えーっと? 白馬君に3打数2安打1ホーマー? ぷぷっ。点取られてるじゃん。俺は4打数2安打で打点は付けられてませーん。はい、これで明らかですよね?」

 ネタは上がってんだよ!!
 今日もしマウントを取る事があった時の為に昨日調べたんだ!

 「うぐっ。豹馬だって点取られてるやろがい! 引き分けや! 引き分け!」

 「俺は内野ゴロの間に一点。霊山はホームランで一点。ピッチャーの過失はもう、ね?」

 「一点は一点や! これは認めへんで!」

 「はぁぁ。仕方ない。霊山が可哀想だから黙ってようと思ってたのに。仕方ない。…俺は試合後に白馬君と連絡先交換しましたー。霊山は? してないよね? 白馬君に認知されてないんじゃないですかー?」

 「そ、そんな!? う、嘘や! 僕は聞かれてないのに…」

 ガクッと膝を着いた霊山。
 ふははははは! どうやら勝負あったようだな! これで世代No.1投手の称号は俺のものよ!

 「証拠や」

 「ん?」

 「白馬と連絡先交換した証拠をみせてみぃ! 豹馬のホラかもしれんからな!」

 あーやだやだ。負け惜しみじゃんね。
 まぁ? 必死な霊山の為に、バシッと証拠を突きつけてやる。

 「ほらよ。これだ」

 俺は、白馬君とのアイポンを取り出して白馬君とのトーク履歴を見せる。

 「くっ! 見る限り本物や…僕は認知されてなかったんや…ん?」

 悔しそうな顔から一転。
 不思議な物を見る様にアイポンを凝視している。

 「どうした?」

 「この、漆黒の白馬ってなんや?」

 あー、忘れてた。
 白馬君はちょっと不治の病にかかってらっしゃるんだった。
 あの爽やかイケメンからは想像出来ないよなぁ。

 「ぶふっ! まさか白馬って思春期なんか?」

 「おい! 笑ってやるなよ! 誰しもが通った道だろうが! お前だって変化球に必殺技の名前とか付けた事あるだろ? それと一緒だよ! 白馬君はちょっと来るのが遅かっただけ!」

 「うひゃひゃひゃ! これは想像してへんかったわ! そうかぁ。あの白馬がなぁ。で、豹馬? 正直に言えや。お前も笑ったやろ?」

 「そりゃもう大爆笑よ! 打席入って打つ時に、
【ダークネスセイバー】!! とか心の中で叫びながら打ってるとか想像してみろ? 笑わずにいられるかってんだ。しかもあのイケメンで」

 「「あっはっはっはっ!!」」

 「パーン! もう行くよー!」

 俺と霊山で笑っているとタイガに呼ばれた。

 「じゃあもう行くよ。試合でな」

 「負けへんで!」

 霊山と別れてチームと合流する。

 「随分盛り上がってたね? やっぱり似た者同士で仲が良いんだね」

 「はぁ? ふざけるな! 仲良くなんかないやい!」

 「はいはい」
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