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第6章 春到来
第136話 VS江陵1
しおりを挟む試合当日。
しっかり寝れた金子はやる気充分といった顔つき。出来はいざ試合が始まってみないと分からないが。
今日は龍宮高校が後攻なので、先制点を取ってもらって、楽な気分で投げるという事が出来ない。
先発で金子が発表された時も、甲子園からは落胆の声が上がったし、更にプレッシャーだろう。
俺が完全試合したせいでそれを目当てに見に来た人もいるだろうし。
不甲斐ないピッチングをすると、代えろコールがある可能性も否定出来ない。
「なんかあれだね。ここまで観客に期待されてないと、逆に気にならなくなってくるよ」
金子は大丈夫かなと声をかけに行ったが、本人はそこまで気にして無い模様。
掲示板効果恐ろしや。金子の精神力が一段アップしてやがる。
一回表。
初球からスローカーブを投げて、観客をどよめかせる。球速が100キロ出てないしね。
コールはストライク。コースは微妙だったけど、これぐらい遅かったら打てという事だろう。
2球目は普通のカーブ。しかし、右打者の肩口から大きく曲がり、バッターは腰が引けてしまっていた。これでツーストライクと2種のカーブで追い込んだ。球速は110キロとさっきよりも速いが打てない事はなかった筈だ。
しかし、そこはカーブマスター。カーブだけで緩急差をつけるという意味の分からない事をして、あっさりと追い込んだ。
「タイガも中々面白いリードするな。それに応える金子も良い感じだし」
「抜いたボールをあそこまでコントロール出来るのが凄いよね」
「そっすね。俺もナックルカーブはコントロール甘めになりがちですし」
キャプテンとベンチの最前列から金子を見守る。
これが親の心境か。なんか金子の巣立ちを見ている様な感覚になるね。
3球目はアウトコースへパワーカーブ。
カーブにしては速いボールで、球速は125キロ。
バッターは手が出ずに三球三振である。
「遅いカーブ、普通のカーブ、速いカーブか。あそこまで投げ分け出来たら楽しいだろうな」
カーブの才能は俺以上。
しかも変化量が多くてギュンギュン曲がるから見てて面白いんだよね。
最初は先発金子が発表されて不満だらけだった甲子園はあっさり掌を返して、歓声に包まれる。
この投球だけで、すべての不満が払拭された訳じゃないだろうけど、少なくとも退屈しない試合になると分かってもらえたんじゃないかな。
その後2番をセカンドゴロに抑えて、3番をファーストフライ。
三者凡退に抑えて、嬉しそうにベンチに戻ってきた。
「いやー、最初のタイガのリードにはびっくりした…けどね。でも、甲子園の歓声は気持ちよかったなぁ」
「お前、この回ストレート投げてないよな?」
「全部カーブだよ。だって俺はカーブマスターだからね!」
俺が流行らそうとした時は、嫌そうな顔してたくせに。すっかり気に入っちゃってるじゃん。
いやー、これは掲示板民の働きが大きいですな。
今度太晴君に伝えておこう。
「ささっ! 金子が文句無い働きをしたんだから、バッターの皆さんも景気良くお願いしますよ!」
「打てないお前だけには言われたくない」
レオンに正論パンチを貰ってしまいました。
ぴえん。
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