GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第五章・魔の領域 ―

第219話 安らい

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船の“渡し板”を歩く途中で立ち止まり、振り返った櫻莉おうりが、

紫蓮しれん、あんたらのことは清虎きよとら様がたに報せとくよ。」
「きっと、お喜びになられるだろうさ。」

微笑みながら話しかけた。

更には、

「そのうち顔を見せに来るが良い。」
総出そうでで歓迎しようぞ。」

バーガインが優しく目を細める。

「ああ。」
「やがては、な。」

こう応えた紫蓮と、別れを告げて、[サガーミィーの艦隊]に乗り込む獣人たちだった。

その左斜め前に停泊した別の船より、

「紫蓮さーん!! 皆さぁーん!」
「本当に、ありがとうございましたー!!」
「いつかわたくしどものお城にも足を運んでくださいねぇー!」
「必ず宴を催しますのでー!!」

ナーガリーが約束したのである。

かくして、それぞれが手を振り合って、別れゆく。

なお、[ゴッド・スレイヤーズ]と[餓狼がろう蒼群そうぐん]は、鬼王きおうらと行動を共にするみたいだ……。


およそ5日が経った夕刻――。

[妖怪ノ国]の波止場はとばに、全ての戦艦が到着した。

なかには“東陸とうりく第四神国しんこく”の船も何艘か見受けられる。

これらは、神次かみつぐの配下など、捕虜になった人々であった。

とはいえ。

神国を攻略するために、彼女達から情報を聞き出したい鬼王としては、冷遇するつもりはないらしい。

港にて。

「まずは、宿を探すのがいいでしょうね。」
「城の屋敷は、もう利用できないでしょうから。」

そう述べたのは、金色の短髪&細長いメガネといった【魔術士】のタリアノである。

「なんでだ?」

これまた“金色短髪”ではあるが、筋肉質な、【騎士】たるグーランが素朴な疑問を投げかけたところ、

「我々は“使節団”ではなくなっていますので、この国の“客人”という扱いにはならないでしょう。」
「ともなれば、一介の冒険者に御殿を貸してはくれませんよ、きっと。」

そのように答えるタリアノだった。

「確かに、言えてるわね。」

“赤髪セミロング”の【剣士】ことペイニーが〝ふむ〟と頷き、

「それじゃあ、どうします??」

“銀色マッシュショートヘアー”である【武闘家】のランダ―が誰ともなく伺う。

これに、

「まぁ、テントを張らせてもらえる場所があれば、事足りるのですが…。」
「おそらく、それも難しいでしょうね。」

タリアノが呟くかのように返す。

そういった流れで、

「あの、ルギーさん。」
「何処か、大勢が泊まれるようなお宿を、ご存知ありませんか?」

“白金ロングヘアー”かつ“エルフの血筋”こと【弓術士】のランソワが、側に居た“銀髪ロングで褐色肌”の女性に尋ねる。

このような質問を受け、

「それなら任せなさい。」

〝ニコッ〟と口元を緩めるルギーであった。


暫く南下した位置に、それなりの規模の町が在る。

建物の多くは[木造り]のようだ。

「ここよ。」

ルギーに案内されたのは、趣きのある旅館だった。

「結構な数の冒険者が活用していたみたいだけど、殆どが“南の大陸”に渡っていたからね。」
「部屋は空いている筈だよ。」
「取り敢えず、入ってみましょう。」

そうルギーが促したのである……。


割と広い[受け付け]には、着物姿の少年少女が四人ほど待機していた。

“女の子”の一人が、

「ええ、大丈夫ですよ。」
「全員分の御用意が可能となっています。」
「宿泊なさいますか??」

そう窺ってきた。

「あぁ、頼む。」

簡潔に伝えた紫蓮の背後で、

「この国は、子供までをも働かせておるのか?」

“黒髪ポニーテール”の【くノ一】である撫子なでしこが首を傾げる。

これに対して、

「いえ、なんでも“座敷童子ざしきわらし”という妖怪で、何百年も生きているらしいわよ。」

そのように教えるルギーであった。

こういった説明に〝へぇー〟と納得した[GOD SLAYER’S]である。


館内に設けられている[大食堂]は、“畳敷き”であり、幾つもの“長テーブル”と“座布団”が置かれていた。

まだ他の客が訪れていない状況で、紫蓮たちが飲食している。

「これから先の未来がどのようになっていくのかは、分かりませんよね?」

ふと質問したのは“ゆるふわ銀髪ショート”に“丸眼鏡”の【クレリック】たるルウェーだ。

そう確認されて、

「ん。」
「もはや、“手記”に書かれている歴史とは異なっているからな…。」
「アタシにも不明な事ばかりさ。」
「ま、こうなった以上は、平和な世界に繋がるよう尽力するだけだね。」

“赤茶髪ソバージュ”で“小麦肌”の【機工士】ことスリアが、穏やかに意見したのだった―。
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