GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

文字の大きさ
上 下
218 / 268
― 第五章・魔の領域 ―

第218話 用談

しおりを挟む
帆柱マストに設けられている“見張り台”で、戦況を望遠鏡で観察していた20代半ばの男性が、自身のブレスレットを扱い、

「神々は残らず絶命した模様です!」

誰かに伝える。

「そう。」
「分かったわ。」
「それじゃあ、降伏の白旗を揚げるように、全艦に伝えましょう。」

こう返したのは、神次かみつぐの配下だという女性だった…。


数分後――。

サガーミィー国主と、その長男は、妖怪らの[母船]に赴いている。

甲板かんぱんにて。

国主が、

「お陰で国家存亡の危機を脱する事ができた。」
「ご助勢、心より感謝いたす。」

鬼王きおうに会釈したところで、左隣に〝スゥ―ッ〟と停泊した[木製の船]から、

「お父様ぁ!! お兄様ぁー!」

若い女性が右手を振ってきた。

彼女を認識した国主が、

「ナーガリー!!」
「五日も前に戻って来るよう告げておったというのに、この“じゃじゃ馬”めが!」
「港に着いたら説教する故、覚悟しておれ!!」

指差しながら怒鳴ったのである。

そんな父親に対し、

「でしたら、国元には帰らず、鬼王陛下の所で、お世話になりますわ。」

ナーガリーが、〝ぷいッ〟と、そっぽを向く。

娘の態度に、

「な?!」
「あ……。」

国主が唖然としたら、

「ふははははははッ!」

高笑いした鬼王が、

「ご息女は、なかなかの“器の持ち主”ぞ。」
「叩けば壊れる。」
「上手く育てられよ。」

このように述べたのであった。

〝ふ…む〟と頷いて、

「お心遣い、かたじけない。」

とりあえずは場を収めた国主である。

「それでは、此度の御礼おんれいに関する報酬の話しや、祝勝会を開きたいので、こちらの城までお越しいただいても?」

気を取り直した国主が提案したところ、

「その件は、使者を何体か送るので、交渉していただきたい。」
「我は、一旦、自国で軍勢を再編成した後に、“東陸とうりく第四神国しんこく”に攻め込む腹づもりゆえ、時が惜しいでな。」

〝ニィ〟と鬼王が口元を緩めた。

そういった宣言に、サガーミィー国主と、息子や、娘&護衛隊が、〝え!?〟と目を丸くする。

これらの反応を受けて、

「実は、我が国内にて、年々、妖怪の数が増えていっておってな。」
「民衆の生活が厳しくなってきているのだよ。」
「このため、〝どこか適当な神の国を制圧しよう〟との意見が割と多くなってきたので、標的を探しておったのだ。」
「そこで。」
「都合がいいから“東陸第四神国”を攻略しようと考えた次第である。」

鬼王が経緯を説明したのだった。

その流れで、

「そういえば。」
「今回、参加した傭兵らのなかには、“南の大陸”に渡りたがっている者も少なからずおるらしい。」
「申し訳ないが、面倒を見てもらって構わんかのう??」

こう尋ねた鬼王である。

それに、

「承知いたした。」
「では、希望者を“サガーミィーの船”へと移動させましょうぞ。」

快諾する国主であった―。
しおりを挟む

処理中です...