GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

文字の大きさ
上 下
36 / 267
― 第二章・それぞれの成長 ―

第36話 手合わせ

しおりを挟む
凛琥りくたちが、紫蓮しれんらと共に鍛錬するようになってから、10日が経過した。

【クレリック】の永美香えみかは割と多く休憩しがちだが、【ウィッチ魔女】である幸永歌さえかと同様に、“杖”を槍に見立てての攻撃や防御に、武闘家の体捌たいさばききを教わっている。

清虎きよとらは、嬉しくて仕方ないようで、毎日、見物に来ていた。

この日も、訓練場の壁際に設置されているベンチに腰掛けて、孫たちの成長に〝ニコニコ〟していたのだが…。

幸永歌に、

「お祖父じい様!」
「ただ居るだけだと、こっちの気が散るから出ていってくんない!?」

と言われ、

「なぬッ?!」

と、ショックを受け、〝ションボリ〟したのである。

気まずい雰囲気に居たたまれなくなった千代ちよが、

「あー…、清虎様が自ら指導なさっては如何でしょうか?」

と窺う。

これに、永虎ながとらが、

「ぜひ、お願いします。」

と、お辞儀して、紫蓮が、

「俺も…。」

と申し出た。

「俺が先で良いか?」

と聞く永虎に、

「ああ。」

と、紫蓮が頷いたところ、“虎の毛皮”で作られた羽織を脱いだ侍王が、亜空間から鉄刀を2本取り出しつつ、

二人同時に・・・・・、で、構わんぞ。」

〝ニヤリ〟と笑みを浮かべたのである。


永虎が振り下ろす大きめの鉄剣を、清虎が右の鉄刀で内側か外側へ、

ガンッ!

と逸らす。

続けて、紫蓮の突きを、左の鉄刀で、上に、

カァンッ!

と、払う。

永虎と紫蓮が、縦横無尽に攻撃を仕掛けるも、その全てを侍王が〝カンッ!〟〝キンッ!〟といった具合に防ぎながら、

「ふむ。どちらも、なかなか素晴らしい。」
「じゃが…。」

と呟いた。

次の瞬間、左右の鉄刀で、永虎と紫蓮の腹部を、

ドンッ!!

と、叩いたのである。

「ぐッ!」

「ぬッ!」

と苦痛で顔を歪めた彼らが、その場に膝を屈し、見学していた凛琥が、

(二人がかりでも余裕にあしらわれてしまうのかよ…。)

と、目を丸くする。

「永虎も、紫蓮も、決して悪くない太刀筋であった。」
「より精進していけば、かなり強くなるであろう。」
「期待しておるぞ。」

と清虎が告げたタイミングで、幸永歌が、

「お祖父様、すっごぉおーいッ!!」
「私、見直したわ!」

と、目を輝かせた。

これに、侍王が、

「ん? そうか??」
「まぁ…、そうじゃろうて!」
「儂は、結構、凄いんじゃよ!」
「はははははッ!!」

と鼻高々になる。

そこへ入室してきた“影”に、

「清虎様、情報の粗方あらかたが集まってきております。」

と、伝えられ、

「そうか。」
「ならば、部屋を変えるとしよう。」

と真顔になる総帥であった―。
しおりを挟む

処理中です...