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― 第二章・それぞれの成長 ―
第37話 対応策
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自室の椅子に腰掛け、枡に注いだ清酒で〝グイッ〟と喉を潤した侍王が、
「して?」
と“影”に尋ねた。
「は!」
と、軽く会釈した彼が、[南陸第十神国]の、ここまでの動きを報告していく。
影によれば、先のヒーゴン軍との一戦に敗れた見せしめとして、この国の神々もまた、幾つかの街を破壊したそうだ。
その結果、行くあてのない難民が、各地で途方に暮れているらしい。
「なに?!」
「未だに、そんな馬鹿げた“制裁”を下しておるのか?」
「そのような事をすれば、いずれ自分たちに跳ね返ってこように…。」
「“因果応報”を知らぬのか、はたまた〝神ゆえに全てが許される〟とでも思い上がっておるのか…。」
「いずれにせよ、いろいろと片付けねばのぉ。」
と清虎の目つきが鋭くなる。
「如何いたします?」
と、窺う影に、
「うむ…。」
「南方領の中心都市を押さえるべく、軍を北上させよう。」
「それと同時に、難民を受け入れる。」
「すまぬが、影よ。配下を使って、彷徨っている者たちを、こちらに誘導してくれ。」
と述べる総帥であった。
5日後――。
準備を終えた8万の軍勢が北へと向かう。
城塞都市に2万の兵を残して。
国によっては、留守居頭とも大留守居とも呼ばれている“城代”には、守戦が巧みである40代半ばの男性騎士が選ばれた。
軍務補佐役には30代後半の女性武闘家が、政務補佐役には60代前半の魔術師が就いたようだ。
ちなみに、この【騎士】は人間で、【武闘家】は豹の獣人であり、【魔術師】は山羊の半獣である。
城塞都市の北門にて、
「あとは任せたぞ。」
と、告げる侍王に、
「ご武運を。」
と頭を下げる3人だった。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、…。
と、進軍する大集団の中に、永虎/幸永歌/永美香/凛琥の姿もあった。
新たに清虎の近衛兵となったこの4人も、紫蓮らと同じ軍服にロングコートを着用している。
「しっかし、寒いわね~。」
と口を開いた幸永歌の白い息が、風に吹かれた。
千代の、
「それでは、野営の際に、いつも通り体を動かして温まりましょう。」
との発言に、
「えッ?!」
と、嫌そうな表情になったのは永美香である。
「いついかなる時も、鍛錬を怠るべきではないぞ。」
と主張する永虎に、幸永歌までもが、
「ええ~?」
と、ゲンナリしたようだ。
「けど、さ…。」
「俺らにとっては、ここまでの規模の戦は初めてのことだし、以前、紫蓮たちが相手した神々よりも強いんだろ?今回の敵は。」
「だったら、少しでも成長しておかないと。」
「自分の身は自分で守れるくらいにはさ。」
と凛琥が意見する。
これに、
「だいぶ、男らしい顔つきになったな。」
と、永虎が少なからず驚き、幸永歌と永美香がニヤつく。
「!」
「茶化すなよ…。」
と凛琥が恥ずかしそうに俯くも、紫蓮の、
「お前は間違っていない。」
「だから、堂々としてろよ。」
との助け舟に、
「そう…、か?」
「うん!そうだよな!」
と、誇らしげに胸を張るのだった―。
「して?」
と“影”に尋ねた。
「は!」
と、軽く会釈した彼が、[南陸第十神国]の、ここまでの動きを報告していく。
影によれば、先のヒーゴン軍との一戦に敗れた見せしめとして、この国の神々もまた、幾つかの街を破壊したそうだ。
その結果、行くあてのない難民が、各地で途方に暮れているらしい。
「なに?!」
「未だに、そんな馬鹿げた“制裁”を下しておるのか?」
「そのような事をすれば、いずれ自分たちに跳ね返ってこように…。」
「“因果応報”を知らぬのか、はたまた〝神ゆえに全てが許される〟とでも思い上がっておるのか…。」
「いずれにせよ、いろいろと片付けねばのぉ。」
と清虎の目つきが鋭くなる。
「如何いたします?」
と、窺う影に、
「うむ…。」
「南方領の中心都市を押さえるべく、軍を北上させよう。」
「それと同時に、難民を受け入れる。」
「すまぬが、影よ。配下を使って、彷徨っている者たちを、こちらに誘導してくれ。」
と述べる総帥であった。
5日後――。
準備を終えた8万の軍勢が北へと向かう。
城塞都市に2万の兵を残して。
国によっては、留守居頭とも大留守居とも呼ばれている“城代”には、守戦が巧みである40代半ばの男性騎士が選ばれた。
軍務補佐役には30代後半の女性武闘家が、政務補佐役には60代前半の魔術師が就いたようだ。
ちなみに、この【騎士】は人間で、【武闘家】は豹の獣人であり、【魔術師】は山羊の半獣である。
城塞都市の北門にて、
「あとは任せたぞ。」
と、告げる侍王に、
「ご武運を。」
と頭を下げる3人だった。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、…。
と、進軍する大集団の中に、永虎/幸永歌/永美香/凛琥の姿もあった。
新たに清虎の近衛兵となったこの4人も、紫蓮らと同じ軍服にロングコートを着用している。
「しっかし、寒いわね~。」
と口を開いた幸永歌の白い息が、風に吹かれた。
千代の、
「それでは、野営の際に、いつも通り体を動かして温まりましょう。」
との発言に、
「えッ?!」
と、嫌そうな表情になったのは永美香である。
「いついかなる時も、鍛錬を怠るべきではないぞ。」
と主張する永虎に、幸永歌までもが、
「ええ~?」
と、ゲンナリしたようだ。
「けど、さ…。」
「俺らにとっては、ここまでの規模の戦は初めてのことだし、以前、紫蓮たちが相手した神々よりも強いんだろ?今回の敵は。」
「だったら、少しでも成長しておかないと。」
「自分の身は自分で守れるくらいにはさ。」
と凛琥が意見する。
これに、
「だいぶ、男らしい顔つきになったな。」
と、永虎が少なからず驚き、幸永歌と永美香がニヤつく。
「!」
「茶化すなよ…。」
と凛琥が恥ずかしそうに俯くも、紫蓮の、
「お前は間違っていない。」
「だから、堂々としてろよ。」
との助け舟に、
「そう…、か?」
「うん!そうだよな!」
と、誇らしげに胸を張るのだった―。
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